∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part44∧∧
『立派な斧』
759 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/07/11(土) 21:51:45 ID:ohBbmvaB0
知り合いの話。
遠い親戚から、立派な斧を貰った。
山で仕事することの多い彼は喜んで、早速木を切り出しに出かけた。
黒光りする刃は切れ味が抜群で、これは良い物を貰ったと嬉しがる。
次の日に切る予定の潅木に薄傷を付け、その日は引き上げた。
翌朝、斧を引っ張り出してみると、木屑がやたらと付着していた。
おかしいな、綺麗に手入れした筈なのに。
首を傾げながらも、斧を携えて山に登る。
伐採場に着くと、昨日傷を付けた木が皆、切り倒されていた。
てんでバラバラの向きに倒れた幹は、どれも散々に切りつけられた傷で一杯だった。
彼はそれ以来その斧を仕舞い込んで、使っていないのだという。
『草刈り鎌』
760 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/07/11(土) 21:52:47 ID:ohBbmvaB0
知り合いの話。
彼は山裾に倉庫を持っている。農作業具を納めているそうだ。
その中に、いつの頃からあるのかわからない、両手持ちの大きな草刈り鎌がある。
手入れもしていないのに、錆びることがない持ちの良い大鎌だ。
倉庫を訪れる度、この大鎌のある位置が変わっているという。
他の農具は所定の位置にあるのに、この鎌だけは必ず違う場所に転がっているのだと。
「甚だしい時は、外に出て土に刺さってた。
最近はほとんど使わないんで、拗ねているのかもな」
あっさりした様子で、彼はそう流していた。
『古い大きな鉈』
761 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/07/11(土) 21:54:15 ID:ohBbmvaB0
知り合いの話。
彼の祖父は、古い大きな鉈を愛用していたという。
鉈といっても山刀のようなごつい代物で、山に入る時には必ず携えていたそうだ。
不思議なことに、祖父がそれを手入れしている姿を見たことがない。
だのに切れ味は抜群なので、一体どんな磨き方をしているのか聞いたことがある。
「何も手を入れちゃいない。こいつは特別なんだ」
御爺さんは、カラカラと笑ってそう答えた。
祖父が死んだ夜、通夜のため納屋を片付けていた彼は、この鉈を見つけた。
前日まで黒光りしていた筈の刀身が、全身真っ赤に錆び付いていた。
自分の見ている物があの鉈であると理解できるまで、少し時間が掛かったらしい。
家族で相談した結果、鉈は祖父の墓が臨める山の斜面に埋められたという。
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