∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part45∧∧
『ガツ』
498 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/07/29(水) 19:36:55 ID:0iMQQVAJ0
知り合いの話。
彼が幼い頃から出入りしている山は、昔から物の怪が出るのだと言われる。
それは尾根筋や森の際といった、いわゆる境界線上に好んで現れる。
異形の形を取る訳ではなく、単に浅い穴が開いているだけの姿形なので、一見それと判別し辛い。
気が付かずに手足を差し込んでしまうと、穴の縁に鋭い歯が生じて、中に入った物を囓り取ってしまうのだと。
歯の生えた穴の怪は、地の者からガツと呼ばれていた。
彼はまだガツに見えたことはないが、足元には常に注意を払っているのだという。
「昔から言い継がれてきたってことは、何かしら理由がある筈だから」
それが彼の信条だからそうだ。
『森の中でクシャミする声』
499 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/07/29(水) 19:38:12 ID:0iMQQVAJ0
知り合いの話。
彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。
「ある奥地の山に入った時にですね、不思議なことがあったのです。
自分以外誰もいない森の中で、何処からかクシャミする声が聞こえたんですよ。
するとその途端、辺りがとっぷりと暗くなる。
あれっどうしたんだろうって思っていると、再びクシャミがして。
すると今度は元通りパッと明るくなる。
何処かの誰かがクシャミを繰り返す度に、自分の周りが昼と夜とに切り替わっているような、そんな体験をしたのです。
あまりに奇抜な体験で動くことも出来ませんでしたが、その内に異変も収まって、 何事もなかったかのように元に戻りました」
「後で聞いたところ、その山の奥には大きな蛇が棲んでいるっていうんです。
蛇というか、蛇神様みたいな扱いされていたみたいですけど。
崇められていた訳でもなくて、そうですね、日本で言うところの祟り神みたいな存在だったんでしょう。
この蛇神様は、昼と夜とを切り替えるのが仕事なんだそうです。
この神様、時々具合が悪くなって、私が体験したように夜昼が滅茶苦茶になってしまうことがあるんですって。
面白い神様ですねえ」
「まぁ実際のところ一種の幻覚というか、感覚器官の異常なんでしょうけどね」
彼はそう言って笑っていた。
『石礫』
500 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/07/29(水) 19:38:56 ID:0iMQQVAJ0
知り合いの話。
彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「山によって違うんだろうけど、奥の方じゃ色々と変わった決まりがあるんだ。
うちの山にもあったサ。踏み入ってるとな、時折、礫が飛んでくる。
肩や背中にポンと当たって落ちて、まぁ痛くも痒くもないんだが。
この石礫が飛んでくると、そこで猟は上がり。
鉄砲仕舞ってから下山するんだ。どうしてかは知らねえ。
ただああいう場所で、昔から途切れることなく継がれている決まりっていうのは何かしら意味があるモンなんだ。
そういうのを無視する輩は、遠からず山に呑まれちまう」
「だから初めての山、決まりも何もわからない山ってのは、そりゃあ怖かった」
肩を竦めて、祖父さんはそう言った。
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