∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part28∧∧
『肉吸い』
531 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/08/14(月) 04:20:16 ID:HHXwKmUY0
友人の話。
友人の地元の山には「横になってはいけない」という谷地があった。
休むくらいなら良いが、一旦寝てしまうと、肉吸いに集られるからだという。
肉吸いとは黒く小さな甲虫の類だと聞く。
寝入った動物に張り付き、その獣脂だけを吸い取っていくらしい。
どういう仕組みなのか、吸われている間はまず目が覚めない。
人がこれにやられると、一晩でごっそりと目方が落ちる。
大の男でも二日続けて集られると、生命に関わるほどだそうだ。
運良く吸い殺される前に山を下りても、体調を崩し長患いになると言われる。
仕事で山に入る里の者は、今でもその谷では腰を下ろさないという。
「・・・ダイエットに使えないかなぁ・・・」
友人はそう良からぬことを呟いていた。
女子は少しくらいふくよかな方がよろしい、と個人的には思うのだけど。
『ヨトウムシ』
532 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/08/14(月) 04:20:52 ID:HHXwKmUY0
幼馴染みの話。
彼の実家の山間には、ヨトウムシと呼ばれる虫がいるのだという。
いや、虫かどうかは誰にもわからないのだが、年寄りたちはそう呼ぶのだと。
これに憑かれると、夜眠れなくなるのだという。
ヨトウムシとは夜盗虫、つまり夜を盗む虫なのだそうだ。
身体は疲れているのに、どうしても眠れない。
症状が重くなると、一月二月は軽く眠れずに悶々と過ごすのだとか。
そのうち幻覚が見えたり、些細なことで感情が爆発し易くなり、
甚だしい者は気が触れてしまうこともあったと言われる。
「あんまし夜更かしすっと、ヨトウムシがお前に来んぞ!」
遅くまで起きていると、よくそう言って怒られたもんだよ。
彼は懐かしそうに言った。
『嫌われ虫』
533 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/08/14(月) 04:22:09 ID:HHXwKmUY0
私の体験した話。
学生時代、地元のキャンプに参加していた時のこと。
そこは藪蚊が多く、キャンパーは皆例外なくあちらこちらを刺されていた。
私も例外ではなかったが、刺された中で一カ所、腫れ方の違う跡がある。
普通に比べて倍以上も腫れ上がり、まるで青痣みたいだ。異常に痒い。
堪らず、年長の知り合いに薬を貰いに行った。
先生という綽名で呼ばれるその人は、私の虫刺されを見てこう言った。
「ははぁ珍しい。嫌われ虫に刺されたね。
近頃見なかったけど、まだ居たんだな」
何でもこの虫に刺されると、他の虫類から刺され難くなるのだという。
虫に嫌われるから“嫌われ虫”と呼ばれるそうだ。
以来、確かに私は、蚊などの虫にほとんど刺されることがなくなった。
虫除けスプレーを借りなくても、明らかに他人と刺され方が違う。
人が蚊に集られて手足を掻き毟っているというのに、私は全然刺されないか、
精々一、二カ所を食われる程度である。
近頃は流石に、刺される頻度が少しずつ増えて(戻って?)きたようだ。
もう一回くらい嫌われ虫に出会しても良いかなぁ、などと考えてしまう今日この頃である。
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