∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part24∧∧
『変な噂がある団地』
545 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/01/29(日) 19:20:41 ID:rqz7leFP0
知り合いの話。
彼の家の近くには、割と大きな団地がある。
山中に切り開かれたその団地はまだ新しく、販売された当初は飛ぶように売れたのだそうだ。
しかし、ある時より変な噂が流れ始め、パタッと売れなくなったという。
時々、死んだ者が還ってくるというのだ。
夜、ふと気がつくと誰か庭に立っている。
所在無げにゆらりふらりと身体を揺らしている。
窓越しに顔を確認すると、何年か前に死んだ筈の家族なのだと。
ぞっとするような無表情なので、とても外へ確認に出る気になれないそうだ。
彼も一度、月光の下、自宅の庭に立つ人影を認めたことがあるという。
やはり庭に下りる勇気は持てなかったと話した。
「でも親父だったよ。あの団地に越してから亡くなったんだ」
夜還ってくる者は、団地の中で死んだ者に限られているという噂だった。
現在、彼の家族はその団地から引っ越している。
「でも時々思うんだ。親父が、まだあの家に居るんじゃないかって。
中に入れず、庭で立ち尽くしているんじゃないかって」
何となく寂しそうに彼は言っていた。
『裏山で犬の散歩』
546 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/01/29(日) 19:22:15 ID:rqz7leFP0
友人の話。
飼い犬の散歩は、家族中で彼の仕事なのだという。
その夕暮れも、いつものように犬を連れ裏山を歩いていた。
と、急に引き綱がずっしりと重くなった。引っ張ってもびくともしない。
何を踏ん張ってやがるんだ? 振り返った途端、目が点になる。
引き綱の先に犬はいない。
代わりに彼が引き摺っていたのは、小さな石地蔵だった。
犬の首輪がしっかりと引っかかっている。
薄暗くなった山道、愛犬の姿はどこにも見当たらない。
首を傾げながら家に戻ると、門の所で犬が彼を待っていた。
嬉しそうに尻尾を振っている。
何があった?と尋ねてみても、返事が得られる訳もない。
とりあえず頭を一回撫でて、その日の散歩は打ち切った。
家族に話してみると、これも何かの縁だろうということになり、
裏山への登り口にその地蔵を祀ることにしたという。
誰が参っているのかわからないが、時折はお供え物がされてあるそうだ。
『百舌の早贄』
547 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/01/29(日) 19:24:06 ID:rqz7leFP0
知り合いの話。
地元の野山で作業している時に、木の枝に奇妙な物を見つけた。
彼の肩くらいの高さで、蛙が枝に刺さったまま干からびている。
百舌の早贄(はやにえ)という奴だ。
ふと、親戚のお婆さんが話していたことを思い出した。
「百舌の早贄が木の高い所にある年は、雪が深くなるんだよ」と。
悪戯心を出した彼は、早贄ごと枝を折り取って、木の天辺の方へ差し替えた。
それきり、そのことを忘れてしまう。
その年は暖冬になると言われていたが、蓋を開けてみると記録的な大雪になった。
自宅の雪下ろしをしながら、あの早贄を思い出したという。
「いや偶然だとは思うけどな。偶然の筈なんだけど」
どことなくすっきりしない顔で彼は呟いた。
次の記事:
『大きな平べったい岩』『遺骨』『塩壺』
前の記事:
『お手伝いさん』