∧∧∧山にまつわる怖い話Part10∧∧∧
『新参者の所』
164 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/06/26 01:11 ID:hER8CLz1
知り合いの話。
彼は数年前に脱サラし、山村に移り住んで稲作農にいそしんでいる。
その最初の年のことだ。
そろそろ苗代の準備をしようかという時期だった。
朝、彼が自分の田圃に行くと、田の中に奇妙な物を見つけたという。
足跡だった。
しかし、おかしなことに、その足跡は真っ直ぐ一列に連なっていたのだ。
まるで、一本足の何かが土の上を駆け抜けて行ったかのように。
奇妙な足跡は山の中から彼の田圃へ飛び入り、そのまま横切って、再び山の中へと消えて去っていた。
しげしげと足跡を眺めていると、近所の小父さんが通りがかった。
足跡に気がついて、彼の肩を叩く。
「神様が通った田は豊作になるというが、新参者の所を通るとはね。
お前さん方は気にかけて貰っているよ。良かったじゃないか」
どう反応していいか分からず、はぁそうなんですか、と彼は返した。
小父さんの予言通り、一年目にして彼の田圃は豊作であった。
「会社での人間関係が嫌になってここに来たんだけどね。
付かず離れず見守ってくれている存在がいるっていうのも、存外悪くない。
子供のアレルギーも治ったしね」
そう言う彼は、急速に村に馴染んでいる。
『森林公園に泊まった』
165 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/06/26 01:13 ID:hER8CLz1
後輩の話。
ツーリングで森林公園に泊まった時のこと。
街灯傍の芝生の上に一人用のテントを張ったのだそうだ。
いざ寝ようとして気がついた。
街灯に照らされて、テントの壁に影ができていた。
横向きで座っている女性の影だ。線が細く、髪が長い。
驚いて確認したが、テントの外には誰もいない。
中から見ると、相変わらず身動きしない人影が映っている。
おっかなびっくり話しかけてみたが、反応はなかった。
どうしようと悩んでいるうち、いつの間にか眠り込んでしまったらしい。
明け方近くに目を覚ますと、影は既に消えていた。
外には何の痕跡も残っていなかったという。
『うっかり者の猟犬』
167 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/06/26 01:16 ID:hER8CLz1
知り合いの話。
彼は猟を趣味にしており、血統の良い猟犬を飼っている。
ただ、この猟犬がかなりのうっかり者で困っているのだそうだ。
鴨撃ちをしようと、近場の山へ出かけた時のこと。
彼が見事に鴨を撃ち落とすと、間髪を入れず愛犬が獲物を拾いに走り出す。
しばらくして無事帰ってきた犬は、咥えた物を彼の前で落とした。
どこで何をどう間違えたのか、それは鴨ではなかった。
強いて言えば、子供の上腕部に似ていた。
緑色で、水掻きみたいな膜がついていたが。
何かで斬り落としたかのように、断面はきれいだった。
それを見た彼は、後も見ずに車まで走って逃げた。
犬が嬉しそうに尻尾を振りながら、彼の後をついてくる。
その得意げな顔を見て、思わず悪態をついた。
今怒っても、何で怒られているかわからないだろうなぁ。
聞くと、十回に一度は、獲物の代わりに変な物を拾ってくるらしい。
その拾い物のせいで、大変な目にあったこともあるという。
しかし、彼は愛想を尽かすこともなく、今もその犬を連れて猟に出かけている。
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