∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part26∧∧
『手招き』
18 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/05/03(水) 03:06:38 ID:0RIA4a450
友人の話。
実家の裏山の手入れをしていると、ふと誰かに見られているような気がした。
顔を上げてみると、自分のいる更に先、木々が暗い天蓋を作っている辺りで白い影が手招きをしている。
誰だい?と声を掛けても返事がない。
近よってみたが、林の中にはどこにも人の姿は見当たらなかった。
そんなことが、山に入る度にあったのだという。
そんなある日、正体を見てやろうと思い切って突進した。
転ばぬように注意しながらも、影から目を離さずに駆けよる。
もう一息という所で、影はふっと融けるように消えてしまった。
あー、やっぱり捕まえられなかったか。
影の立っていた辺りで残念そうに息を整えていると、足元で何かが光った。
窪みに堆積した土砂中に、腕時計ばかり七つほど落ちている。
どれも泥だらけでボロボロ、とうに朽ちて壊れていた。
仕方なく持ち帰り、軽く手を合わせてから捨てたのだという。
関係があったのかどうかはわからないが、以降手招く影は現れていない。
『弾』
19 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/05/03(水) 03:10:18 ID:0RIA4a450
友人の話。
持ち山を歩いていると、道の先に妙な格好をした人の姿が見えた。
迷彩服にごつい銃を持っている。
人ン家の山に勝手に入り込んで、サバイバルゲームでもしてやがるのか?
そう思い少し離れて見ていたが、何やら様子がおかしい。
連れはいないみたいで、しっかりと道の上で姿を晒して歩いている。
ゲームをしているといった感じではなかったという。
時たま足を止めて、目の前の木をしげしげと見やっている。
そしてその木に弾を何発か撃ち込んで先に進む。
そんなことを延々とくり返していたらしい。
後をつけていると、迷彩服が撃った木の辺りで、地面にBB弾が散っていた。
何の気なしに拾い上げて、眉を寄せる。
弾の表面に、御経のような変わった字が書き込まれていたのだ。
落ちていた弾を拾い集めてみると、そのすべてに字があったという。
一体あいつ、何やっている?
顔を上げてみると、いつの間にか迷彩服姿は消えていたという。
そこの道はかなりの先まで一直線、そして目を離していたのは僅かな時間
だったというのに、一体どこへ行ったんだ?
彼はそのまま山道を歩いたが、二度とあの後ろ姿を目にすることはなかった。
妖しげな弾は、すべて拾い集めて棄てたのだそうだ。
『焼いてほしい』
20 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/05/03(水) 03:12:56 ID:0RIA4a450
知り合いの話。
彼の祖父は焼き場守をしていた。
別に志願した訳でなく、単に焼き場が実家の持ち山にあったからなのだと。
祖父が言うには、そこで人以外の物を焼いたことが、一度だけあるのだという。
ある時、中年の夫婦が「焼いてほしい」と、その前年に死んだ一人娘の振り袖を持ち込んだ。
遠くに引っ越すのだがある事情で持っては行けない、かと言って捨てるというのも気が引ける。
この村で焼いて供養したい、そう夫婦は言った。
綺麗な袖を燃してしまうのはちょっと抵抗があったが、断わる理由もないので引き受けたという。
異変が起こったのは、衣全体に火が回ってからだった。
赤い炎の間から、何本もの蒼白い手が伸び上がって宙を掻き毟りだしたのだ。
祖父は目を剥き慌てたが、夫婦はえらく落ち着いていた。
何か悟ったような、いや諦めたような目をしていたので、とても問い質すことは出来なかった。
伸び出た手は、あっという間に燃え尽きて灰となり、崩れて消えた。
夫婦は灰を少しばかり壺に詰め、礼を言って村を去ったという。
焼き場で実際に魂消たっていうのは、後にも先にもあれだけだったよ。
そうお祖父さんは話してくれたそうだ。
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