∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part41∧∧(実質43)
179 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/05/07(木) 18:38:57 ID:r4YPCiJ20
友人の話。
彼女の母親は非常に霊感の強い人らしい。
しかし確かに霊感は強いのだが、それに対する反応は鈍いというか、のんびりしたことこの上ないのだという。
その母君が彼女に語って聞かせた中にこんな話がある。
「昔はうちの実家も薪炊きだったからね。
山で薪拾うのは子供の仕事だったんだよ。
私も妹とよく裏山に登って仕事してたんだけど、そこでジキトリに憑かれたんだ」
ジキトリというのは一種の餓鬼憑きで、これに取り憑かれると急に空腹になってしまい、力が抜けて動けなくなるのだという。
「ふらぁっと目の前が暗くなったんで、ああこりゃ憑かれたわって直ぐわかった。
普通はそこで動けなくなるっていうんだけど、何くそ!って踏ん張ったのね。
そしたら段々と脱力したのが治まってきて、そのうち平気になっちゃった。
あちゃぁ、それが拙かったみたい」
「何が拙いの?」
「取り憑かれた人が仏さんのご飯食べたり、それが出来ずに飢えて死んだりすると、
ジキトリは離れて山に帰るっていうんだけど・・・。
私の場合、そのどちらでもないのね。
だから私にはまだあのジキトリさんが憑いているのよ、どうやらこれが」
180 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/05/07(木) 18:40:25 ID:r4YPCiJ20
「それ本当!?」
「うん。時々だけど、あの時と同じ空気というか、存在感を首筋に感じるもん。
何ていうか、悪さはしないんだけどね。
じっと見てるだけ、みたいな。
だから放ってる。
あれから体の調子もすこぶる良くなって、病気にもまったく罹らなくなったし。
ただ、憑かれてからというもの、どれだけ食べても満腹感を感じなくてさ。
私が食べる量の割に全然太らないのも、こいつの所為だと思うのね」
そう言って笑う母を見て、彼女は呆れ果ててしまったのだという。
ちなみに母君は非常にスリムで、いつお目に掛かっても元気そうだ。
「母の憑き物、どうにかして譲ってもらえないかなぁ・・・。
最近ね、そんなこと考えちゃうの」
ダイエットに何度も挑戦している彼女は、冗談めかして笑いながらそう言った。
目だけは笑っていない彼女の笑顔は怖かった。
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