∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part45∧∧
579 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/07/30(木) 20:04:49 ID:OOxmp6YB0
知り合いの話。
彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「川魚も獲ったな。
釣りはあまりせなんだけど。
アク流しってのを利用してた。
灰揉み流しとも言ってたな。
アク流しってのは、木の灰に○○の皮や根っ子を粉にして混ぜ込んだ合わせ灰を使うんだ。
袋に入れて上流で揉んでやると、一面濃い茶色の汁が広がる。
この灰汁を飲んだ魚が、弱って浮いてくるのを網で掬うって寸法。
いわゆる毒流し漁だな。
まぁ、毒といっても一寸の間痺れるくらいだがヨ」
「馬鹿な奴がいてな、大量に灰汁拵えて、とんでもない分量を一気に流しやがった。
そんなのは御法度だったんだ、淵の魚取り尽くしちまうから。
しかし、そいつは鼻摘み者だったからな。
人の言うことなんか聞きやしない。
ただよ、毒を流した場所が悪かった。
主がいるから誰も近よらないっていう、奥の淵を狙いやがったんだ。
誰も魚獲らないから、獲物も仰山いると考えたんだろうな」
「こっそりとそこへ出掛けて、手際良く毒灰汁を流し込んだらしい。
たっぷりとな。
でもよ、ぽっかり浮いてきたのは魚だけじゃなかったんだと。
淵のド真ん中の方に、牛ほどもある大きさの、何か長い毛がみっしりと生えた、
黒くてでかい物が浮かび上がったんだとさ」
580 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/07/30(木) 20:06:00 ID:OOxmp6YB0
「慌てて逃げ出し、村で知らん顔することに決め込んだってんだがな。
しかしよ、次の夜からそいつァ、高い熱を出して寝込んじまった。
祟り覿面、罰が当たってモンだ。
譫言で何度も頻りに謝ってたことから、他の者が事情を知ったらしい。
可哀想ではあるが、自業自得って奴だわィ。
幸い命は取り留めたが、口が上手く廻らなくなって、片言で喋るようになってた」
「ま、今はアク流しも禁止されとるから。淵主を怒らせることはあンめえよ」
祖父さんはそう言って、川魚の塩焼きを振る舞ってくれた。
この魚はどうやって捕ったのだろう、と少しだけ気になった。
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