∧∧∧山にまつわる怖い話Part19∧∧∧
『ハズレ』
108 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/04/23(土) 01:55:19 ID:HZSm7jnN0
友人の話。
機械部品の運搬中、山中に車を停めて弁当を開いていた時のこと。
視界の隅に黒い物が踊った。
烏だ。二羽の烏がゴミ袋のような物を突付いている。
袋の口は縛られていたが、烏は器用に嘴を使ってそれを解いていく。
感心しながら眺めているうち、ついに袋は口を開いた。
烏は一緒に中を覗き込み「チェッ!」「ハズレ!」と口々に文句を垂れた。
思わず耳を疑った彼を尻目に、烏たちは羽ばたいて空に消えていく。
後に残された袋が、風に吹かれて彼の方に口を向けた。
袋の内から何かが彼を睨んでいた。薄い頭髪。無精髭。
脂ぎった中年男の顔だ。歯を食いしばって目を剥いている。
彼は転がるようにして車から降り、風に転がる袋を取り押さえた。
拾い上げた袋の中に入っていたのは、只の紙屑と菓子パンの空き袋だけ。
もし袋が当たりだったならば、一体中には何が入っていたんだろう?
しばらくの間、そればかり考えていたそうだ。
『鈴の音』
189 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/04/29(金) 16:29:02 ID:7D7pkiLH0
知り合いの話。
彼の義理の父親は猟が好きで、地元の猟友会に所属している。
仲間数人で小規模な巻狩りをおこなった時のこと。
猟銃を抱え、勢子が獲物を追い立ててくるのを待っていると。
リン、という鈴の音が聞こえた。
さては熊除けに鈴を付けた登山者でも迷い込んだか。
そう考えているうち、どんどん音は近づいてきた。
しかし鈴の持ち主の姿は一向に見えない。
さすがに不気味に思い始める頃、別の方向からも鈴の音が聞こえてきた。
リン、リン、リン、リン
気がつくと義父は四方を鈴の音に囲まれていた。
震える手で無線を操り、仲間に状況を知らせる。
「皆でそこに行くから動くな」
見知った顔が視界に現れるまで、非常に心細かったという。
皆が揃うと、そこで山を降りることになった。
鈴音も周りを取り囲みながら、ぴったりと着いて来る。
麓付近の沢を超えた時、音はぱったりと着いて来なくなった。
「流れ水は渡れない輩だったか」誰かがそう言って息を吐いた。
呆れたことに、義父らはそれ以降もその山で、度々狩りをおこなっている。
もっとも奇妙な物に出くわしたのは、その時以外ないそうだ。
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