∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part26∧∧
『タオヤジ』
70 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/05/07(日) 00:52:59 ID:03dKBXwI0
知り合いの話。
子供の頃、実家の山でおかしな物を見たという。
棚田の側で遊んでいると、目の前の畦道で何かのたうっていた。
大きくて太目の蛇だった。青大将だろうか。
逃れようと必死でもがくが、奮闘空しくズルズルと田の中に引き込まれていく。
何が蛇を襲っているんだろうと、移動して正面から覗き込んでみた。
稲が作る列の間に、大きな頭が見えた。蛙だ、しかし生半可な大きさではない。
パクッパクッと口を開け閉めする度、確実に蛇体を呑み込んでいく。
あっという間に蛇を腹に納めると、蛙は泥の中に沈んだ。
思わず落ちていた棒で辺りの泥を探ったが、何も手当たりがない。
あれだけの巨体、見逃す筈はないのに。
夕食時、お祖父さんに見たことを話すと次のように教えてくれた。
儂らはタオヤジって呼んどるな。言わばあそこの主みたいなモンだよ。
うん? いンや、神様ってほどありがたいモンでもないな。
まぁ精々がモッケ(妖怪)ってところかの。
それからも度々そこに行ったが、再びタオヤジを見ることはなかったそうだ。
『心霊スポットとして有名なダム』
71 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/05/07(日) 00:56:17 ID:03dKBXwI0
友人の話。
大学生の頃、心霊スポットとして有名なダムに、夜一人で出かけたという。
確とした理由はない。強いて言えば、若気の至りだったらしい。
車を停めて、ダムの周りをぐるり一周する側道を歩き出した。
月明かりを頼りに、明かりも持たずに歩を進める。
暗い道をのってりのってり歩いていると、突然背後から大きな水音がした。
まるで大きな石を投げ込んだかのような。
ギョッとして立ち止まるが、闇の中には何も見えない。
と、今度は彼の前方から水音がする。
あまり間を置かずに、次はまた後方から水の音。
怖いものは考えるな。怖くないものを想像するんだ。
海豚、そう海豚だ。海豚が俺の横で、前後にくり返しジャンプしているんだ。
そう自分に言い聞かせ、怖くない怖くないと呟きながら歩き切った。
ザッパーンという水音は、途切れずにテンポ良く続いている。
駐車場への道に出て小走りになった彼の後ろから、鳴き声が浴びせられた。
何とも表現の仕様がない奇怪な声だったという。
海豚じゃなかったよ、やっぱり。
怖れたような、しかしどこかしら残念そうな顔で彼は言った。
『食器』
72 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/05/07(日) 00:57:37 ID:03dKBXwI0
先輩の話。
一人であるキャンプ場に泊まった時のこと。
暗いうちから起き出して出立準備をしている最中、おかしな事に気がついた。
洗った食器をパッキングしていると、明らかに前の晩には無かった傷がある。
樹脂製の食器とスプーンに、びっしりと歯形が付いていた。
力一杯、ガチガチと噛んだ痕が。
ここ、昔に何かあったのかな。そう思いはしたが、調べることはしなかった。
彼はそれ以来、そのキャンプ場を使用しないようにしている。
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