∧∧∧山にまつわる怖い話Part14∧∧∧
『当たり付き自動販売機』
812 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/12/09 01:48:20 ID:NpO2XFNm
先輩の話。
実家近くの山の展望台に出かけたのだという。
ひとしきり眺望を楽しみ、缶コーヒーでも飲もうと自販機に向かった。
休憩所に置かれていた自販機は、当時よく見られた当たり付きのタイプだった。
いきなり当たりが出た。もう一本選ぶと、それもまた当たりとなる。
調子に乗った先輩はボタンを押しまくった。
五本連続で当たった時点で、さすがにおかしいと指を止める。
壊れているのかな?と思い、器械を叩いてみたりした。
と、背後でガサガサと音がする。
振り向くと毛むくじゃらの赤黒い手が五つ、藪の中から突き出されていた。
本体はよく見えない。
足元の六本の缶ジュースと目の前の手をしげしげと見比べた。
数はぴったりだ。
一本ずつ缶を握らせると、手は静かに薮中に引き返していったそうだ。
『裏山で造ったお酒』
813 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/12/09 01:49:38 ID:NpO2XFNm
同僚の話。
戦前、彼の実家は裏山でお酒を造っていたらしい。
天然の洞を利用して醗酵させていたそうだ。
村では他にも何軒かが酒造りをしていたが、彼の家の酒は格別に美味かったという。
家の言い伝えによると、その昔、山の主がその洞で子供を産んだということだった。
どういう事情があったのかは不明だが、家の者が主に洞を提供したのだと。
無事に出産を終えた主は山に帰る前、家族にこう言い残した。
酒造りをしているのか。ならばここで酒を造ればよろしい。
主がいた洞は、温度の変化がなくなったみたいに、いつもひんやりしていたという。
空気も心なしか澄んでいるようだった。
二十年くらい前に崖崩れがあり、その洞は今はもうない。
「本っ当に残念だよ」酒好きの彼はそう言っている。
『神隠しに遭う山』
814 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/12/09 01:50:39 ID:NpO2XFNm
知り合いの話。
彼女の実家の墓所は、町外れの山の中にある。
墓参りに行く度、「一人で山の奥に入るんじゃない、神隠しに遭うぞ!」
そう厳しく言われていたという。
長じてから、その山の謂れを知った。
その山に一人で迷い込んだ者は、次の日までに消えてしまい、見つからなくなるのだと。
何となく不気味に思われて、子供たちはその山の近くで遊ぼうとはしなかった。
大学生となり、地元の歴史を調べていた時、彼女はとある事実を知ってしまった。
件の山はごく近世まで、姥捨て山として存在していたのだ。
神隠しの山を、人を捨てる地に利用したのは、誰のどのような思惑だったのか。
それとも捨てたことへの後ろめたさから、神隠しのような噂が生じ、禁忌の土地へと変わったのか。
今では、色んな意味でその山が怖いのだという。
墓参りの時は、子供たちから絶対に目が離せないそうだ。
次の記事:
『奥多摩へナイトハイク』
前の記事:
『近所の河原でお金を拾った』