∧∧∧山にまつわる怖い話Part13∧∧∧
『大きな山火事の後片付け』
358 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/10/02 23:36:31 ID:UXyuxyzL
知り合いの話。
大きな山火事の後片付けをしていた時のこと。
かろうじて延焼を免れた林の中で、大勢の猿が折り重なって死んでいた。
炎は避けられたのものの、煙に巻かれてしまったらしい。
既に腐敗し始めているようで、臭いと蝿がひどく気になったという。
哀れに感じて手を合せていると、一緒に作業していた相方が彼を急かした。
半ば引きずられるようにして林の外へ連れ出される。
不審に思った彼がどうした?と聞くと、相方は不気味なことを言い出した。
「一頭だけ、まだ死んでいなかったんだ」
纏わりつく蝿を追い払っている内、おかしなことに気がついたのだそうだ。
蝿がまったく集っていない骸が一体。
長柄で突付いてみると、ぎろりと目だけ動かして彼を睨んだ。
はっと息を呑んだ直後に猿の視線は逸れて、元の状態に戻ったという。
二人とも林に戻る気などしなくて、本部に報告だけ入れておいた。
次の日、別の作業班がその林の中に入ったのだが、
山のようにあった猿の死体は、三頭を残してきれいさっぱりとなくなっていた。
ただ、一面に酷い腐敗臭が立ち込めていて、それに閉口したと伝え聞く。
『ひろし』
360 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/10/02 23:40:02 ID:UXyuxyzL
私の体験した話。
山中の一軒家に、改装の仕事で呼ばれた時のこと。
洗面所の壁紙の寸法取りをしていると、入り口の柱に傷があるのに気がついた。
鋭い物で横に引っ掻いてあり、その線の横には小さく名前が書かれていた。
『たかし 五歳』『たかし 七歳』『ななこ 四歳』
背比べの跡だ。以前この家に住んでいた家族のものらしい。
何とはなく微笑ましく思えて、心が和んだ。
立ち上がった時に、天井付近にも何か刻まれているのに目が行った。
その家は普通より天井が高く、三メートル近くはあったのだが、誰が付けたのかそこの柱にも傷があったのだ。
傷の横には、下手な角ばった字体で『ひろし』とだけ書かれていた。
施主は、柱も色を塗り直してくれと伝えてきた。
私は一も二もなく賛成し、濃い茶色系の色を選択した。
丁度、下の傷や落書きがすべて見えなくなるような色を。
その時の施主とは、今も仕事の付き合いが続いている。
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