∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part27∧∧
『右目がチクチクする』
412 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/07/21(金) 03:37:45 ID:TDiGJCl80
先輩の話。
一人で山に篭もっていた時のこと。
夜半になぜか目が覚めた。右目がチクチクする。
虫でも入ったかと思い、指で目の辺りをまさぐっていると、何かが触った。
指の腹に、微かにチクッと刺すような感触。
そのまま掴んで引き出す。髪の毛だ。
やれやれと引っ張り出してみたが、髪はいつまで経っても途切れない。
やがてすべて引き出された髪の毛は、彼の腰に達する程の長さがあった。
彼自身の髪ではない。スポーツ刈りだったから。
・・・一体、誰の髪の毛なんだよ?
考えても答えが出る訳もなく、再び寝ることにした。
夜が明けるまで、彼は何度も目に異物を感じて起きることとなる。
引き出された長い長い髪の毛は、結局十本以上になった。
髪の毛は近くに穴を掘って埋めてしまったそうだ。
気味が悪かったが、それ以外の怪異には逢わなかったという。
『松の木で首吊り』
413 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/07/21(金) 03:39:19 ID:TDiGJCl80
知り合いの話。
猟師をしていた祖父と、一緒に山に入っていた時に教えられたこと。
俺も何度か首吊りした奴を見たけどな、ありゃ見目がいいモンじゃない。
下が垂れ流しになるからな。
それから首吊るんなら、絶対に松の木でしちゃなんねェぞ。
松に取り込まれて成仏も出来なくなっちまう。
ほれ、あんな風にな。
そう言って祖父が指差した先、大きな松の陰に、一瞬灰色の人影が見えた。
すぐに消えて見えなくなる。
え? あの木で首吊った奴が居るのかって?
さぁてどうだったか。随分と前のことだからな。
ま、自殺なんかするモンじゃねェってことだ。
その教えのせいかどうか。
彼はどんなに辛くても、死にたいなどと考えない大人に育っている。
『場違いな音』
414 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/07/21(金) 03:40:35 ID:TDiGJCl80
友人の話。
夜釣りをしようと、山中の溜め池に出かけた時のこと。
外灯の明りを頼りに竿を振っているうち、ふと場違いな音が聞こえてきた。
ぽーん ぽーん
近くでゴムボールが弾んでいるみたいな、そんな音だった。
何の音だろうと耳を澄ませていると、いきなり音は途切れた。
そして横手から足下にコロコロ転がってきた物が一つ。
布で編まれたような、古びた手鞠。
「取って」と少女の声がした。
仰天して周りを見回してみたが、闇の中には誰の姿も見えない。
恐る恐る鞠を拾い上げ、声がした方へ放ってやる。
鞠が地に落ちる音は聞こえなかった。
やがて再び、ぽーんぽーんという音が聞こえ出した。
何も見えない闇の中、誰かが一心に手鞠をついている。
もうとても堪らず、直ぐさま退散したのだという。
帰ってから原因不明な熱が出て、数日間寝込んでしまった。
熱が引いてからも、しばらくは夜釣りに出られなかったそうだ。
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