∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part41∧∧
『笑顔』
528 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/03/08(日) 21:35:04 ID:MZsXJORO0
知り合いの話。
彼の住んでいる町は、ハイカーで賑わう山の麓にある。
時たま奥の沢で転落する者がいて、下流に流されてくるのだという。
彼は青年団の務めとかで、そういう亡骸を引き上げに行くそうだ。
「この川で仏さんが引っ掛かっている場所って大体決まってるんです。
二箇所あるんですけど、上流側の方が、何というかその、おかしな場所でして。
そこで見つかる仏さん、みんなニコニコした笑顔のままで浮かんでるんですよ。
頬の肉が固まってるのか、然るべきとこに引き渡すまでずっとニコニコなんです。
生きている人がニコっとするのは別段何も思わないんですが、仏さんがそうなのはちょっと怖いです。今でも慣れません」
――河童に溺れさせられた者は、笑い顔のまま沈んでいるというよ。
尻子玉を抜かれると、苦しいのに顔だけは、どうしても笑ってしまうんだって。
もっともここじゃない他の地方での伝承だけどね――
そんな言い伝えを思い出したので話してみたところ、
「え、河童ですか? さて、内方の沢に出るとは伝わっていませんけど」
そう首を傾げる彼だった。
『池の中』
529 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/03/08(日) 21:35:47 ID:MZsXJORO0
知り合いの話。
親戚の持ち山を散歩していると池を見つけた。
淵縁の木に紐が結わえられていて、水中に沈められた網へと繋がっている。
水の中を見透かすと、網の中に入っている物が見て取れた。
鎌だ。それも結構な数がまとめて沈められている。
家に戻ってから、叔父にアレは何かと聞いてみた。
「ありゃ河童除けだ。ああしておくと奴ら近よらないから。
あそこで子供がよく遊んでるから、用心に越したことはないだろ」
叔父は至極当たり前の顔で、そう答えたのだという。
『カワワロ』
530 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2009/03/08(日) 21:36:27 ID:MZsXJORO0
知り合いの話。
秋の終わりに、一人で山中の薄野原を散歩していると、上空から聞いたこともない奇怪な鳴き声が聞こえてきた。
「ヒョーン、ヒョーン」という金属的な響き。
どんな鳥かと思い空を見上げると、予想外の物が目に入ってきた。
二十人程の真っ黒い人影が、空の高みを飛んでいた。平泳ぎで。
ズングリとした体型で、器用にスイスイと空中を移動している。
時折顔を回して「ヒョーン」という声を上げながら。
唖然として見上げる内に、群影は山に掛かった雲の間に消えていったという。
学校の先生にこの話をしたところ、何とも不可思議な答えが返ってきた。
「それは恐らくカワワロだろうな。
奴ら、春夏は下流の河口に住んでいて、冬になると空を飛んで山奥に戻るんだと。
山に入るとヤマワロって呼び方に変わるそうだけどな。
浜から山へ飛ぶ間に、そんな鳴き声を上げると伝わってるぞ」
河童って空も飛ぶのかよ! 大いに驚いたのだそうだ。
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