∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part46∧∧
『トキタガエ』
336 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/08/22(土) 20:00:17 ID:E11gwc8I0
友人の話。
里帰りした折に、甥っ子を連れて裏山で遊んでいたという。
時はまだ朝方、霧雨がかかって少しばかり肌寒い。
地山が剥き出しになった崖に、立って入れるほどの洞穴が開いていた。
何気なく入ってみると、五,六メートルも進んだ所で行き止まりとなっている。
別に変わったこともないので、すぐに引き返して外に出た。
唖然とした。見事な夕焼けが視界に飛び込んできたのだ。
慌てて甥の名前を呼んで探したが、どこにも見当たらない。
一目散に家まで帰ってみると、親たちにこっぴどく叱られた。
「小さな子供を放ったらかしにして、今まで何処で道草食ってたんだ?」
甥が言うには、急に彼の姿が見えなくなり、仕方なく一人で家まで帰ったのだと。
事情を説明し、自分にも訳がわからないと主張したが、
「言い訳するな!」と一喝された。
危なくその日は晩御飯抜きになるところだったそうだ。
後に村の幼馴染みに聞いたところ、件の山には「トキタガエの穴」と呼ばれる洞穴があるのだと教えられた。
「何でも、その中じゃ時間の進み方がまちまちになるって話だよ。
長くなったり短くなったり、効果は決まっていないみたいだけど。
最も君が入ったその穴が、本当にトキタガエかどうかはわからないけど」
その後しばらくして再び裏山に登ってみた。
あの時入った筈の洞穴は、どこにも見つけられなかったという。
『岩』
337 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/08/22(土) 20:02:07 ID:E11gwc8I0
知り合いの話。
アメリカに留学していた時、学友がトレッキングに連れて行ってくれたという。
草木もまばらな岩山を通り抜けている時、ガイドが徐に石を拾い上げた。
「面白いものを見せてあげよう」と、いきなり石を斜面上方の岩に投げつける。
キャンッ!
石が当たるや、岩はまるで犬のような鳴き声を上げた。
次の瞬間、岩は尻尾をフサフサさせた狐に姿を変え、斜面を駆け上り逃げ去った。
「丸くなったあいつに全然気が付かなかったろう?
ああやってトレッカーに近よっちゃ、食べ物を掠めていくんだ」
笑うガイドの説明を聞きながら、友人と二人首を傾げた。
逃げていく姿を見た感じでは、狐の毛色や様子は辺りの岩肌とかなり違っていた。
それなのにどうして気が付かなかったんだろう?
「びっくりだ。狐はアメリカでも人を化かすんだぜ」
彼は大真面目でそう教えてくれた。
『徳利』
338 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/08/22(土) 20:02:50 ID:E11gwc8I0
知り合いの話。
山奥の炭焼き小屋で、一人炭を作っていた時のこと。
夜中に火の番をしながら酒を飲んでいると「うふふふ」と小さな笑い声が聞こえた。
しかし、自分の他に誰もいる筈もない。
不気味に思いながら、酒徳利に口を付ける。
と、何か柔らかい物がにゅるりと口内に差し込まれた。
濡れた舌のような、嫌らしい感触。
驚いて徳利を投げ飛ばすと、それはコロコロと下生えの間を転がって見えなくなった。
明るくなってから探してみたが、もうどこにも徳利は見つからなかったという。
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