∧∧∧山にまつわる怖い話Part19∧∧∧
『私有地の竹薮』
39 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/04/17(日) 20:09:21 ID:JLiWMsIh0
友人の話。
彼が通っていた小学校は小高い山の上にあった。
きちんとした登校路はあるのだが、彼の家からはかなりの遠回りになるので、
一人の時はよく私有地の竹薮を抜け道として使っていたのだそうだ。
ある日、怖い顔をした小父さんに捕まった。その竹薮の持ち主だという。
勝手に他人の土地に入ったことをこっ酷く怒られてから開放された。
その際に言われた。
「もうここを通るんじゃない。取られるぞ!」
怒られて落ち込んでいた時はよくわからなかったが、家に帰って冷静になると叔父さんの言葉がひどく気になった。
一体、何が何に取られるというのか。
しばらくしてから、学校側から「登下校の時は私有地に入らないように」という注意が出された。
あの家の人から学校に苦情と注意があったらしい。
見張り役の教師も立つようになり、さすがの彼も竹薮には入らなくなった。
高校生になって友人の家に遊びに行った折にふと、この体験を話すことになった。
すると、友人の父親から不気味なことを聞かされた。
「あそこの竹薮ってね。これまでに何人か、子供が消えているんだよ。
私が聞いた一番古い話は戦前のことだけど、多分その前もあったんだろうね。
私らの代じゃ、結構有名な話だよ。
戦後、竹薮があそこの人に買われてからは何も起こっていないみたいだけど」
現在、小学校付近は開発が進み、あの竹薮も既に住宅地となっている。
『クチナシ』
58 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/04/20(水) 02:44:40 ID:Yse+VKJv0
友人の話。
泊りがけで渓流釣りに出かけたという。
その沢には彼の他に誰もおらず、良い穴場を見つけたと少し浮かれていた。
なかなか見事な岩魚が上がったので、刺身と骨酒にして楽しんだ。
日もとっぷり暮れ、そろそろ寝ようかと考えている頃合。
ぱちゃぱちゃ、という音が聞こえた。何かが川を渡ってくる。
一体何だと目をやると、間もなく真っ白い人影が彼の前に立ち現れた。
細くてひょろ長い身体。衣服の類は何も身に着けていない。
股間には何も確認できず、つるりとしているだけ。
股間だけではない。身体の表面という表面がつるりとして青白かった。
何より彼を硬直させたのは、そいつの顔だった。
あるべき所にある物が何も付いていない、のっぺらぼうなのだ。
しばらく焚き火を挟んで、双方無言のまま対峙していた。
やがてのっぺらぼうは踵を返し、ぱちゃぱちゃと元来た闇の中へ消えていった。
もう寝るどころではない。夜が明けるや否や、すぐに撤収したのだという。
帰ってから年配の釣り仲間にしどろもどろ話してみると、次の一言。
「運が良かったなぁ、クチナシで。口があったら食われているところだ」
穴場となる場所にはそれなりの理由があるのだと、つくづく痛感したそうだ。
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