∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part23∧∧
『廃村巡り』
322 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/11/07(月) 20:55:16 ID:5j0Z8wmJ0
知り合いの話。
好事家の彼は、同好の士とよく廃村巡りをしている。
ある山中の廃村に出向いた時のこと。
そこは最近まで居住者がいたらしく、まだ家屋も崩れきっていなかった。
車を停めてから森の中をかなり歩いたが、その裏寂れた雰囲気は大いに気に入り、
来た甲斐があったなと思ったそうだ。写真を何枚か撮って帰途に着く。
写真部の仲間に現像してもらうと、まるで思ってもいない仕上がりとなった。
彼ら自身が写っている写真には何もないのだが、
廃屋や標識跡を撮った画像には、そこにいなかった筈の人物が、くっきりと写り込んでいたのだ。
それも一人や二人ではない。かなりの集団だ。
不思議なことに、どの人も頭に何かを被っていた。
帽子を被っている者。蓑笠を被っている者。防空頭巾のような物を被っている者。
その全員が一人の例外もなく、被り物の奥の顔は見えない。
ただそこだけ、墨で塗りつぶしたかのように真っ黒になっているだけ。
知り合いの寺に持ち込んだが、そこの住職さんも困ってしまったらしい。
とりあえずお経を上げてもらい、ネガごと預けて帰ってきたという。
彼らの身には今のところ、何も悪いことは起こっていないそうだ。
『樹液』
342 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/11/08(火) 19:04:57 ID:oURNWop+0
同僚の話。
子供にカブトムシを獲ってやろうと、馴染みの山に入ったという。
昨今、田舎でもカブトやクワガタは数が少なくなっている。
手っ取り早く捕まえるため、太い椚の木肌を傷付けておいた。
傷口からこぼれた樹液が、目当ての獲物を呼びよせる訳だ。
三本ほど引っかき、明日の朝が楽しみだと思いつつ、最初の椚まで戻ってくる。
ツンと鉄の匂いがした。
何の匂いだろうと幹を見やると、彼が付けた傷から黒っぽい汁がこぼれている。
すっと指で拭ってみた。鮮やかな朱がヌルリと指先から滴る。生温かい。
樹液などではない。まるで血液のように思えた。
踵を返して逃げ出した。
翌朝、子供にせがまれて、仕方なく件の場所に連れて行く。
付けたはずの傷は跡形も見えず、液体が吹きこぼれた様子もなかった。
近場の木でカブトムシを何とか捕まえ、親の面目を保ったそうだ。
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