∧∧∧山にまつわる怖い話Part18∧∧∧
『揺れる黒い影』
591 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/03/27(日) 22:14:38 ID:gRPExnPO0
知り合いの話。
子供の頃、実家の裏山で不気味な物を見たのだという。
風呂の焚き付けにする木っ端を拾い集めている時のこと。
普段足を踏み入れない森の奥に、何かぶらぶら揺れる黒い影が見えた。
彼のランドセルくらいの大きさだ。
何だろうと、側に近寄ってみた。奇妙な物が木にぶら下げられている。
腹を掻っ捌かれ、臓物を抜かれた小動物の死骸だった。
頭は落とされている。見たところ狸のようだ。
慌てて一緒に薪集めをしていたお祖父さんを呼びに行ったが、引き返してくると既に死骸は消え失せていた。
話を聞いたお祖父さんは渋い顔。
聞けば、猿神の仕業なのだという。
滅多に出ないのだが、件のように捌かれた死骸を見つけると、里ではしばらく山に入るのを止めるのだと。
それを聞いて思わず「人間も捌かれたことがあるの?」と尋ねてしまう。
お祖父さんの答えは「さぁて、それは聞いたことがないな」ということだった。
以降、彼はしばらく一人で山に入れなかったそうだ。
『贈り物?』
703 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/04/04(月) 02:49:15 ID:rZVKqb3O0
友人の話。
真夏日に山歩きをしていた時のこと。
開けた道を進むうちに、崩れかけた廃屋が見えてきた。
丁度いいや一休みしよう。
彼は強い陽を避けようと、薄暗い屋内へ踏み入った。
廃屋はかなり崩れていたが、しっかりと日陰になった上、風通しが良かった。
ホッと一息ついていると、奇妙な物が目に入った。
神棚の残骸の下、柱の途中から赤い網がぶら下げてある。
季節外れの蜜柑だった。三個入っていて、表面が白くなっている。
てっきり黴だと思ったが、やがて間違いに気がついた。
蜜柑はカチカチに凍って霜を噴いていたのだ。溶け始めている。
なんで冷凍蜜柑がこんな所に? 考えてみたが答えは出ない。
704 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/04/04(月) 02:49:46 ID:rZVKqb3O0
唐突に、山から自分への贈り物だという考えが浮かんだ。
まさかなとすぐに否定したが、その考えは頭からなかなか消えず、
食べずにここを出るのも失礼に当たるのではないかと悩んでしまったらしい。
混乱してしまった彼は、とりあえず神棚に手を合わせ礼を言上した。
ありがとうございます。ただ今は喉が渇いておりません。
気持ちだけ頂戴いたします。
そう頭を下げると山道に戻ったのだという。
麓が近づくにつれ、何かすごく間抜けなことをしたような、いやあれで良かったのだと、思いは千々に乱れたそうだ。
数ヶ月後、再びそこを通ったが廃屋は陰も形も見えなかった。
白昼夢だったのかもしれない、と彼は頭を掻きながらこの話をしてくれた。
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