∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part24∧∧
『おーい』
55 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/12/22(木) 19:35:18 ID:PJO/01Ta0
友人の話。
山中の池でバス釣りをしている時のこと。
脇の林の中から「おーい」と呼ぶ声が聞こえてきた。
段々と大きくなってくる。彼の方へ近づいてきているらしい。
やがて木々の間から男が一人現れた。
身なりはごく普通の登山者という印象だ。
しかし、目が虚ろで焦点が合っていない。
どこかまともでないのか、すぐ横にいる彼にも、まったく注意を払わない。
男は一旦立ち止まったが、すぐに「おーい」と大声を出して歩き出した。
何の怖れも感じていない様子で、じゃぶじゃぶと水の中に進んでいく。
友人は大いに慌て、男を引き止めるため追いかけたという。
さした抵抗を受けることなく岸まで引きずり戻すと、男は目を瞬いた。
「あの、ここは何処で、一体何があったんでしょう?」
ポカンとした顔で友人に聞いてくる。正気に返ったようだ。
事情を尋ねたところ、山歩きをしているとどこからともなく「おーい」と呼ぶ声が聞こえたらしい。
誰が呼んでいるんだろうと声の方に足を進めているうちに、
気がつけば濡れ鼠で友人に抱きかかえられていたのだと。
「おーい」と声を出していたのはあなただったと言われた男は、信じられないという様子で首を振ったという。
男が無事に山道に引き返した後、彼は夕刻まで釣りを続けた。
残念ながらそれ以降の釣果はぼうずだったらしい。
「池の主様の邪魔をしたんで、怒らせちゃったかな」
そう言うと、彼は小さく舌を出した。
『チブスマ』
57 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/12/22(木) 19:37:15 ID:PJO/01Ta0
友人の話。
夕暮れ時、闇が濃くなる山道を歩いていると、行く手を塞ぐ物が見えた。
壁だ。大きさは立横が二メートルほど、厚みはあまりない様子。
微かにピンク色で、ぼんやり向こうが透けている。
遠目で見た感じ、ゼリーか寒天を連想した。
近づくと、その壁がぶるぶると小さく震えているのがわかった。
加えてひどく生臭い。間近で見ると、内側に何かが埋め込まれていた。
ゆっくりと動いている。何だろうと凝視してみる。
自分が何を見ているのか、最初まったく理解できなかった。
それは薄べったくなった人間の手だった。力なくニギニギをくり返している。
押し潰された人が中に納められている!?
だとすると、一面に走っている赤い筋は血管だろうか。
右下の方にはぼんやりと白い球体が見えた。とても覗き込めない。
半分腰を抜かし、ほうほうの体でそこを逃げ出した。
後で地の者に聞いたところ、あれはチブスマと呼ばれているものらしい。
入ってはいけない日に入山した者が、閉じ込められているということだ。
しかし、その山で行方不明になった者はしばらく出ていないという。
何だったんだろうなアレって。彼はそう言って顔を顰めていた。
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