∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part24∧∧
『再誕の儀』
294 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/01/03(火) 15:49:33 ID:hwQVSGoq0
知り合いの話。
彼が氏子をしている神社では、
毎年大晦日から元旦にかけて「再誕の儀」と呼ばれる行事が執りおこなわれる。
氏神の再生を祝う神事だということだ。
氏子以外の者は入れずに進行し、
儀式が終わると社は開放されて、一般客の初詣が始まる流れであるらしい。
儀式自体はそのようなものだと思うのだが、
彼にはどうにも一つ、腑に落ちない決まりがあった。
再誕の儀の間、決してその場にいる者の頭数を数えてはいけないというのだ。
なぜかという理由は誰も教えてくれない。
それである年、こっそりと数えてみたという。
何の問題もなく数え終えたが、どこかおかしい。
そこにいるのは見知った顔ばかりの筈なのに、名前が出てこない者がいる。
何度か数え直した彼は更に混乱した。数え直す度に人数が異なっているのだ。
妙に疲れてしまった彼は、数えることを止めてしまった。
今では彼も古参の顔となり、新しい氏子から色々聞かれる立場になっている。
しかし、例の掟について聞かれた時は、笑って誤魔化すという。
「新人君も、そのうち何も聞かなくなるから。
こっそり自分で数えてるんだろうな、やっぱり」
そう言って彼はこの話を締めくくった。
『ご来光参拝』
295 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/01/03(火) 15:51:40 ID:hwQVSGoq0
知り合いの話。
彼は青年団でご来光参拝の手伝いをしている。
近くの山に登り、頂上から初日の出を拝むという行事だが、
日が昇るまで甘酒を振る舞ったり、大絵馬を用意したりするのが仕事だという。
その年、彼は集合時間に遅れてしまい、後から一人で登る羽目になった。
頂上の駐車スペースは一杯だろうし、登っても三十分くらいの道程だ。
そう考えて、暗闇を一人歩いて登ることにした。
もうすぐ頂上、身体もほどよく温まってきた辺りで、不意に気配が湧いた。
暗くてよくわからないが、すぐ横の茂み中を何か大きな影が並んで歩いている。
猪か!? 一瞬動揺したが、努めて足音を大きくし、そちらに目を向けないようにして黙々と歩く。
影はそれ以上のことは何もしなかった。
ただ、影の立てる足音がかなり小さいことを奇妙に思ったらしい。
設置した投光器の明りが目に入って来る頃、影はふっと気配を消したという。
翌朝、撤収を終えて下山する時に改めて気がついた。
あの茂みは小木がひどく密集していて、とても大きな動物が歩けるような状態ではなかった。
『お神酒』
296 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/01/03(火) 15:53:34 ID:hwQVSGoq0
知り合いの話。
造り酒屋をしている彼は、毎年の初めに、地元の神社に新酒を寄贈している。
新年の儀が終わると舞台に青い養生シートが引かれ、
その上で彼が持ってきた樽酒を木槌で開き、詣で客にお神酒として振る舞うのだという。
ある年、木槌の勢いが強すぎたか、酒が大量にこぼれたことがあった。
慌てて拭き取ろうとした彼の目の前で、酒はスーっと独りでに流れ始めた。
真横に一直線。そのまま舞台横まで、素早く流れて落ちる。
驚いている彼に氏子のお爺さんが言った。
なに、山へのお裾分けだ。気にするな。
酒がこぼれた筈のシートの上は濡れておらず、舞台横の地面も同様だった。
山から何か下りて来ていたのかな。そう彼は不思議そうに口にした。
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