∧∧∧山にまつわる怖い話Part20∧∧∧
『遺留品』
151 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/06/20(月) 01:27:13 ID:JpRv6rBm0
先輩の話。
一人山中で露営していた時のこと。
夜中にザッザッザッ・・・という、砂を踏みしめる音で目が覚めた。
何かがツェルトの周りを歩き回っている。
どうやら、音を立てている主は複数いる様子だ。
狸かな?寝袋に包まって考えていると、いきなり音はピタリと止んだ。
同時に何やらブツブツ呟く声が前後左右から聞こえだした。
内容は聞き取れない、しかし明らかに言葉を紡いでいる。
動物じゃない!身を硬くする彼の鼻に、肉が腐ったような臭いが入ってきた。
もう寝るどころではない。
辺りが白み始める頃、ようやくブツブツという声は聞こえなくなった。
恐る恐る外を覗いてみたが、辺りには何も居ない。
しかし何かが居た証拠に、ひどい臭いがテントの周りに立ち込めている。
大きく息を吐いて外に出ると、臭い以外にも遺留品があった。
弦が壊れレンズも割れた眼鏡が五つ。忘れ物のように落ちていた。
気味が悪いので、無視してそこを発ったのだという。
果たして次の夜にも、怪しい声音と饐えた臭いがテントの周りに現れた。
そして翌朝、やはり壊れた眼鏡が五つ残されていた。
彼は穴を掘って眼鏡を埋め、形ばかりだが手を合わせ弔った。
効果があったのか、それ以降、怪異に襲われることはなかったという。
『薪を焚いて風呂を沸かす』
152 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/06/20(月) 01:28:02 ID:JpRv6rBm0
友人の話。
彼の実家は山の中にあり、今でも薪を焚いて風呂を沸かしている。
先日久しぶりに里帰りした折、偶にはと彼が沸かすことになった。
慣れないことで手際は悪かったが、何とか火を点けて一服していると、どこからともなく小さな歌声が聞こえてくる。
初めは空耳とばかり思っていたが、やがて気がついた。
歌は正に目前、釜の炎中から聞こえていたのだ。
不気味に思ったが、実に楽しげで気持ち良さ気な様子。
母屋の祖父に相談してみた。
祖父さんはちょっと顔を顰め「こりゃ今日は風呂抜きだな」とこぼした。
普段と同量の蒔を燃したのに、風呂桶の水は最後まで冷たいままだった。
仕方なく家族皆、その日は行水で済ませたという。
なぜか理由を聞く気にはならなかったそうだ。
『ウロコ』
153 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/06/20(月) 01:29:50 ID:JpRv6rBm0
友人の話。
バス釣りの仲間に、とある山中の貯水池に連れて行ってもらった時のこと。
そこは釣り行為禁止だったが、釣りキチにそんな約束など通用しない。
皆、柵がかかっていない流出用水路から、半分泳ぐようにして池内に侵入していた。
その水路の上には樹木が覆い被さっており、絶好の目隠しになっていたのだ。
胸まであるウェーダーを身に着け、いざ彼も仲間たちと突入しようとしたその時。
バシャバシャと奥の方から水音がした。
見れば、先導していたバサーたちが、足早に水をかき分け引き返して来る。
彼らは友人たちを見、話しかけてきた。
今日は止めとけ。ウロコが出たぞ。
ウロコ? 鱗のことだろうか。
不審がる彼を尻目に、仲間たちは「それじゃ仕方がないな」とあっさり撤収し始めた。
誰に尋ねてもはっきりとした答えは得られない。
今に至るも真実は不明だが、自分のテリトリーの池ではないので、詳しくは聞けないのだという。
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