∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part28∧∧
『ムシャムシャ』
9 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/08/07(月) 00:43:49 ID:hUd7sg6j0
後輩の話。
学生時代に山の中、一人で藪漕ぎをしている時のことだ。
いつの間にか、すぐ近くからおかしな音が聞こえ始めた。
「ガツ・・・ムシャムシャ・・・」と、まるで何かを食べているかのような咀嚼音。
気になって周囲を見回したが、どう見ても藪の中には彼しかいない。
出来るだけ早く藪を抜けることにした。
そのうちに「ガリッ!」と固い物を齧り砕く音や、「ペチャ・・・ズズッ・・・」と汁気を啜るような音まで聞こえ出す。
しかし相変わらず、何の姿も確認出来ない。
やっとの思いで藪を抜けると、背後から一際大きな音が投げられた。
「ゲェッッップ!」と、やけに下品な音だった。
それを最後に、怪しい音は聞こえなくなったという。
「無茶苦茶怖かったですよ、本当に」彼はそう言って口元を歪めていた。
『舌盗み』
10 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/08/07(月) 00:44:54 ID:hUd7sg6j0
友人の話。
彼の実家がある山村には、一寸変わった物の怪が出たという。
「舌盗み」とか「舌盗り」と呼ばれるそれに取り憑かれると、
食べ物の味が全然わからなくなってしまうそうだ。
山の主が他人の舌を借り、様々な味覚を楽しんでいるのだろうと言われていた。
姿形がない存在なので、力ずくでは追い払えない。
これに憑かれると、とにかく好き嫌いをせずに、何でも食べなければいけないと伝えられていた。
色々な食べ物の味を堪能すると、舌盗みは満足して山に戻るからだとか。
なぜか胡麻の味は嫌いらしく、胡麻を沢山摂れば早く開放されるとも伝わる。
何とかして舌盗みを山に帰すと、元通りの味覚が戻ってくる。
生命に別状はないということだが、秋の収穫期にはとにかく怖れられ、そして嫌がられた存在だったそうだ。
偏食はいけないっていう教訓が、化け物になったのかもしれない。
彼自身はそう考えているのだとか。
『蛇の池』
11 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/08/07(月) 00:45:48 ID:hUd7sg6j0
同級生の話。
彼の住んでいる地方の山には、「蛇の池」と呼ばれる池がある。
大蛇が潜んでいるという伝説があって、一昔前には目撃者も結構居たそうだ。
池の上には、切り出した材木を運ぶためのモッコが走っていた。
モッコとは綱で編んだ籠のことで、これを滑車で吊るして動かしていたとか。
時折その籠から池に落ちる物があった。木っ端とか道具とか、その他諸々。
そういった落下物は翌朝、必ず池端の土手の上に、投げ出されていた。
大きい物も小さい物も区別なく、池に落ちた物は水の外へ。
大体がちょこんと優しく置かれているのだが、金物の類いが落ちた場合は別で、
池から随分と離れた場所に突き刺さっているのだという。
まるで力任せにブン投げられたような感じで。
卵が落ちた場合は真逆で、絶対に殻一つさえ浮いてこないのだとか。
「蛇さんは 金物が大嫌いで 卵が大好き」
蛇の池のためか、彼の地元ではそういう認識が当たり前だったそうだ。
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