∧∧∧山にまつわる怖い話Part13∧∧∧
『悪夢に襲われた』
857 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/10/22 22:58:40 ID:qnb6QCKe
後輩の話。
彼のお父さんが、一人で初秋の山に入っていた時のこと。
ある夜中、とてつもない悪夢に襲われた。
夢の内容はまったく思い出せないのだが、非常に恐ろしく気持ちの悪いものであったらしい。
意識のどこかで「これは夢だ」とはっきり判っているのに、自力で覚めることが出来ず、どんどんと胸が苦しくなっていった。
夢の中であるのに、実際の体温が下がっているのが判ったという。
これは危険だ! 何とか目覚めようと苦闘していると。
唐突に、何かが空気を切り裂く音がした。続いて湿った物が地に落ちる音。
音を聞いた途端、はっきりと目が覚めた。苦しさは幻のように消えていた。
思わずテントの外を覗いたが、闇の中には何も見えなかった。
翌朝。テントの傍に奇妙な物が落ちていた。
白い破魔矢と、赤黒い柘榴の実が一つ。
柘榴は破魔矢に貫かれて、ばらばらに弾けていた。
柘榴はその場に埋めて、破魔矢は大切に持ち帰ったという。
今でも後輩の実家の神棚には、その破魔矢が大切に祀られているのだそうだ。
『山で下生えを刈っていた』
858 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/10/22 22:59:51 ID:qnb6QCKe
友人の話。
山で下生えを刈っていた時のこと。
鎌を振る手を休め、近くにあった樹木によりかかって休みを取った。
「!」小さな、しかし鋭い痛みを腕に覚え、慌てて身を翻す。
左の二の腕から血が滲み始めている。まるで小動物に噛まれたような傷だ。
傷を押さえたその時、自分がよりかかっていた木に、何か違和感を感じたという。
不審に思い右手の鎌を木の方へ伸ばすと、いきなり表皮が波打った。
そのままスルスルと表皮は木から剥がれ落ち、下生えの中を滑るようにして消えた。
唖然とする彼の前には、つるりとした百日紅の木が一本、何事もなかったかのように残されていたという。
『野犬』
859 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/10/22 23:01:40 ID:qnb6QCKe
友人の話。
彼は学生の頃、映画作りに嵌まっていたという。
サークル仲間と一緒に、短篇ホラー映画を製作していた時のこと。
訪れる者とていない、ある山奥の廃村を舞台にしたそうだ。
撮影に入って二日目の夜、ある鳴き声が皆の目を覚まさせた。
ワン!ワン!ワン!ワン!・・・
犬の声だ。遠くから聞こえてくるが、何故か耳によく通る。
一頭だけのようだが、どことなく奇妙な調子の声だった。
鳴き声はだんだんと近づいてきており、さては野犬かと、皆緊張したという。
やがて声の主は野営地に侵入し、テントの廻りをぐるぐると回り始めた。
その時になってようやく、鳴き声のどこが奇妙なのかがわかった。
ワンワン鳴いているのは犬ではなかったのだ。
・・・ワン!ワン!クソ!ワンワン!クソッタレ!ワン!・・・
犬の泣き声を真似している何かは、時々悪態を混ぜながら一晩中テントの周りをうろつき、明け方にやっと去って行った。
辺りの湿った地面には、何の痕跡も残されてはいなかった。
結局、廃村の映像は使われず、その作品も未完成のまま日の目を見なかった。
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