∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part46∧∧
『畑』
932 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/09/09(水) 22:07:42 ID:wCQPf2pd0
知り合いの話。
彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「ちっと遠い山なんだけど、下りてる途中で場違いな物に出会すことがあった。
いや普通の畑なんだけどな。良く耕されて、しっかり手入れされてる風の。
でもな、登ってる時にゃそこにそんな畑、影も形も無かった筈なんだわ」
「あまり見んようにしとったから、何が植わっとったのかは知らねえ。
その畑に手ェ出しちまうと、山から下りられなくなるって言われとったんでな。
畑守りに獲られちまうとかって、そんな噂を聞いたわい」
「迷い畑って呼ばれとったな。
付近の鉄砲撃ちにゃそれなりに知られとったと思う。
儂は、誰かがヤバいモンでもこっそり育てとるんじゃないかと考えとったがな。
まぁ余所の山の事にゃ口を挟まんこった」
『ヤマビコさん』
933 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/09/09(水) 22:09:01 ID:wCQPf2pd0
友人の話。
彼は時々地元登山会の世話で、山道の整備をしている。
その日も鋸を片手に倒木を片していたのだが、いきなり背中がグッと重くなった。
手をやったが何も触れず、しかし荷重は耐えきれないほどで、堪らず膝を付く。
四つん這いになった頭の後ろで、問い掛ける掠れた声があった。
「おま(お前)、しゅーくりーむ持っとらんかの?」
「そんなモン持ってねぇ!」
思わず叫び返すと「そっか」と残念そうな声がして、背がスッと軽くなる。
それきり声は聞こえなくなった。
まったく人騒がせなヤマビコさんだ。
腹立たしく思いながら作業を続けたが、ふと気になった。
どうしてシュークリームなんて食い物を、ヤマビコさんが知ってんだ?
思い出す度、それが不思議なのだという。
ちなみにヤマビコさんとは、彼の地元で山の妖怪を指す言葉だということだ。
『山中にある斎場』
934 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/09/09(水) 22:10:30 ID:wCQPf2pd0
私の体験した話。
山中にある斎場から、仕事で呼ばれた。
「男子トイレの自動洗浄が誤作動するから、調子を見てくれないか」とのこと。
小便器の上にセンサーがあって、前に人が立つと水が流れる仕組みだ。
調べてみたがどこにもおかしい箇所はない。
どうしたものかと考えあぐねていると、急に寒気を感じた。
次の瞬間、水の流れる音。
四つある内の一番奥の小便器、そこにだけ水が流れていた。
トイレ内にいるのは私と斎場事務員の二人だけ、当然その便器の前には誰もいない。
「葬儀の立て込んでる日は、特に誤作動が多いんだよね」
困ったような顔で事務員さんが言う。
取りあえずセンサーの感知性能を低目に設定して、様子を見てもらうことにした。
効果があったのか、無人で水が流れることはあまり起こらなくなったという。
一体何がセンサーを反応させていたのかはわからない。
私も特に追及する気は起こさなかった。
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