∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part26∧∧
『狐屋敷』
109 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/05/09(火) 23:53:30 ID:95eCRXCp0
友人の話。
小学生の頃、仲間数人で山中の廃屋探検に出かけたという。
子供らの間では有名な幽霊屋敷で、不気味な噂が幾つもあった。
侵入してからわかったのだが、
普通の屋敷ではなく、どうも何か儀式を行う道具の保管場所でもあったらしい。
破れ放題ではあるが、それなりに立派そうな物が無造作に転がされている。
捨て置かれたのか、そのまま忘れ去られたか。
喜んでお宝を漁っているうち、いきなり「痛っ!」と叫んだ者がいた。
見れば、瓶の中に手を突っ込んだ仲間がヒィヒィと泣いている。
中でどうかしたのか、とにかく一人では抜けない様子だ。
慌てて皆で協力し、何とか瓶から手を引っこ抜くことが出来た。
泣いている子供の手には、深い歯型がついていた。血が滲んでいる。
どうにも人の歯型に見えた。鳥肌が立ったという。
一人気が強いのがいて、そいつがエイッ!と件の瓶を叩き割った。
中からコロンと転がり出たのは、白い狐の面一つだけ。
口元が赤い汁で汚れていた。
誰かが「うわぁっ!!」と叫び、皆必死に逃げ出したのだという。
それからしばらく経つと、その廃屋は『狐屋敷』と呼ばれ始めた。
彼らの探検談が、いつの間にか広まっていたらしい。
「でもね“○○が狐に喰われた!”とかさ、物騒な尾鰭が付きまくっていたよ」
彼はそう笑いながら、この話をしてくれた。
『雨』
110 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/05/09(火) 23:55:08 ID:95eCRXCp0
知り合いの話。
峠道でいきなり土砂降りの雨に出くわし、近くのバス停に逃げ込んだ。
屋根はかなり狭かったが、まぁ何とかそれ以上濡れるのは避けられた。
すぐ横に先客がいた。身体を拭いながら話し掛ける。
こんな大雨は本当に鬱陶しいねぇ、と振ると次のような応えが返ってきた。
「・・・雨は好き・・・独りきりじゃなくなることが多いから・・・」
そこまで聞き取ると、横の存在感がふっと消えた。
気がつくとザアザア降りの雨の中、一人バス停で立ち尽くしていたという。
先客の顔も服装も、まったく思い出せない。
雨が止むまでホント落ち着かなかったよ。でも逃げ出すのも悪い気がしてなぁ。
そう彼はぼやいていた。
『三四郎』
111 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/05/09(火) 23:56:40 ID:95eCRXCp0
友人の話。
幼少時に里山で遊んでいた時のこと。
野中の小道を走っていると、ガシッと見えない何かに身体を掴まれた。
幾つもの掌に、手足や肩を握られているよう。まったく身動きが取れない。
藻掻いていると、いきなり誰かの掛け声が聞こえた。
へやっ!
次の瞬間、彼の身体はくるりと一回転をして、地べたに叩き付けられていた。
痛みと衝撃で、しばらく身動きできなかったという。
翌日学校でこの話をすると、皆がしたり顔で頷いた。
「あぁ、あそこって“三四郎”がいるからねぇ」
どうやら子供の世界では、そこそこ有名な存在だったらしい。
どいつもこいつも見境無く、しかし見事に投げ飛ばすので、
いつの間にか“三四郎”と呼ばれるようになったのだとか。
「大人は出会ったてないらしいから、奴も子供なんじゃないの?」
そうも噂されていたそうだ。
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