∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part25∧∧
『ヤマジュバン』
199 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/03/15(水) 22:06:41 ID:Ro0w9Ckz0
友人の話。
地元の山を歩いている時のこと。
視界の隅に白い物が見えたと思った途端、柔らかい物に飛び掛かられた。
それは滑々とした布のような感触だったらしく、彼の上半身をすっぽりと覆ってしまったらしい。
強く締め付けられた彼はパニックを起こし、何とか剥がそうと地面の上を転げ回ったが、どうしても取れない。
偶々手に触れた枝を折り取って、矢鱈滅多に突き刺しているうち、やっと逃げ出すことが出来た。
それはひらりと宙を飛び、暗い山の中へ消え去ったという。
近くの親戚の家まで辿り着くと、身体のあちらこちらから血が出ていた。
親戚は手当てをしてくれながら教えてくれる。
彼を襲った白い布はヤマジュバンと呼ばれていた。
襦袢という名前のごとく人をすっぽりと包む物だというが、それは血を吸う為であるということだ。
金属の刃物でなければ斬ることが出来ないとも聞かされた。
彼はそれ以来、山に入る時は鉈や鎌を常にぶら下げているのだという。
『葬儀の列』
200 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/03/15(水) 22:08:27 ID:Ro0w9Ckz0
知り合いの話。
彼の田舎には、一寸変わった道があるという。
山へと続いているその道は、かつては目抜き通りだったが、
今では町の中心から外れてしまい、通る者も少なくなっている。
この道を一人歩いていて、葬儀の列と行き会うことがあれば、
決して仏の名前を確認してはいけないのだと言われている。
仏の名前が、自分のものだということがあるからだ。
喪主が抱えた遺影の写真が、自分の顔だということがあるからだ。
慌てて振り向いても、道の上には自分しか居らず、列は幻のように消えている。
・・・そんな不気味なことが時々あるらしい。
自分の葬儀を目撃した者は、遠からず鬼籍に入るのだとも言われている。
だから彼や友人たちは、この近くで葬儀を見かけると、
顔を伏せ、親指を隠して足早に通り過ぎていたそうだ。
「親指を隠すのは理由がわからないけど、皆がそうしてた。
ま、実際のところ“学校の七不思議”みたいな類いの話かもしれないけどな」
二人で葬儀の列とすれ違った時に、彼はそういう話をしてくれた。
『小さな子供』
201 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/03/15(水) 22:11:26 ID:Ro0w9Ckz0
友人の話。
里帰りした時のこと。
裏山を散策していた彼の行く手に、小さな子供の後ろ姿が現れた。
のろのろとゆっくり歩いている。
追い抜いた時、何気なく振り向いて見た。
目も鼻も口もない。小さな模様が、ぎゅっと詰め込まれたような顔をしていた。
彼が硬直するや否や、子供の身体はグズッと崩れる。
耳障りな羽音を立てて飛散したのは、黒いトノサマバッタの大群だった。
彼の身体にも何匹か衝突してきたので、手で顔を覆い身を低くして避けた。
静寂が戻ってきた頃、恐る恐る顔を上げる。
道の上には小さなチャンチャンコが一枚、ポツンと残されているだけだった。
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