∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part27∧∧
『死体』
805 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/08/05(土) 22:11:21 ID:3AyaI8F30
知り合いの話。
山中の道路で、舗装改修の仕事をしていた時のこと。
アスファルトにカッター入れの線を打っていると、行く手の道上に何か見えた。
黒い染みの真ん中に、汚れた毛皮と真っ赤な物がぶち撒けられている。
狸か何かの轢死体だった。
可哀想に。掃除しておかないとな。そう思いながら車に戻る。
しばらくして火箸と土嚢袋を手に帰ってきた彼は、思わず目を疑った。
道上の死体が、烏のそれにすり替わっていたのだ。
辺りには黒い羽根が散らばっている。
鳥じゃなくて四足の生き物だと思ったんだが、見間違えたか?
そんな筈はないがなぁ。不審がっていると、携帯電話に着信があった。
仕事の電話だ。二、三分ほど段取りの打ち合わせをして、通話を終える。
携帯を収めて顔を上げると、再び目を疑う羽目になった。
カラスの死体が消えて無くなっている。道に残されているのは羽根ばかり。
ただ、死体のあった場所から道路脇の草叢へと、濡れた黒い筋が続いていた。
「それで考えたんだけどな。
死体に化けて、死肉を食べに来る動物を狙うってモノが居たりするんじゃないか・・・ってね」
彼は私にそう言った後、
「ま、全部俺の勘違いだったってことも、十分あり得る話だけどな」
そう付け加えて苦笑いした。
『携帯電話』
806 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/08/05(土) 22:12:28 ID:3AyaI8F30
友人の話。
ある山深い所にある、親戚の別荘に遊びに行った時のこと。
急な用事が出来て、知り合いに連絡しないといけなくなった。
携帯電話をウッドテラスに置きっ放しにしていたことを思い出し、取りに行く。
テラスまで来て、頭を悩ませることになった。
確かに記憶通りの場所に携帯は置いてあったのだが、
なぜかそこにはまったく同じ機種が二つもあったのだ。色デザインまで同一だ。
これを使っているのは、家族中でも私だけだった筈だけど。
それに、傷の付き具合とかが瓜二つに見えるのも不可解だった。
近い方を手に取って見る。あれ、画面が表示されていないや。
しかし通話口からは何かしらの音声が聞こえている。
耳元へ持っていき「もしもし? どなた?」と誰何してみた。
返事はない。
いきなり耳朶に痛みが走った。何かに噛まれたかのような鋭い痛み。
慌てて携帯をテラスに投げ出し、耳を押さえる。
大した傷ではないが、少し血が出ていた。
と次の瞬間、投げ棄てられた携帯に異変が生じた。
黒い刺だらけの細い脚が何本も生え出して、驚くほど素早く走り出したのだ。
何をする間もなく、携帯?は森の中へサササッと消え去った。
自分の見た物が信じられず、残された方の電話を恐る恐る手に取ってみた。
そちらは間違いなく、使い慣れた自分自身の携帯電話だったという。
『変化』
807 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/08/05(土) 22:15:22 ID:3AyaI8F30
友人の話。
彼の祖父が蒔割りをしていた時のこと。
手近な一本をつかみ出し、鉈を振り上げる。
次の瞬間、支えていた蒔が別の物に姿を変じ、ニュルリと腕に巻きついた。
愕然とした。蒔は茶色の蛇に変身して、祖父に牙を剥いたのだ。
噛まれる寸前に慌てて腕を振り回し、蛇を地面に叩き落とした。
鉈を持って追い掛けると、蛇は今度は栗鼠に姿を変え、ちょこまかと一番近い立木に走り登る。
ガサガサと青葉が揺れたかと思うと、ザッと茶色い塊が宙に飛び出した。
雲雀に似た鳥になったそれは強く羽ばたき、夕焼け空を飛び去ったという。
裏の山には変化(へんげ)がおってな、儂も時たま見とったが。
しかしあれだけ見事な変化は、後にも先にも居らんかったのぉ。
お祖父さんは酒を飲む度、そう言って感心していたそうだ。
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