∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part25∧∧
『黒い沼』
892 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/04/29(土) 00:31:25 ID:o0Cxbb940
友人の話。
中学生の時分、実家へ里帰りした際のこと。
幼い従姉妹と遊んでこいと言われた彼女は、勝手知ったる裏山へ出かけた。
自分もよく遊んでいた場所だ。子供が喜びそうな場所はわかっている。
そんなポイントを連れ回していると、黒い沼が現れた。
ああ、そう言えばこんな所にこんな沼があったっけ。
そう思っていると、従姉妹がグッと足を踏ん張った。
どうしたの?と問うと、青ざめた顔で訴えてくる。
「昨日ね、一人でここまで来たの。
その時ね、首の長い女の人が居たんだよ」
女は水の中に腰まで浸かっていたらしい。
緑色のワンピースの上から長い首が伸びていて、従姉妹を嬉しそうに眺めていた。
目が異様に大きくて、長い黒髪からは水が滴っている。
とんでもなく怖かったので、必死で逃げ帰ったのだという。
だから近づきたくない。従姉妹が泣きそうに言うので、沼を避けて通った。
そう言えば、私もなぜかこの沼には近よらなかったんだよなぁ。
従姉妹の話も、やけにリアルに情景が頭に浮かぶし。
忘れているだけで、自分もその女性を見ていたりしてね。
そう言って彼女はコロコロと笑った。
『猪』
893 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/04/29(土) 00:33:47 ID:o0Cxbb940
同級生の話。
山を歩いていると、急に便意に襲われた。
それ以上歩くことも適わず、仕方なく道傍の藪で用を足すことにする。
思いを遂げ、しゃがんだまま一息ついたその直後。
ガサリ、と目の前で音がした。
慌てて顔を上げた彼の前には、大きな一頭の奇妙な猪がいた。
身体中が黒と灰色の斑毛で覆われている。
おかしいのはその顔だった。
ピンクの鼻の直ぐ後ろから、何本もの白い角が額に向けて伸びていた。
角の付け根からは、黒い粘液がグチグチと流れている様子。血だろうか?
しばし無言で睨み合う。
と、猪が口を半開きにした時、全ての角の根が口の中に繋がっているのが見えた。
・・・あれは角ではない。
下顎の長い牙が、上顎の肉を突き破って、更に伸び上がっているのだ。
「そんなんで飯食えるのか?」
身動きできない自分の体勢も忘れて、思わず猪に話し掛けた。
猪は「詰まらないことを聞く」とでもいうように鼻をフンと鳴らし、
木々の間に消えていったという。
『細長い物』
894 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/04/29(土) 00:36:00 ID:o0Cxbb940
先輩の話。
夕暮れ、茜色に染まる薄野原を歩いていた時のこと。
すぐ側でガサガサと音がするので、何かなとそちらに向かってみた。
薄の茶色葉の間を、白くて細長い物が一本横切っている。
彼の胸くらいの高さで、両端はどちらも薄に埋もれて見えない。
一瞬、大きな蛇かと思ったが、よく見ると鱗がなく柔らかそうだ。
見ている間もズリズリと薄の間を移動しているよう。
尻尾を見てやろうと、しばらく待ってみた。
やがて現れた末端に、尻尾は付いていなかった。
女のものに思える細い手が、彼の目の前を横切って薄野に消えた。
しばらく硬直したまま動けなかったという。
必死で足を動かし、何とか日が暮れる前に薄野原から出たそうだ。
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