∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part28∧∧
『ゴム長靴』
352 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/08/09(水) 23:24:52 ID:N+fh+Xqp0
同級生の話。
彼は学生時代にフィールドワークをしていた山里で、何度か奇妙な体験をしたのだという。
朝一で雪野原に踏み込むと、外れの方にゴム長靴が一足落ちていた。
誰かが揃えて置いたかのように、きちんと上を向いて立っている。
そのまま気にも留めず、雪上で作業に取り掛かった。
しばらく経ってから手を休め、大きく伸びをしながら辺りを見回す。
「あ?」どこかおかしい。記憶にある景色と何かが違う。
「あ!」・・・足跡だ。
一体いつ刻まれたのか、彼のいる反対側、まだ誰も足を踏み入れていない筈の雪面に、
足跡が一列残されていた。
野原を半分くらい横切った辺りで、足跡は途切れている。
丁度そこに、先ほど見かけた黒い長靴があった。
ポツンと半ば雪に埋もれて。
不意に幻視に襲われた。
空っぽの長靴だけが、必死に雪野原を横切ろうとしている、そんな光景。
頭を大きく振って、その想像を打ち消した。
その日はまだまだその野原ですることが沢山あったのだ。
おかしな絵を連想してしまうと、どうにも落ち着かなくなる。
全力をあげて無視することにした。
すべての作業が終わる頃、もう一度だけ件の方向を眺めやった。
いつの間にか足跡は森の中へ続いており、あの長靴はもうどこにも見当たらなかった。
『オブサリ』
353 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/08/09(水) 23:26:10 ID:N+fh+Xqp0
知り合いの話。
彼の地元の山森には、変わった言い伝えがある。
横倒しになった木の下を、潜って通ってはいけないというのだ。
そういう倒木には物の怪が棲み付いていて、下を潜った者の背に飛び移ると言われている。
物の怪の姿は目に見えず、いつ背に乗られたのかもわからない。
ただ足を進める毎にどんどん身体が重くなるので、それと知れるそうだ。
重さに挫けず森を抜けると、諦めて背から離れてくれるので助かる。
しかし、暗い森の中でへたり込んでしまうと、二度と腰を上げることは適わず、
一歩も動けないままそこで息絶えてしまうのだと。
地元ではオブサリと呼んでいたという。
それほど深くもない森なのに、なぜか遭難者が多いのは、このオブサリの所為だと皆が信じていた。
誰か他の者の手助けがあれば、オブサリはすぐに退散するらしい。
「森に入る時は一人では入らんようにな」という祖父の注意を、彼は今も覚えているそうだ。
『タタタッ』
354 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/08/09(水) 23:28:05 ID:N+fh+Xqp0
友人の話。
釣り仲間と二人で、鮎釣りに出かけた。泊まり込みだ。
夜になり、釣った鮎を塩焼きにして楽しんでいると。
河原の下の方から、タタタッと何かが走ってきた。
身構えた二人の前に現れたのは、首を落とされた鶏だった。
切断面からピュゥと血を吹き上げながら、哀れな鳥は闇に消え去る。
「誰かが鶏をつぶそうとして、逃げられたんだろう」
相棒がそう口にした。自分でもあまり信じてはいない様子に見えた。
いつまで経っても、鳥を探しに来る者など居なかった。
それから帰途につくまでの毎晩、首切れ鳥は彼らの横を走り抜けた。
「多分、同じ鶏だったと思う。確認はしてないけど。
特に害はなかったんで、二人とも無視したさね」
「気味は悪かったけどな」彼は最後にそう付け加えた。
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