∧∧∧山にまつわる怖い話Part10∧∧∧
『山で休息』
75 :聞いた話 ◆UeDAeOEQ0o :04/06/22 19:34 ID:k8Zahsxw
旅先で聞いた話
冬の終わり、日当たりの良い山の斜面で、植え付けのための地拵えをしていた。
昼までに一仕事終え、休息をとる。火を熾し、腰を下ろして弁当を拡げた。
頭上には晴れ渡った空。南中の太陽から降り注ぐ日差しに目を細める…
パンッ
突然、目の前で柏手が一つ打たれた。
いわゆる猫だまし。驚くと同時に我に返った。
見上げると陽光が少し傾いている。まるで午睡から覚めたような気分。
掌を打つ乾いた音が、まだ耳朶に響いていた。
見ると、焚き火は土を被せて消されており、そこから細い煙が一筋立ち上っている。
地面には空になった弁当箱。その隣に水筒と並んで見慣れない湯飲みが置かれていた。
荒々しい造りのごつい湯飲み。持ってみると、ほんのり温かった。
仕事を再開したものの、無性に腹が減ってきたので早めに切り上げることにした。
例のごつい湯飲みは持って帰ることにした。弁当の駄賃という気持ちだった。
納屋にある作業棚の上に置き、ヤスリやワイヤーブラシなどを突っ込んでおいた。
かれこれ5年ほどになるが、今のところ何も異常は起きていない。
ただ、目の前で打ち鳴らされた両の手の映像は、今でも目裏に焼き付いている。
ごつい湯飲みには似合わない、真っ白い女のような手だったそうだ。
『下草刈り』
76 :聞いた話 ◆UeDAeOEQ0o :04/06/22 19:44 ID:k8Zahsxw
杣人に聞いた話
二人組で山へ入った時のこと。
お互いに離れた所で下草刈りをしていたのだが、
しばらくすると、不意に背後から拍手の音が聞こえた。
パンパンパンパンパンパンパンパン…
相方の仕業だと思い振り返ったが、どこにも人の姿はない。
不審に思いつつ作業を再開すると、また同じ音が聞こえてくる。
パンパンパンパンパンパンパンパン…
そんなことが数度繰り返されるとさすがに気味が悪くなり、作業を中断して相方を探すことにした。
だが、姿が見当たらない。大声で呼ばわったが返事もない。
周囲の山林を探したが、相方の姿はどこにもなかった。
(さては勝手に山を下りたのか?)
そう考えて相方の家へ向かった。
家に着くと、ちょっとした騒動になっていた。
話を聞くと、山中の工事現場で作業員が相方を見つけた、とのこと。
そのまま現場に向かった。
到着したのは、相方と山に入ってから2時間ほどが経過した頃だった。
着いてみると、そこはさっき草刈りをしていた山中から尾根を三つほど越えた谷底だった。
歩けば、ゆうに数時間は掛かる場所。
そんな所で、相方は自分の内股を草刈り用の鎌で切り裂いて失血死していた。
その谷はすっかり涸れ上がって一筋の水も流れていない。
にも関わらず、遺体の周囲には血液がほとんど残されていなかった。
『ワラビ採り』
78 :聞いた話 ◆UeDAeOEQ0o :04/06/22 19:54 ID:k8Zahsxw
村役場の職員に聞いた話
山菜を採りに山へ入った夫婦がいた。
山中を彷徨ううちに、大きな岩の近くにワラビが沢山生えている場所を見つけた。
喜んだ二人は、夢中になってワラビを採り続けた。
夫が何気なく顔を上げると、大岩の足元で妻がワラビを採っているのが見えた。
その方向に向かって、岩の陰から白い女のような手が二本すぅっと伸びている。
手はそのまま妻の髪を掴むと、声を上げる暇もなく岩陰に引っ張り込んだ。
驚いた夫が大岩の陰に回り込んだが、そこに人影はない。
慌てて周囲を探し回ったが、妻の姿はどこにも見当たらなかった。
後に消防団や警察によって捜索がなされたが、遂に彼女の消息は絶えたままだった。
捜索の際、夫は「あの大岩のところで妻を見失ったのだ」と地元の人々に説明したが、
「このあたりの山中にそんな大岩はない」ということだった。
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