∧∧∧山にまつわる怖い話Part9∧∧∧
『真っ暗なテント』
806 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/06/15 02:41 ID:fLXOcvE5
先輩の話。
ボーイスカウトで林間学校の引率をしていた時のこと。
夜も遅くなり、彼は各テントに消灯を命じて回っていた。
あるテントに向かった彼は、奇妙な感じを受けた。
他のテントは中で明かりが揺れているのに、そのテントだけは真っ暗なのだ。
意外に早く寝たんだな、と思い近寄って、目を疑う。
そのテントは真っ黒な布のような物に、隙間なく覆われていた。
何だこれは!思わず伸ばした手に、柔らかい和毛の感触がした。
次の瞬間、テントを覆っていた影は、ふわっと宙に舞い上がる。
目を丸くしている彼を残し、それは月夜を高く飛び去ったという。
「ごめんなさい、すぐに消灯します」テントから子供が顔を出し、慌てて言う。
どうやらその子たちは、あの影のことには気づいていないらしい。
彼は動揺を押し隠し、子供たちに「夜更かししちゃ駄目だぞ」と念を押した。
その林間学校が無事終わるまで、彼はそこはかとなく不安だったそうだ。
『マナスル』
807 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/06/15 02:42 ID:fLXOcvE5
先輩の話。
大学の部活で、山合宿をしていた時のこと。
朝起きてテントを出た先輩は、辺りを見回してギョッとした。
テントが張られた空き地の周囲に、猫がずらりと寝そべっていたのだ。
寝る前には、猫など一匹もいなかったのだという。
驚く先輩たちを尻目に、猫は思い思いの格好で寝そべっていた。
そのうち、テントの中で小さな騒ぎが起きた。
前の晩に燃料を満たしておいたマナスル(携帯用ストーブ)が、綺麗に空になっていたのだ。
思わず皆が猫を見たが、彼らは知らん顔で欠伸していたという。
化け猫は、菜種油は舐めても、灯油は舐めないよなぁ。
少なくない部員がそう考えたのではないか、そう先輩は言う。
後で地の人に聞いたところによると、その山は猫に縁が深いらしい。
その辺りの年老いた猫は、死期が来るとその山の奥に姿を消すのだと。
地元では、猫山と呼ばれていたそうだ。
『転落注意!』
808 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/06/15 02:44 ID:fLXOcvE5
知り合いの話。
彼は大きな街で、出版関係の仕事をしている。
ある日、印刷所に行こうとすると、会社ビルのエレベーターが不調だったという。
時間がなかったため、非常階段で下まで降りることにした。
非常階段のドアを開ける寸前、横手の壁に落書きがあることに気がついた。
“転落注意!”と、ただそれだけ太マジックで書かれていた。
気にせずドアを引き空けた彼は、思わず足がすくんでしまう。
ドアの向こうには、果てが見えないほど大きな峡谷が広がっていた。
断崖絶壁だ。
慌ててドアを閉める。
もう一度、ゆっくり開けると、いつも通りの非常階段が見えた。
階段を下りながら、ふと思ったのだそうだ。
あの落書きの作者は、自分と同じ光景を見たのかな。
現在、誰が書いたのか“滑落注意!”という落書きが、新たに加わっているという。
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