∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part26∧∧
『切り株』
693 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/06/14(水) 23:28:58 ID:wDGLQ57E0
知り合いの話。
彼のお祖父さんによると、ある山奥に老人ばかり集まる場所があるのだという。
最寄りの駐車場より小一時間ほど歩いた斜面にあるその場所は、
林の中にぽっかりと開いた小さな広場になっている。
中心に松の切り株が八つばかりあるだけで、他に見るものは何もない。
だのに、いつ訪れてみても幾名かの老人がそこにいる。
老人たちの間で囁かれている噂がある。
切り株を一つ選んで腰掛けると、病が治り心身の調子が良くなるのだと。
どんな難病にでも効能があると言われ、それに縋る者も多いのだと。
ただ、切り株が効果を顕すのは、人生に置いて一度だけ。
それに加えて、切り株の中には外れが一つだけあり、
それに座ると逆に具合が悪くなって死ぬとも言われている。
人によって切り株の当たり外れが違うため、他人の選択は参考にならない。
お祖父さんはこれまでに二度、そこを訪れているという。
持病に悩まされていた所為だが、結局二度とも座れなかった。
「何ていうか、一つを選ぶ勇気が出なくて」
そう言って苦笑していたそうだ。
『恵比寿淵』
695 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/06/14(水) 23:32:37 ID:wDGLQ57E0
知り合いの話。
彼の地元の山中には、一風変わった淵がある。
そこは恵比寿淵と呼ばれており、様々な物が流れ着くという。
エビスという言葉は、漂着物のことを指すのだそうだ。
不思議なことに、水源としてはかなり上流に位置するにも拘らず、
どう見ても海からの漂着物が流れ着くことがあるらしい。
友人はそこで、手紙らしき紙の入った壜を見つけたことがある。
何処から来たんだろうと取り上げ、蓋を取ろうとして硬直した。
壜の中、黄ばんだ紙の下に、黒く干からびて縮んだ物を見つけたのだ。
細長いその数は三本。片端に濃灰色の爪らしき物が付いている。
恐らくは人間の指だったという。
壜を水に戻し、そっと淵の中央に押しやった。
彼はその後しばらく、恵比寿淵には近よらなかったそうだ。
『晩秋の山道』
697 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/06/14(水) 23:35:59 ID:wDGLQ57E0
友人の話。
晩秋の山道を一人歩いていると、おかしな物が現れたのだという。
森の中、薄暗い道の上に、黒い球体が浮かんでいた。
ビーチボールほどの大きさで、胸の高さをふわふわ漂っている。
近よってみると、それは様々な枯れ葉が寄せ集まったものだった。
茶色や灰色の葉が付かず離れず、ざっくりと大きな玉を構成している。
何だこれは? 思わず指で突付いてみる。
途端に何かが弾けたような感覚がして、辺り一面に朽葉が撒き散らされた。
彼の身体も、枯れ葉塗れになったという。
既に道上には、妖しい物は何も残されていなかった。
関係があるのかないのかわからないが、それからしばらくの間、彼は体調を崩してしまったそうだ。
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