∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part44∧∧
『鴨撃ち』
274 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/06/22(月) 21:04:30 ID:FhGtTWzw0
知り合いの話。
彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「儂みたいに猟を職にしてはいなかったが、鴨撃ちが大層好きな奴がおったよ。
鹿とか猪とかには興味示さんかったが、鳥撃ちだけは別じゃった。
空に向かって撃つのが好みだったんかの。腕の方は中々なモンでな。
こいつがある時、おっかしい話をしてたんじゃ。
夕時に、一羽で飛んでる鴨を見かけての、早速構えてブッ放したとか。
見事命中して、鴨は当然頭から落ちた」
「おかしくなったのは、このすぐ後よ」声を低くして続ける。
「半ば落ちた辺りで鴨の奴、ククッと身を持ち直したんだと。
有り得ねえって目を疑ったが、確かに鴨は元の高さまで戻って羽ばたいてやがる。
気を取り直してもう一発撃った。外さねえよう慎重に。
また当たった。確かに当たった。さっきと同じように鴨が落ちる。
だけど、今度も平然と身を立て直しちまった。先ほどとまったく同じように。
そんでやっぱり、まんま何事もなかったように飛び続けたってよ。
もう意地で撃ちまくったらしい。
でも鴨はその度に復活果たして飛んで行きやがる。
結局撃ち落とすこと叶わんで、夕焼け雲の中に悠然と消えてったそうだ」
ここで祖父さんはガハハと笑った。
「儂も長いこと猟に関わったが、鴨撃ちが鴨に馬鹿にされたって話は、後にも先にも
これしか知らねえ。あいつ、よっぽど鴨に嫌われてたんだな」
『おーい』
275 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/06/22(月) 21:06:13 ID:FhGtTWzw0
知り合いの話。
彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「ある山のことなんだけどな。鉄砲担いでいると、誰かに呼ばれることがあったわ。
『おーい』って、ただその一言だけなんだけどな。
これが繰り返し聞こえてくると、覿面道に迷っちまうんだ。
だからそこで猟はお終い。ま、仕方ないわな。
どんな浅い山でも、道失くしちまったら、おっちぬ(死ぬ)可能性があるしよ。
儂らは“ヒトコエカケ”って呼んどった」
「鉄砲下ろしてから知ったんじゃが、別の地方でも似たようなモノがあったらしい。
やっぱり引退した鉄砲撃ちに聞いたんだけどな。
そいつらの地方じゃ“ヒトコトモウシ”と呼んどったとよ。
ひょっとしたら、こういうのが出る御山ってのは、昔は至る所にあったのかもな。
今はどうか知らんがよ・・・まぁ聞かないで済むに越したこたぁねえか」
『よく使ってた細道』
276 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/06/22(月) 21:07:41 ID:FhGtTWzw0
知り合いの話。
彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「仲間と二人、よく使ってた狩り場に通じる細道を歩いてた時なんだけども。
いきなりでっかい木が道を塞いでた。
でもよ、そんなこと有る訳無えんだ。
何度もそこを通ってるってのに、そんな大きな物が植わってりゃ牛でも覚えてら」
「あぁ、これは何かあるんだろうなって話してよ、その日は引き返したんだ。
他の狩り場にも行かなかった。
アヤが付いた時の殺生は縁起が悪いから。
二、三日してから再び行ってみたら、あの大木は綺麗さっぱりと消えてた。
さてはあの奥で主がお産か何かしてたか、そんなことを仲間は言うとったな」
ヤバいと感じたモノには近よらないのが、生き延びる知恵の一つなのだそうだ。
「まぁ知恵っつうか約束事っつうか、山でも街でも同じだろうけどよ」
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