∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part45∧∧
『森の鬼』
836 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/08/05(水) 20:26:36 ID:ffPRbS740
知り合いの話。
彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。
「とある山に入ろうとした時のことです。
里の者に案内を頼もうとしたのですが、酷く渋られまして。
曰く『あそこには森の鬼がいるから行きたくない』と、そう言われたんです。
まぁあちらで鬼というのは、どちらかと言うと幽霊とかに近いニュアンスもあったりして、日本の鬼とはちょっと違うニュアンスなんですが」
どんな鬼なのかと問えば、次のように教えられたという。
「その鬼に出会ってしまうと、全身の血が固まって死んでしまうんだそうです。
まるで煮凝りみたいなゼラチン状に変じるそうで、死体の表には膨れた血管が網目のように浮き出ているんだとか。
人目で『あぁ鬼に行き会ったんだな』とわかる酷さらしいですよ。
だから鬼の姿形や正体などは、皆目不明なんだと言われました」
「でもまぁ、ひょっとしたら。
まだ知られていない、何らかの風土病なのかもしれませんけどね。
あの国は本当に広いですよ」
そう言って彼は苦笑した。
『岩魚』
837 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/08/05(水) 20:28:21 ID:ffPRbS740
知り合いの話。
彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「針金罠が巧みな奴がいての、そいつン所へ酒持って遊びに行ったことがある。
普段は炭焼きをしとって、偶に客が来ると罠仕掛けて獲物を獲ってたんじゃ。
儂が来るというんで、そん時も新しく罠を仕込んどった。
何か掛かっとるか楽しみにして、二人で山を廻ったんだけどな」
「どえらい大きさの岩魚が一匹掛かっとった。
ワイヤーにぶら下がって、まだピチピチと暴れてたな。
何で川の魚がこんな森の奥所で?って悩んだよ。
聞けばそこの山じゃ、岩魚は年経ると坊主や山伏に化けて、悟りを開く為に野山を廻って殺生を諫めるとか、そんな言い伝えがあるんだと」
「へえ、岩魚と言えど立派なモンですね」私がそう言うと、
「うん、確かに見事な岩魚だったよ。大層美味かった」と祖父さん。
・・・とても悟り開くどころじゃない最後を遂げてしまったなぁ。
岩魚に少し同情した。
『アゼッパシリ』
838 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/08/05(水) 20:29:22 ID:ffPRbS740
知り合いの話。
彼の実家の田圃は山中にあるのだが、冬場になるとおかしな怪が出たのだという。
「畦を歩いているとね、何かが真向かいからタッタッタって走ってくるんだ。
足音はするのに、誰の姿も見えない。
谷の者はアゼッパシリって呼んでたな。
これにぶつかると、悪い病に罹るって言われてた」
どういう訳かこのアゼッパシリ、一直線にしか走れないらしく、また畦道の上でしか移動できないらしい。
「だからこいつが向かってくると、刈り入れの終わった乾いてる所に飛び下りてた。
俺の横一段高い位置を、走る音だけがスチャスチャ通り過ぎていくんだ。
何とも摩訶不思議な心持ちがしたよ」
アゼッパシリが今も出ているのかは不明である。
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