∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part44∧∧
『椎茸のお化け』
475 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/06/29(月) 20:19:41 ID:j7YKPgR60
友人の話。
彼は幼い頃、実家に里帰りした折はよく裏山で遊んでいたのだが、その都度祖父に注意されていたことがあった。
「森ン奥から誰かが手招きしてきても、絶対にそっちに行くんじゃないぞ。
そりゃあマネダケとかマネキダケって言う、椎茸のお化けだからよ。
逃げられないよう手足落とされて、ほだ木にされちまうぞ」
「一度だけ、森の中から手招く人影を見たことがある」そう彼は言う。
ボンヤリした緑色の影が、ゆるりゆるりと招くように右手を振っていた。
誰何の声を掛けても返答がなかったので、慌てて家まで逃げ帰ったという。
「幸いにもその後は見なかったけどな。ありゃ気味が悪かった」
そう口にして、嫌そうに頭を振っていた。
『コシカケ』
476 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/06/29(月) 20:20:45 ID:j7YKPgR60
知り合いの話。
持ち山の手入れをしていると、不気味な物を見つけた。
太い椚の幹、その下の方に座椅子のような物があって、茶色の人形が腰掛けている。
近よってよく見ることにした。
座椅子ではなくて、大きな平べったい茸のようだ。
そしてそれに腰掛けていたのは、木乃伊のように干涸らびた、小さな猿の骸だった。
気持ち悪くなってその場を去った。
下に降りてから自分の見た物を話していると、親類の爺さんがこんなことを言った。
「うちのずんと山奥には“コシカケ”って呼ばれる、猿を獲る椎茸があるんだそうだ。
猿の好きな匂いを発して、惑わせて自分の上に座らせるとか。
すると猿は酔い潰れて動けなくなり、そのまま茸の滋養になるんだとサ」
そんな気色の悪いこと、誰から聞いたの?と尋ねると、
「儂がまだ子供の頃、出入りしていた薬売りがそんなこと言ってた。
その椎茸が、筋の好事家にはえらく良い値段で売れるってな。
最もその薬売りのオッサン、うちの山には絶対入ろうとせんかったが」
そう答える爺さん。
それを聞いて、従兄弟を連れてもう一度出向いてみた。
しかしどこを探しても、あの不気味な腰掛けは見つからなかったという。
『マナコイモ』
477 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/06/29(月) 20:21:38 ID:j7YKPgR60
知り合いの話。
彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「山に入ってると、色々と自給自足しなきゃならない時もある。
でもな、何が食えて何が食えないかってのは、しっかと押さえとかなきゃいけねえ。
随分と奥の山なんだけどな、そこで採れる山芋はマナコイモって呼ばれてたそうだ。
掘り出すと一見普通の山芋なんだが、所々ギョロリとした目玉が付いてるんだと。
中にゃ気持ち悪いことに、まるで人の頭ァそっくりな形の芋もあったってことだ」
「これが実に美味いんだと。でも、絶対に食っちゃならねえ。
一回でも腹に入れちまうとな、もうその後の人生、この芋以外の物は食えなくなるというんだ。
他の何食っても、もう胃の腑が受け付けねぇって。
眼芋が生えてんのはその山だけだから、二度とそこから下りられんようになる訳で。
運悪く食っちまって、そこに住み着く羽目になった木樵が伝えた・・・って話だ」
「でもまぁ実際、飢え死にするくらいなら食っちまうかなぁ」
死んじまうよりはなぁ、と祖父さんは悩ましい顔をした。
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