∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part33∧∧
『歌』
464 :元登山者:2007/04/15(日) 15:16:38 ID:t9yPDfTo0
田舎の友人から聞いた話です。
彼は田舎で工務店に勤めており、
数年前のちょうど今頃の時期に、会社の持つ山へ木材を確認に行きました。
木の周りを巻尺で測り、何年か前のリストと比較してみると、かなり良い具合に木が生長しているようでした。
「この具合なら良い値段で木が売れるな」
と思った彼は機嫌も良くなり、歌を口ずさみながら作業を終えて帰途に着きました。
帰りの山道を下っていると、後ろの方から人の声がします。
「材木泥棒か?」そう思った彼は、茂みに隠れていると、声は段々とはっきり聞こえてきました。
歌をうたっているような声です。
「聞き覚えのある声だな・・」と思ったそうですが、
それもそのはず、自分の声だったそうです。
自分の後ろから、声だけが歌をうたいながら追いかけてきて、隠れている彼の前を通り過ぎて行きました。
体が固まっている彼の前を通り過ぎ、声が聞こえなくなった頃、
立ち上がって急いで帰ろうと踏み出した彼の耳元で誰かがボソッといいました。
「なかなか、上手いじゃないか」
彼は転げるようにして逃げ帰ったそうです。
『雪』
544 :元登山者:2007/04/21(土) 11:10:54 ID:e0/m56ST0
田舎で祖父から聞いた話です。
私の祖父は昔の国鉄に勤めており、とある駅の駅長をしていました。
時代は戦後間もない頃の冬、最終の汽車を見送り、駅舎の点検や掃除、信号のチェックなどをして、帰路につきました。
その年は例年よりよく雪が降り、その日も一日中、雪が降っていました。
祖父の勤めていた駅は中国山地にあって、雪の多い場所です。
サクサクと雪を踏みながら急いでいると、
ちらちら程度に降っていた雪から急に風が吹いてきて、雪も粉雪から牡丹雪になり、まるで吹雪のようになりました。
風をもろに顔に受けて、顔がいたくなったので襟巻きで顔を半分隠し前傾姿勢で急いでいると、
前から人が歩いてくるのが見えました。
ぼんやりとした雪明りの中、良く見ると着物を来た女性でした。
祖父は幻覚でも見たのか、と思ったそうですが、だんだんと近づいてくる女性を見て幻覚ではないと思い、叫びました。
「おい、あんた。そんな格好でいると凍えてしまうぞ」
しかし、女性の方は気にするようでなく、そのまま祖父の方へ向かって歩いてきます。
545 :元登山者:2007/04/21(土) 11:27:29 ID:e0/m56ST0
徐々に女性との距離も縮まって、あと少しですれ違うところで女性はピタリと止まりました。
祖父も驚いて止まると、女性は笑顔で祖父に会釈をして、
「心配いただいてありがとうございます。私は平気です。
お勤め帰りのところを申し訳ありませんでした。
明日の朝には雪を止ませますので、今日は気をつけてお帰りください」
と言うような事を言い、そのまま歩いていきました。
「おい、あんた!」と祖父が振り返ると女性の姿は無く、
いつの間にか吹雪は止み、ちらちらと粉雪が降っていました。
見てはいけない者を見たのだろうか?と思った祖父は怖くなり、何度もコケながら雪まみれになって家に着きました。
火に当たりながら祖父の母(曾祖母)に帰り道で見たものの事を話すと、
曾祖母は「ああ、それは山の神様だね。きっと、どこかに用事で行ってたんだろうよ」と事も無げに言ったそうです。
雪女でも見たんじゃないかと思っていた祖父は、良いものを見たねと曾祖母に言われて、なんとも微妙な気分だったそうです。
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