∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part41∧∧(実質43)
『山中の緩やかな小道』
218 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/05/09(土) 18:57:46 ID:LL+dDVhT0
知り合いの話。
山中の緩やかな小道を足早に歩いていた。
すると突然、道が急な勢いで登り坂になり始めた。
あれ、おかしいな。ずっと先まで見通せるほど平坦に見えたんだが。
どんどん急勾配になる道に違和感を覚え、その場に足を止めた。
その途端、いきなり立っていられないほどに道が激しく傾いた。
堪らず後ろに向かって倒れ込む。
尻餅をついてから、坂道を転がり落ちる衝撃に備え、頭を抱え身を丸くした。
・・・あれ?
それ以上、身体が転がることはなかった。
恐る恐る顔を上げてみると、記憶にある通りの平らな道の上に座り込んでいた。
しばらくそのままへたっていたが、それ以上の怪異は起こらなかったという。
『山の中腹にある神社』
219 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/05/09(土) 18:59:59 ID:LL+dDVhT0
友人の話。
彼は幼い頃、山の中腹にある神社を縄張りとしていた。
近所の子とよくそこに行っては、様々な遊びをしたという。
ある時、長い石段を使って陣取りをしていると、上の方からザッザッと下りてくる音がした。
複数名いるようだ。
「誰も上にはいなかったけどな」と怪訝に思い、振り返ってみた。
仰々しい山伏の格好をした者が五名、しっかとした足取りで進んでくる。
挨拶しようとした次の瞬間、硬直してしまった。
五人が五人とも、その首から上が犬のそれであったからだ。
白い毛並の者、斑のある者、赤毛で片耳がない者など、各人風体はバラバラだった。
立ち竦む彼らを気にも留めず、五名の犬面山伏は悠然と下っていき見えなくなった。
どうやら他の友人らも動けずにいたらしい。
山伏が見えなくなると「今の見た?」「一体何だアレ?」口々にそう叫んだという。
その夜、彼の祖父が語って聞かせたところによると
「犬の顔をした山伏?
そりゃ天狗だよ。
ただ、天狗は天狗でも犬天狗っていう輩だって話だ。
天狗としての位は低いとか、本職の山伏に聞いたことあるな。
犬から徳を積んで行くと、よく知られた長鼻の大天狗に精進するんだとさ」
ということだ。
「天狗の仕事っていうのも、色々と大変らしいぜ」
仕事の愚痴をこぼしていた私に、彼はこの話をしてくれた。
彼なりに励ましてくれていたのだろうか、今ではそう思う。
『右腕全体』
220 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/05/09(土) 19:01:22 ID:LL+dDVhT0
知り合いの話。
彼の曾祖父は変わった特徴を持っていたと言われている。
右腕全体が、まるで猿のようなフサフサの獣毛で覆われていたというのだ。
「親父は昔、猟師をしてたんだがな。
ある時、山の神様に願いを叶えて貰おうと願掛けをしたらしい。
“猟が上手くなりますように”ってな。
願いは叶って、親父はどんな不猟な時節でも獲物を持ち帰る凄腕になれた。
その変わり、利き腕が猿の手になっちまったんだ。
一体、どんな神様にどんな願掛けをしたんだか」
祖父は幼い彼にそんな話を聞かせてくれたそうだ。
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