∧∧∧山にまつわる怖い話Part20∧∧∧(※実質21)
『砂』
420 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/08/06(土) 19:49:38 ID:+xw9RDTF0
知り合いの話。
林間学校の夕食後のこと。
食器を川砂で洗っていると、ズズッズズッという音がどこからか聞こえてきた。
砂の上で重い物を引きずっているような音だ。
何だ? 顔を上げて初めて、いつの間にか一人きりになっていたことに気がつく。
途端に心細くなり、暗くなりかけた河原から急いで引き上げようとしたその時。
いきなりそいつが目の前に現れた。
上流側の藪を割って出てきたのは初見、灰色の人間に見えた。
ズズッと足を引きずって前に出る度、砂がパラパラとこぼれて落ちる。
砂塗れになった人かと思ったが、どこにも肌は覗いておらず、
まるで人型の空間に砂がみっしりと詰まっているかのような感じを受けた。
彼に数歩近づいた所で、そいつは躓いて前のめりに倒れた。
ドサッという音を立てると、あっという間に崩れてただの砂になる。
慌てて宿営地に戻り大声で訴えたが、誰も相手にしてくれない。
翌日、仲間を連れて河原に向かったが、小さな砂山が残っているだけだった。
『大きな松の根元』
421 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/08/06(土) 19:50:53 ID:+xw9RDTF0
友人の話。
単独で小さな山に篭もっていた時のことだ。
夕暮れ時、そろそろ野営に入ろうかと思い、適当な場所を物色していた。
大きな松の根元に丁度テントが張れるほどの平坦な場所を見つけ、荷物を降ろす。
その時、頭の上からくぐもった話し声がした。
かすれていて話の内容は聞き取れなかったが、二人で何事か相談している感じ。
何だろうと思って見上げようとした瞬間、ザザァッ!と何かが大量に降ってきた。
次々と登山帽にぶつかって地上に散ったそれは、きらりと金属の光沢を見せる。
数え切れないほどもある注射器の針だった。
見たところ、どうやらすべて使用済みの物のよう。
頭が理解するや否や、慌てて飛び退る。
幸いにも、身体に突き立った針は一本もなかった。
脱兎のごとくその場から逃げ出し、かなり離れた場所で休んだそうだ。
「ひょっとしたら片付けてほしかったのかな」
そう考え付いたのは、山を降りてからだったという。
『女のすすり泣く声』
422 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/08/06(土) 19:52:16 ID:+xw9RDTF0
知り合いの話。
山中で一人野営をしていた時のこと。
焚き火にあたっていると、すぐ近くから女のすすり泣く声が聞こえてきた。
ギョッとして声のする闇の中を透かして見ると、
大きな猿が一匹、頭上の高枝に蹲っていた。興味深そうにこちらを窺っている。
何だ、驚かせやがる。まったく気持ち悪い声で鳴く猿だな。
睨みつけるとすぐに猿は興味を無くしたようで、こちらに背を向けた。
その背中、赤黒い毛皮の中に、場違いな白い物が貼り付いていた。
血色の悪い、しかし綺麗な若い女の顔。
彼と目が合うと、再び哀しげに泣き始める。
腰を浮かした彼が何をする間もなく、猿は暗い森の中へ飛んで姿を消した。
自分の見た物が理解できず、その夜は結局眠れなかったという。
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