∧∧∧山にまつわる怖い話Part20∧∧∧
『廃棄車両』
527 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/06/29(水) 00:36:46 ID:stsJLQTI0
友人の話。
初夏の山で藪を漕いでいた時のこと。
藪を抜けた先。ちょっと広くなった場所に、場違いな物が転がっていた。
車だ。軽自動車ではなく普通車の廃棄車両。
誰がこんな山中の林道にまで捨てに来たのだろうか。
白のボディに、水垢汚れがこびり付いて黒い筋を作っている。
近寄ってみて、あることに気がつき嫌になった。
車のボンネットやドアに、地と同色の御札がベタベタと貼られていたのだ。
窓がすべてスモークなのだろうか、彼の立ち位置から中は窺えない。
と、視界の中で何かが動いたのを感知した。何だ?
動きのあった辺りをよく見ると、助手席側の窓が数センチほど開いている。
暗い車内に何がいるのか、確認するような真似はしなかった。
それ以上近よる気にはならず、そのままそこを後にしたという。
彼はそれからもちょくちょくその近くを通りがかったが、その車は一年もしない内に誰かに撤去されたそうだ。
『犬の鳴き声』
528 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/06/29(水) 00:38:58 ID:stsJLQTI0
私の体験した話。
大学生の折、私より更に山奥に住んでいる友人の家に遊びに行ったことがある。
彼の部屋に上がり込んで四方山話をしているうち、夕立が来た。
激しい雷が鳴り響くと、外で犬の鳴き声がした。ひどく怖れている様子。
他の多くの犬と同様、ここの家の犬も雷が苦手なのだろう。
「大丈夫、怖がるな」友人は外に向かい、声を張り上げた。
犬の鳴き声は小さくなったが、依然止まない。
玄関にでも入れてやったらどう? そう提案してみた。
彼は顔も上げずにポツリと答えた。
「うちの犬な。去年、死んでるんだ」
思わず手が止まる。
野良犬でも居着いたかと問えば、最近はここら奥でも野良などいないと返された。
鳴き声はいつの間にか聞こえなくなり、雨も直に止んだ。
帰り際、庭を覗いてみたが、ただ空っぽの犬小屋があるだけだった。
『村外れの洞窟』
529 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/06/29(水) 00:42:39 ID:stsJLQTI0
知り合いの祖母の話。
戦時中、疎開先の山村で防空壕を掘ろうということになった。
どう考えても米軍戦闘機が来襲するような場所ではなかったらしいが、
村人なりに戦争に参加しようという心の働きから、そういう行動をしたのではないか―
というのはお祖母さんの説明だ。そんな空気の時代だったらしい。
村外れの森に手頃な大きさの洞窟があったので、そこを拡張することにした。
作業にかかり数日、おかしなことが起こり始める。
洞の奥で一緒に作業していた仲間が、いつの間にか居なくなっていたのだ。
まだ若い人妻だったという。
出たのに気がつかなかったのだろうと思っていると、洞前で作業している者たちは誰も外には出てこなかったと言い切った。
健康な男性のほとんどは戦地に出ているので、堀手はほとんど老人や女手ばかり。
狭い村のこと、皆素性は知れている。居なくなる理由など誰にも思いつかない。
不気味に思いはしたが、それでも作業を止めることはなかった。
じき、二人目が消えた。年を取っていたが、やはり女性だったという。
三人目が居なくなった時点で、防空壕の話は立ち消えになった。
これもやはり女性だった。
後で調べたところ、どうやら件の洞穴は、良くない因縁のある場所だったらしい。
大昔に何かを追い込んで狩ったという言い伝えがあったみたいだが、それについて誰も詳しくは知っていなかった。
その洞の話題は村の禁忌になり、誰も口に上らせなくなる。
特に女の人は、昼でもその近くに行くのを嫌がるようになった。
間もなく終戦を迎え、疎開組の人たちもその村から引き上げた。
その後、行方不明になった人たちが帰ってきたかどうか、お祖母さんは知らない。
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