∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part41∧∧(実質43)
『霧が掛かった秋の山』
869 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/06/06(土) 17:56:33 ID:MaQ2T8Pi0
先輩の話。
霧が掛かった秋の山を歩いていた。深い薄野原を一人掻き分けながら。
藪漕ぎの手を休め、身を屈めて一息吐いてから再び顔を上げた。
目の前に、ついさっきまで無かった物がある。
真黒い柱が一本、ヌッと立っていた。
次の瞬間、異様な悪寒に襲われて、身動きが出来なくなった。
柱の上に何かがいて、それが自分を見つめている。
上の方まで視線は上げられなかったのに、何故かそのことだけはわかった。
冷や汗を流しながらゆっくりと目を閉じる。と、さっぱり悪寒が消えた。
恐る恐る目を開けば、もう柱はどこかへ消え失せていた。
出来るだけ急いでその薄野原を抜けたそうだ。
『真っ赤』
870 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/06/06(土) 17:57:22 ID:MaQ2T8Pi0
友人たちの話。
バイク乗りの間で、恐れられている峠があるのだという。
「夜にそこの峠を攻めていると、後ろに飛び乗ってくる者がある。
当のライダーにはわからないんだけど、後ろを走ってる奴らには丸見えなんだ。
ライトの中に浮かぶ、女の子の真っ赤な背中が」
「本当は白い服を着ているみたいだが、これが血塗れで真っ赤に見えてるってよ」
「これに憑かれると何故かブレーキが効かなくなって、猛スピードのままカーブに突っ込んじまう。
何とかやり過ごしても、下に着くまでにまず事故ンのよ」
「だから俺たちそこを“シャア専用”と呼んで、夜は避けるようにしてるんだ」
真面目な顔でそう聞かされた私は、言葉に詰まった。
『入っちゃいけない山』
871 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/06/06(土) 17:58:12 ID:MaQ2T8Pi0
知り合いの話。
彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「山にも色々あってな、入っちゃいけない山もある。
山の神様がキツいのか、人嫌いのモノがいるのかはわからないけどな。
儂も一つ、そんな山を知ってたよ」
「そうとは知らずにそこに入っちまってよ、野営してたんだ。
夜が更けるにつれて、何か声が聞こえてきやがった。
肝が冷えたね。儂の名前、それだけをブツブツと繰り返しとったから。
声は一晩中、周りの森ン中をグルグルと回ってた。
すぐそこにいる筈なのになぜか姿は見えなかったんで、こりゃヤバいぞっと。
火を絶やさんように注意しとったら、とても寝るどころじゃなかったわい」
「その後どうしたかって? 夜が明けたら即行でそこを下りたよ」
祖父さんはそう言って何でもないように笑っていた。
次の記事:
『月の河童』
前の記事:
『走狗』