∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part27∧∧
『鳴き声』
643 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/07/29(土) 22:12:32 ID:Ej24+7MM0
知り合いの話。
彼は時々、親戚の手伝いで実家の山に籠もるのだそうだ。
叔父さんと二人、テントで寝ていたある夜のこと。
キョッキョッキョッと、鳥の鳴き声が聞こえてきた。
こんな真夜中に鳴く鳥がいるのかと不思議に思い、傍に居る叔父さんに聞いてみた。
ホトトギスだという。
なるほど、鳴き声が“特許許可局”と聞こえなくもないな。
どこかで読んだ知識を思い出し、彼が感心していると、叔父さんはこうも言った。
「あまりしっかりと聞くんじゃないぞ。
他の山は知らないが、この山じゃぁ夜に鳴くのはホトトギスだけではないんだ」
キョッキョという声に混じって、偶に別の物がボソリと聞こえることがあるのだと。
それは人の名前らしい。夜の山で名前が呼ばれた者は、近い内に死ぬのだとも。
「里の爺様にゃ、ホトトギスに混じって鬼が哭くって聞いたな。
ま、単なる言い伝えだがな。実際、儂は聞いたことがないし」
夜の森に響くホトトギスの声を聞きながら、彼は碌に眠れなかったという。
『コダマさん』
644 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/07/29(土) 22:13:59 ID:Ej24+7MM0
同級生の話。
彼女が学生時代、登山大会に参加した折のことだ。
キャンプ場のトイレに行くと、一つしかない個室の前には行列が出来ていた。
大人しく並んでみたが、一向に前に進む気配がない。
ドアのすぐ前に立っている子が何度もノックしてみても、その度に同じ強さでトントンと中から返ってくる。
一体いつまで入ってるのよ!? と何人かが怒りの声を上げ始めた頃。
丁度通り掛かった者が行列を見て「何してんの?」と尋ねてきた。
他校の最上級生だったらしい。
事情を一通り聞いたその上級生は「誰か居るの?」と中に声を掛けた。
返事はない。
やれやれと言った感じで、おもむろに上級生はドアを引き開けた。
順番待ちをしていた皆の目が点になる。
トイレの中には誰も居なかったのだ。
「ここのキャンプ場、っていうかここの女子トイレには、昔から“コダマさん”ってのが居るのよ。
ノックの音を真似してくれる輩だけどね。
ノックがいつまでも返ってくるようなら、直接声を掛けて確認なさい。
コダマさん、どうしてか人の声は真似出来ないみたいだから」
随分と質が悪い怪だよねぇ。よりによって女子トイレだけに出るなんてさ。
そう彼女はプリプリ怒っていた。
『黒電話の音』
646 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/07/29(土) 22:15:51 ID:Ej24+7MM0
友人の話。
友人と二人で夏山に籠もっていた時のこと。
夜、そろそろ寝ようかと準備にかかった頃、麓の方から何か聞こえてきた。
・・・リーン リーン リーン・・・
耳障りな黒電話の音だったという。思わず二人、顔を見合わせた。
音は段々とこちらへ登ってくるように思われた。
何かは皆目わからないが、得体の知れない物と対面などしたくない。
慌ててその場を撤収し、別の離れた場所へと必死で避ける。
やがて音は彼らより上方へ登っていき、聞こえなくなった。
正体はわからないが、まずやり過ごしたようだ。
一息ついて、そのままその場で就寝することにした。
夜中過ぎ、いきなり友人に揺すり起こされた。
目覚めた彼も直ぐに気が付いた。
斜面の上方から再び、あのリーンという音が段々と下ってくる。
ドタバタと寝具を片付け、麓に向かって逃げ出した。
暗い山道では、なかなか思うように足が進まない。
それもあってか、黒電話は着実に迫ってきている様子。
必死で音を撒こうとあれこれ進路を変えているうちに、嫌なことがわかる。
わかった途端、二人して泣きたくなった。
登っていった時と違って、音は間違いなく彼らの後を追尾していた。
結局、夜を通して逃げ続けることになった。
幸いにも曙光が刺す頃、音はパタッと聞こえなくなったという。
二人は今でも山歩きを続けているが、ちょっとその山には近よれないそうだ。
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