∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part41∧∧
『山の収穫物』
913 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/03/21(土) 15:42:50 ID:OlDPaXD80
知り合いの話。
彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。
とある奥地の山に入った時のことだ。
そこはごく普通の植相で特に珍しい物もなかったが、とにかく種類は豊かだったので、
馴染みの店にでも持ち込もうと、幾らか刈って下りることにした。
夜、麓の寒村で借りた小屋で寝ていると、何かの物音で目を覚ました。
動物でも入り込んだかと思い、懐中電灯を探り寄せ、音のした方を照らしてみる。
土間に広げてあったその日の収穫物が、綺麗さっぱりと無くなっていた。
湿った足跡のような黒い汚れが、入り口から土間に渡って付着している。
外に出てみると、跡は小屋前の泥濘を横断し、山の中へと消えていた。
「あぁ、山から取り返しに来たんだなって、そう思いました。
偶にあったんですよ、持ち出せない山っていうのが。
罰が当たらずに済んだのは、そこの山が穏やかな質だったのでしょう。
どんな山でも、入る前には手を合わせて一言断るようにはしているのですが、それも効果があったのかもしれません。
まぁ断りと言っても、あくまでも自己流だし、そもそも日本流ですけどね」
日本で山の主とかいうと、えらく怖いモノだというイメージがあるのですが。
私がそういうと彼は答えた。
「いえ、そういう何かがいる方が、山としては良かったのかなと思うのです。
今はどこの山で何を取っても、取り返しに来るモノはいないような気がします。
それはとても寂しいことのような気がするのです」
『ダイエット茶』
928 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/03/23(月) 18:26:52 ID:IrGv8t+x0
知り合いの話。
彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。
「知り合いにですね、個人で大陸から色んな物を輸入していた人がいたのです。
山師っぽいところがありましたから、深い付き合いはしていませんでしたけど。
干物だのドライフラワーだのって扱いにして、日本じゃ承認されていない生薬をこっそり持ち込んでるって噂も聞きました」
「ある時、この人に変な飲み物を見せられたんです。
個人輸入したという緑茶で、いわゆるダイエット茶って奴だったらしいです。
とある山奥でのみ採取される御茶だそうで、凄い薬効があると言って、大層自慢していましてね」
「『自分の体型変化をよく見とけ!』
そう言って笑ってました。
いや、僕は飲みませんでしたけど。
得体の知れない薬なぞ服用してから、誤治になったりしたら笑えませんし」
数ヶ月後、知り合いに再会した彼はとても驚いた。
プックリとした丸い身体が、ガリガリの痩体に変じていたからだ。
あの時の茶を飲み続けた成果だと言う。
929 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/03/23(月) 18:28:16 ID:IrGv8t+x0
「その痩せ具合、絶対おかしいです。危ないですよその御茶は」
必死で説得する彼に向かって、知り合いは静かに微笑んでいたという。
『大丈夫だって。身体の具合もすこぶる好調なんだ。
目覚めも寝付きもいいしな。ただ・・・』
「ただ、何ですか?」
『猿に付きまとわれるのが鬱陶しいだけだ』
何でもあの茶を飲み始めてから、猿のような影が見えるようになったのだという。
『飲んで一息ついてるとさ、いつの間にか目と鼻の距離にいるんだよ。
ボンヤリとしてて猿っぽいとしか表現できない、黒い影がね。
眼だけがギラギラと真っ赤に揺らいでるけど、ただ傍らにじっとしているだけ。
手を出してくる訳でもないから、放っている』
知り合いは何でもないことのように言い放ったらしい。
「思うに、あの茶葉には何らかの幻覚作用があったんじゃないですかね。
劇的に痩せてしまったのはその副作用でしょう。そう、副作用。
ですからアレは本来、ダイエットなどに使われる物ではないと思うのです」
というのが彼の推測だ。
930 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/03/23(月) 18:29:32 ID:IrGv8t+x0
その猿って本当に幻覚だったんですかね?
私がそう問うと、必死で肯定する彼だった。
「当たり前です、幻覚に決まってます。そうじゃなきゃ怖いじゃないですか」
その後、その知り合いとは連絡が取れなくなり、今に至っているらしい。
「健やかでいてくれれば、それで何も言うことはないのですけどね」
彼はそう言って、小さな溜息を一つ吐いた。
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