∧∧∧山にまつわる怖い話Part20∧∧∧(※実質21)
『奇妙なお爺さん』
540 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/08/11(木) 22:42:18 ID:KemRKEG20
友人の話。
彼は幼い頃、よく神社の境内で遊んでいた。
そこには奇妙なお爺さんがいたのだと彼は言う。
その老爺は、子供たちが遊んでいると、いつの間にか舞台の上に現れていた。
作務衣のような服を着て杖を持ち、終始ニコニコとしていたそうだ。
奇妙なのはその頭だった。
ズルっと引っ張ったかのように、眉毛の上辺りから延々と禿頭が伸びていたのだ。
所々皺のある白い頭部は、途中で地の上に垂れ下がり、社裏の山中へ消えていた。
まるで白い蛇の頭部に老爺が生えているような、何とも不思議な姿だった。
普通の存在でないことは子供心にもわかったので、声をかけたことはないという。
「老人の姿が見えていたのは自分だけだ」と思い込んでいた彼は、大きくなってからそれが間違いであったことを知る。
成人式で再会した幼馴染みが「今だから言うんだけど」と前置きして、件の頭が長い老人の話をしたのだ。
幼馴染みも彼同様、他の子供にはその姿が見えていないと信じていたらしい。
現在、二人は仲の良い夫婦になっている。
『山奥の淵』
541 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/08/11(木) 22:46:16 ID:KemRKEG20
知り合いの話。
里山で山菜採りをしていて、普段入らないような山奥まで踏み入ってしまった。
実家の者から、あまり奥まで行くなと注意されていたのを思い出す。
そろそろ引き返そうかと思案している頃。
小さな淵を見つけた。水が冷たそうで、思わず手を伸ばして涼を取る。
その時、急に悪寒が走った。全身に鳥肌が立つ。
目を上げると、何かが水中から浮かび上がってくるのが見えた。
かなりの大きさがある黒い影。
出来るだけ静かに立ち上がり、背を向けて歩き出す。
二、三歩進むと背後で水が流れる音がした。何かが水を割って現れたかのよう。
恐怖を押さえ、そのまま歩を進めた。
幸い、背後の気配はそれ以上追ってこなかった。
麓に辿り着いて、腰が抜けたようにへたり込んだ。
山菜を淵に忘れてきたことに気がついたが、取りに帰るのはとても出来なかった。
漸う屋敷に帰り年寄りに話したところ、それは牛鬼だと教えられた。
昔からこの辺りの山奥に棲んでいる魔物らしい。
何もなかったことで安堵した後、注意を聞かなかったことでひどく怒られた。
「すぐに引き返して良かった。目が合ったら死ぬと言われているからな」
怒られるまでもなく、二度とその奥に行くことはないと彼は言っている。
『Made in Japan』
542 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/08/11(木) 22:49:14 ID:KemRKEG20
知り合いの話。
カメラマンの助手として、中東のある国を訪れていた時のこと。
現地ゲリラの取材するため、伝を頼って山奥の集落を訪れたという。
取材は特にトラブルもなく終了したが、帰り際に彼らの持つ銃を見て驚いた。
“Made in Japan” 確かにそう刻印されていたのだ。
思わずその刻印は何だ?と尋ねてみると、あっさりとした応えがあった。
「御呪いさ。弾をよく当てるためのね」
重ねて詳しく聞いてみたが、彼らはその文言がどういう意味なのか知らなかった。
この文字が英語だということさえ知っているかどうか、という感じだったという。
ゲリラの集落には銃を専門に作っている所があるそうで、そこの鉄砲鍛冶に頼むとこの刻印を入れてもらえるらしい。
ちゃんと刻印専門の加工者も居るのだとか。
銃以外にも、壊れてほしくない物に刻むこともあるらしい。
日本人の与り知らぬ所で、日本の名が人を殺す呪文になっている。
些か呆れた後、少し怖くなったのだそうだ。
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