∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part44∧∧
308 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/06/23(火) 22:25:57 ID:2aIBAdrE0
知り合いの話。
彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「ビッキ沢。そう猟師内で呼ばれてた沢があるんだ。
ビッキってのは蛙のことだよ。
そこで野営してた夜に、妙なモノと出会したんだ。
火の前で鉄砲の手入れしてたら、繁みン中からノソズリ這い出てきた物がある。
てっきり何かのヨツ(獣)かと思って見てたから、正体がわかった時は大層驚いた。
でっけえ灰色をした蛙だったんだ」
「うちで昔飼ってたシロほどもあったかな。
ああいや、シロってのは紀州犬の名前なんだがね。
だもんだから、しばらくポカンと口開けて見てたわい」
「こいつがまた蛙の癖して偉そうに、長老でございって感じで白い髭をたっぷりと生やしとったんだ。
“何だコリャ。どことなく学のありそうな顔してるじゃねえか”とつまらん思いを浮かべてると、
いきなり口開いて『何してるんかね?』と喋りやがった。
蛙の喋りとは思えんほど、実に滑らかによ」
「“こりゃ普通の蛙じゃねえ!迂闊にビビッた所は見せられんぞ”
少し焦りながらそんなことを考えたわいの」
309 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/06/23(火) 22:26:41 ID:2aIBAdrE0
「『鉄砲の手入れさね』取りあえずそう返したところ、
『鉄砲と言うのか。何する物かねそれは?』とこう尋ねてきたモンだから、
『こっからよ、鉄と火を噴いてシシ(猪)を倒すのサ』って答えた。
ま、半分脅しも兼ねてな」
「『鉄と火か。それは嫌だな。うん、実に嫌だ』蛙はそう答えやがった。
まぁ何とかに小便って言うくらいで、蛙の面なんかとても表情読めねえからな。
本当に嫌がってるのかどうかはわからんかったが。
『怖いな。うん、実に怖い。退散するとしよう』
その言葉を最後に、繁みにノソッと戻っていったよ」
それでどうなりました? と先を促すと、
「どうもこうも、それでこの話はお終いだよ。
ま、敢えて言やぁ、“なるほどここはビッキ沢って呼ばれる訳だ・・・”って
納得したぐらいだな」
聞いて呆れた私だった。
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