∧∧∧山にまつわる怖い話Part12∧∧∧
『盆踊り』
701 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/09/10 21:44:24 ID:mX/drC5t
知り合いの話。
大戦前のことだ。彼の里では、毎年夏の終わりに盆踊りを執り行っていた。
規模は小さいながらも、会場には提灯を吊るし櫓が組まれ、夜店も出た。
その里では大切な行事だったそうだ。
彼のお爺さんは、会場の設営や撤去などを手伝っていた。
常々、不思議に思うことがあったのだそうだ。
撤去片付けは祭りの翌日と決まっており、当日は簡単に片付けてから帰っていた。
次の朝来ると、誰かがこっそりと会場を使用した後が見受けられたという。
ごく一部だけだったが、前日掃いた地面に足跡が残っていたり、物を焼いた形跡があったりしたらしい。
痕跡は明らかなのに、誰もそのことは口にしなかった。
もしかすると、山から下りてくる何かと共存していたのかもしれないね。
お爺さんはそう考えていたそうだ。
戦後に農暦を使わなくなってからは、とんとそんなこともなくなった。
今では隣町と合同で、大きな盆踊りを開催しているが、
夜の間に会場を使う者は、もういない。
『味噌汁』
702 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/09/10 21:45:41 ID:mX/drC5t
友人の話。
天文好きな仲間が集まって、山に数日間こもったことがあるという。
街の光を避けて(光害と呼ぶのだそうだ)、星の写真を撮るのだと。
ある朝目を覚ますと、テントの中にいい匂いが充満していた。
味噌汁の香りだった。
誰も味噌など持参しておらず、誰もが首を傾げた。
その日の朝食はインスタントラーメンだったが、皆どこか物足りない顔だった。
結局、予定を繰り上げて、その日の内に下山した。
そして全員が麓の町食堂で、味噌汁のついた食事を摂ったのだそうだ。
『硬い小さな音』
703 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/09/10 21:46:32 ID:mX/drC5t
知り合いの話。
夏の終わりに、山中の無人駅で野宿した時のこと。
ベンチで眠りにつこうとする彼の耳に、硬い小さな音が聞こえた。
コーンッ カツッ
何かが繰り返し、固い床の上に落ちているような音。
一度意識すると無性に気になってしまい、音源を捜して暗い構内を歩き出す。
ホームの外れに、駅舎とは違う小さな建物が見えた。
どうやら音はそこから聞こえているらしい。
懐中電灯を構えて覗き込むと、そこは薄汚れたトイレだった。
黄ばんだ小便器の前、何かがモルタルの床で弾んでいる。
コーンッ カツッ カッ カ カカカ…
ピンポン球ほどのきれいに磨かれた鋼球が、膝くらいの高さから落下していた。
鋼球は床で跳ねながら、段々と弾まなくなる。
弾まなくなると、何かに持ち上げられるように、ゆっくりと空中に上昇する。
そしてまた落下するということを繰り返していた。
気がつくと、吐く息が白い。
季節はまだ夏だというのに、トイレ内はかなりの低温状態になっていたようだ。
しばらく球を見つめていたが、他に何かできることがあるわけでなく、彼はトイレを後にした。
夜半過ぎまで音は聞こえていたという。
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