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怖い話&不思議な話の投稿掲示板 過去ログその9

「過去ログその8」の続き
[ 49542 ] NO TITLE
初投稿です。
今までで2回あった霊体験っぽい話と、姉の友達が僕の家で体験した話の計3つ。


一つ目。僕が子供の頃から18歳まで続いた話。
僕は生まれてから二十歳くらいまで名古屋の東別院のすぐそばに家族五人
(両親と姉、自分、弟)で暮していました。
そこの家では一人でいるときに、誰もいないはずなのに他の部屋から物音が聞こえるときがありました。
姉がピアノを習っていたのですが、そのピアノが突然鳴る(軽く鍵盤をたたく感じ)か、
自分の部屋に置いてあるタンスを開け閉めする音かの2パターンでした。

音に気づいて、「ワッ!!」とか「誰かいるの?」と声をかけると鳴り止んだし、特に害もないので
これについては特に気にしていませんでした。
ちなみにこれに気づいていたのは僕と母だけでした。


二つ目。姉の友達が家に泊まりにきたときの話。
その友達が姉の部屋で寝ていて深夜目が覚めると、扉が少し開いていてその隙間から歌舞伎役者みたいな人が
怒った顔でその友達を睨んでいたそうです。

怖くなって布団にもぐりこみ、しばらくしてもう一度見てみると消えていた・・・ということはなく
微動だにせずにまだこっちを見ていたそうです。
その後気付いたらいなくなっていたそうですが。

その件があってからその友達は家に来なくなりました。
話を聞いて少しビビリましたけど、特に変わったことはありませんでした。



三つ目。これにはかなり恐怖を覚えました。3年前ぐらいの話です。
そのときには前述した家から引っ越しており、僕は両親と共に実家暮らし、
弟と姉はそれぞれ一人暮らしをしていました。

ある日仕事が終わり実家に帰ると姉がおり、いきなり「やべぇよ!」と言ってきました。何かと思い話を聞くと
姉のマンションに幽霊が出たとのこと。

姉が暮している部屋の前の廊下で夜になると女性の泣声が聞こえるらしく、しかも声量が半端じゃないらしい。
「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」みたいな叫びっぽい感じ。
最初は5分くらいで声が聞こえなくなり、「隣人か誰かがケンカでもしているのかな」ぐらいにしか思わなかったそうなのですが、その後も夜になるたびに泣声が聞こえたらしい。

不思議に思い廊下を確認しても誰もいないし、隣人に泣き声のことを聞いても誰もそんな声を聞いた覚えはない
らしく、怖くなった姉は友達に家に泊まりにきてもらったそうです。
で、夜になると当然のように泣声がするのだが、なんと友達は何も聞こえないらしい。

そんなことがあり「これはマンションはやばい」と思った姉は、実家に避難しに来たという顛末でした。
僕は「それヤベェじゃん。うちに連れてこないでくれよ。」などと言いつつ話半分に聞いていました。
姉はその後一週間ほど実家にいましたが、特に何もなかったためマンションに帰りました。
マンションに戻ったあとも何もなかったようです。

姉がマンションに戻ってから一週間ほど経ったのち、それは起こりまた。

当時僕は半身浴にハマっていて、その日も半身浴をすることにしました。
浴槽から立ち上がったときに肩の高さぐらいに窓があり、半身浴をするときは結露を抑えるため
その窓を開けていました。

30~40分ぐらい浸かり、時間も深夜1時をまわった頃だったのでそろそろ出ようと思ったとき、
窓の外からいきなり「ううぅぅ、うううぅ、うううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・」と泣き声が聞こえてきました。
しかも感覚的には窓のそば。1mも離れていないという感じ。(ちなみに姉に聞いたような叫んでいるような
感じではなく、嗚咽が漏れるような感じでした。)

一気に体がこわばって、「やべぇぇぇ!!こえぇぇぇ!!」しか考えれなくなりました。
窓を閉めたいけど、閉めようとしたときに「目が合ったり、手をつかまれたら・・・」と思うと何も出来ませんでした。

しばらくすると声も聞こえなくなったので、速攻風呂から退避しました。
その後は僕も姉も特に霊的現象や不幸な出来事などもなく普通に生活しています。

あれは何だったんだろうなぁ。
[ 2014/04/25 ] ひで ◆-


[ 49614 ] ご利益?
当方関東在住。母は九州出身。
祖母危篤の報に、急遽休みを取り、母を連れて九州へ行った。
私が行くのは25年ぶりで、親戚方にご挨拶しておこうという気持ちだった。

祖母はすでに95。病院で寝たきり。
食欲もなく、耳もほとんど聞こえず、記憶もまだら。
それでも、母が来たのがよほど嬉しかったのか、
到着した我々を見つめ手を握り、とても嬉しそうだった。

ところで、私は神社好きで休みの日には参拝している。
せっかく九州まで来たのだからと、ぐぐるまっぷでチェック。
二日目午前は、歩ける範囲の17社を周った。
見て回るのが好きなだけで、特に祈願はしていない。

そして午後、二度目のお見舞いへ。
行って驚いた。
祖母が目を開け、とつとつながらしっかり話している。
私のことも分かっていて「早くいい婿さん見つけにゃ」だと。
余計なお世話じゃ。

危篤ってどうなった。
気力ってスゴイ!
人間てホントに何が起こるか分からない。
「神社巡りのご利益スゴイ」などと、
半ば苦笑しながら、私と母は関東へ戻った。

そして二日後。
九州の親戚から連絡があった。
なんと祖母が回復し過ぎて退院決定とのこと。

神様ありがとう。
でも、ようやく介護から開放されると思っていた親戚ご夫婦が、
ほんのり怖かったという話。
[ 2014/04/26 ] 神社好き ◆cL1h0JTY


[ 49900 ] 見知らぬ道
私の実家は、昔来た霊媒師の先生が多すぎて無理と言って飛行機から降りずに帰ったと言われる噂があるとある離島です。
住んでいると多い多くないはよく分かりませんが、やはり不思議な体験は少なからず体験しておりました。
そんな体験の中で少しヒヤリとした私の話です。

高校時代の夏も始まりかけたある土曜日。
午前中に部活が終わり学校を後にしました。田舎で交通機関もほとんどなく、原付で通学していた私は当時色々な道の探索が趣味で、その日も近道を見つけるために正規ルートではなく裏の農道を辿って帰宅していました。
舗装はされているものの山奥のため交通量の少ない農道を良い天気の中走るのは大変気持ちのいいもので、うっかりいつも曲がる道を超してしましました。まあ今日は家の裏に続いてる道を農道の方から降りてみようと思い、大体この辺りだろうと思った道を農道から外れ下って行きました。
どんどん下って行くと道はアスファルトからコンクリートへ、さらにはタイヤの位置にしか土が見えない荒れた道へと変わってきました。これは人の家か畑に続くハズレ道だったなと思い引き返そうとした時、ふと周囲の違和感に気づきました。
昼下がりにしては異様に暗く、その所為か肌寒い。原付に乗ると冷えるのでジャンバーとネックウォーマーを装備していましたが、妙に冷えるのです。そして道を挟む周りの森から生き物の気配が一切く鳥の声さえしません。
これはまずい。直感的に思いUターンしようとした瞬間、もの凄い獣臭が鼻につきました。
年中鼻炎で鼻の悪い私ですが、何週間も洗っていない犬に思いっきり鼻を突けて深呼吸すると臭いそうな濃い獣臭は、はっきりと臭いました。
後ろで何かの気配がしましたがミラーを見ても何も居ません。Uターンしようにも車一台分の細い道でスピードを緩めずにターン出来る程のテクニックも持ち合わせていなかった私は、とにかく走っているこの道が行き止まりでないことを祈りつつ法的速度より若干早く走ることしかできませんでした。
道はどんどん悪路になり土だった場所は石になり、後輪が滑りそうになりながらもついてくる獣臭と何かの気配から必死に逃れようとしていました。
何時間もたったかのように思えた頃にようやく民家が見え、森を抜けた瞬間むせ返っていた獣臭は消え、気配も無くなっって居ました。
私が睨んだ通り、確かに道は家の裏へと繋がっていましたが、通学路として使う気にはなれませんでした。
後日父にそれとなく道のことを訪ねると、農道には繋がっていないことが判明し、もう一度農道を通ると道があった場所には畑と森が広がるばかりでした。

何に出会ってしまったのかは分かりませんが、あの時の見えない恐怖は出来ればもう出会いたくはないです。
ありきたりなオチになってしまいましたが、皆さんも見知らぬ道にはお気をつけください。
[ 2014/04/29 ] 砂糖 白 ◆-


[ 50454 ] 赤い鬼
俺には4つ年上の姉がいる。
よく不思議な体験をするが(普通の友達に言わせるとかなり怖い体験だそうだ)、わりとあっけらかんとその現象を乗り越えて生きている姉だ。
その姉が、初めて『恐怖』というものを覚えた日の話をしようと思う。


姉が小学校1年の一学期、俺がまだ保育園児で記憶もあまり定かで無い頃、俺達一家は父方の本家があるS市から、母方の実家へと引っ越した。
俺は物心つくかつかないかの頃だったし、どうして引っ越したのか理由も長年とくに考えたことは無かった。


俺達の父はその頃家で自営業をしていた。だから幼い俺と姉、父は時間を長く共にすることは普通だったそうだ。
逆に母はパートで働きづめ、なかなか家にいることが難しかったらしい。
俺はその頃の事をほとんど覚えていない。いや、正確にはその頃だけじゃなく、不思議というより不自然なほどに、俺達一家を取り巻いていたらしい様々な『悪いもの』の記憶がほとんど抜け落ちてるのだ。


それは姉が『秘密の友達』から「赤い鬼に気をつけて」と奇妙な忠告を受けてから、一年も経とうかという、冬の日の事だった。


S市は雪の多い都市だ。真冬ともなると、地吹雪が起きて一台前の車も見えなくなるようなことがある。
俺も免許をとってから友達のところへ遊びに行く時、一度その豪雪の中を運転したことがあるが、比喩でなく目の前が雪と風に覆われて見ることが困難で、冬の時期の運転は二度とごめんだと痛感したほどだ。

当然、積雪もかなりすごい。高い雪の壁も珍しく無いし、雪祭りが行われる程度には雪の量が多い。
冬場の遊びと言えば、定番が自分の家の敷地内に手製の雪滑り台を作って、そりで何度も滑り落ちて楽しむことだ。
大概の子供は時間を忘れて遊ぶ。あとはかまくらを作ったり、雪が降れば雪合戦も毎日のように行われた。
俺にとってはぼんやりとだが、楽しい記憶ばかりだ。
姉にとっても、その日まではなんら変わらない冬だったはずだ。


余談になるかもしれないが、父はあまり子供を好く人では無かった。
俺達をというより、『子供』という生き物自体をうるさくて面倒なものだと思っていた感がある。
それでも我が子であれば、時間があればそれなりに遊んでくれてはいた。


俺は姉が『恐怖』を覚えたその日の出来事を覚えていない。
部屋の中で様子を見ていたと姉には教えられたが、一切覚えていない。


その日父は仕事が暇で、雪が降る中「遊んでやる」と、姉を外に連れ出したそうだ。
初めは普通にそり滑り、大きな雪だるまを作って、玄関のわきに飾った。
父が長時間まっとうに遊んでくれることが珍しかったせいで、姉は嬉しくなり、

「お母さんが帰ってきたら、このおっきい雪だるま一緒に作ったんだよって教えるんだ。お母さん、きっとびっくりするよね」

と、父を見上げて笑った。
それを聞いた父は急に機嫌を悪くしたようで、「そうだな。寒いから、もう家の中に入るぞ」と唐突に遊びを止めて家の中に入ってしまったそうだ。

姉は不思議に思いながらも、一人で外遊びを続けた。
家族分の雪ウサギを作ろうとしていたのだ。
一番大きいのがお父さん、次がお母さん、自分たちは子供だから小さいの、と。

四体の雪うさぎが完成した頃、雪は本降りになり、辺りも夕暮れで薄暗くなって一段と冷え込んで、さすがに姉も遊びは止めにしてこたつに入ろうと、自分についた雪をはらって玄関に入った。
雪で濡れた手袋を外し、外着も脱ごうとしたところで、姉は初めて、待ち構えたよう立つ父に気がついたそうだ。


父は先ほどと違い、たいそう機嫌が良かった。にこにことした笑顔を姉に向け、「すごく面白い遊びをしてやるぞ、こい」と、姉の手を引いて2階へと上がって行った。


手を引かれるまま姉は2階の部屋へと入り、そこでまだ幼い俺が積み木遊びをしているのを横目に、父へ、
「何して遊ぶの?」
と聞いたそうだ。

父は窓を開けると、
「いっぱい降ってるなあ」
と何やら感慨深げに空から降る雪を眺め、姉を招いたそうだ。


「お父さ・・・・・・っ」


話しかけようとして、次に見えたのは重い灰色の雪空。
何が起きたのかもわからず、軽い浮遊感を覚え、次の瞬間には高く積もった一階ベランダ外の雪壁に叩きつけられる衝撃。
雪は固まると痛いのだ。雪玉が当たると痛いように、降り積もって圧縮された雪壁は雪というよりはもはや氷の堅さに近い。
背中を強かに打ち付けて、2階から見下ろす父を見て、ようやく自分が2階から投げ落とされた事に姉は気づいたそうだ。

父の姿が窓から消える。
背中が痛い、手袋をとって直に触る雪が刺さるように痛い。
必死の思いでずるずると雪壁から這い降りて、家に戻ろうとするとそこにはやはり父がいた。

いや、『居た』のは父だけではなかった。
父の陰、両足の後ろからチラチラとこちらを伺い嗤う、40cmほどの『赤い鬼』が2匹。
「楽しいなあ?楽しいな?ほら、もう一回行くぞ」


抵抗しても大人の男の力にかなうはずも無い。
ずるずると2階へ引きずりあげられ、その間周りで赤い鬼が姉の顔を覗き込んでは嗤う。


一面に開いた窓から投げ出され、階下の雪壁へ叩きつけられる。
冷たい。痛い。降りる。引きずられる。投げ出される。
何度続いたかわからない。
いつしか父は鼻歌を歌っていた。
口を大きくつり上げたその顔は、顔を覗き込む赤鬼共とよく似ていた。


だんだん2匹の鬼は父の中に溶け合うようにして混ざり、父の顔色は赤黒く変化し、しかし陽気で、気味の悪い鬼そのものに見えたそうだ。
鬼に影は無かった。そもそもいつからいたのか。
もしかしたら最初から居たのか。


あぁ、『秘密の友達』だったお姉さんはこのことを言っていたのか。
気をつけろと言われたのに。
約束を守れなかった。
お姉さん、ごめんなさい。気絶しかかった頭で、そんなことを考えたそうだ。


いつの間にか、その『遊び』は終わっていた。
いつ解放されたのかも覚えていない。でも、痛いけど死んでない。
子供の頭で考えるには妙に冷静な思考で、それでも姉はふらふらとした足取りで家の中に戻ったそうだ。


父は普通に戻っていた。
いつもの、無愛想で、寡黙な父に。
ただ一つ、その背中の向こうから、赤い鬼達がニヤニヤと嗤っていた。


終わってないんだ。
子供心に、そう理解したそうだ。


雪壁の上の方がまだかろうじて柔らかい部分を残していたから、死なずに済んだのだろうと姉は今でも言う。

結局姉が一番恐怖したのは何だったのか。
それは、後に母の前でその出来事を訴えた時に、父がまったくの正気顔で
「1階の窓から少し雪の上に投げてやっただけだろう。そんなに怖かったのか?あの日は雪も柔らかくて気持ちよかっただろうに」
と、むしろ不思議そうに口にしたことだそうだ。
悪意などひとかけらも無いように。


訴えは結局思いの他怖がった姉の勘違い、という事にされてしまった。

「『赤い鬼』が関わるとな、あの人はおかしくなる。行動も、性格も、記憶もだ。いいように改竄されて、あの人の中の本当がまるで変わってしまうんだ」


どうして、父が言うように自分の勘違いだと思わないのか、俺は姉に聞いてみた。

「自分の勘違いだと思いたかったさ。そうならそれでまるく収まる。子供が少し怖がりすぎて、記憶違いをしたんだってな。その方がずっと良かった」

少し遠くを見るようにして、その後姉は語った。

「翌日の朝は良く晴れていた。その明るい中、めった打ちしたみたいに壊された雪だるまと、子供の分だけがぐしゃぐしゃに踏みつぶされた雪うさぎを見なければ、父親にまとわりつく『赤い鬼』を自分の幻覚で片付けることもできたのかもしれないのにな」


姉が長く付き合う事になる、『赤い鬼』の世界。
因縁は、まだまだ続く。
[ 2014/05/06 ] とうま ◆xnLOzMnQ


[ 50455 ] 引っ越しが完了しました、とうまです
4つ年上の姉の話を書かせていただいてます、とうまです。前回からずいぶん間が空いてしまいました。
引っ越しが終わり、投稿させていただいたところIDは『秘密の友達が教えてくれたこと』の際の「xnLOzMnQ」のままとなりました。
たまに別な場所から投稿すると、以前のIDになることもあるかと思いますが、管理人様何卒宜しくお願い致します。
[ 2014/05/06 ] とうま ◆xnLOzMnQ


[ 50471 ] NO TITLE
>>50454
怖い話まとめブログまとめに掲載しました。
[ 2014/05/07 ] 怖い話まとめブログ管理人 ◆Ahsw8Nok


[ 51669 ] トトロ
幼稚園へ通っていた頃、兄と私が体験した話。

当時、N県I市という田舎の、とある社宅の3階に住んでいました。
その正面、道路を挟んだところに幼稚園があり、
2階と3階の間の、外に面している階段の踊り場からは、幼稚園の正門が丸見えです。
(その社宅にはエレベーターはついていませんでした。)

あの日は多分、家族4人で外食をしたんだと思います。夜暗くなってから家族で帰宅した時のことです。
踊り場を通るときに、兄が幼稚園の方を指差して叫びました。
「トトロだ!」

指差す方を見ると、幼稚園の入り口の緩い坂道を
とてててて〜と駆け上る灰色と、白と、黒い「なにか」がいました。
小トトロ、中トトロっていましたよね?あんな感じです。
灰色のが一番大きくて、次に白は両手に乗るくらい、黒は片手に載るくらいの大きさだったと思います。
それらは正門の坂の頂上に到達すると、パッと、一瞬で消えていなくなりました。

「見えた?」「うん、見えた!トトロ!」興奮する兄と私でしたが、
その場にいて、一緒に正門を見ていた母と父には何も見えていませんでした。

最近兄に当時の話をしたら、やはり兄も覚えていたので夢などではないと思います。
「耳と手足がついててさ、突然消えたんだ。あれは絶対、トトロだったよな」

ただ、兄には言っていませんが
本当は私には、輪郭のぼやけた丸い、大きさの違う毛玉のように見えていました。
耳と手足などついていませんでした。
ただ、その色と大きさ、上下に揺れながら、まるで足があるかのように坂を駆け上る様子が
映画に出てくる中トトロ、小トトロにそっくりで。
それに、トトロだと思ってないと、じゃあアレは何だったんだってなるので。
特にそのあと何が会った訳でもないし、兄には内緒にしておきます。

追記:今調べたんですが、黒いトトロなんていないんですね。
じゃあ、最後尾を走っていたのはマックロクロスケだった・・・ということにしておきます。
[ 2014/05/20 ] はなこ ◆5zY9PoLE


[ 52204 ] ヲタ君の家庭教師・襖
 これは、僕の知り合い通称ヲタ君が、学生時代に体験した話を一部私の脚色を用いて書いたお話です。 長文で申し訳ありませんが、良ければお付き合いください。

ちなみにヲタ君というのは、高校一年生自称エロゲ大好きで、学校の女子からキモヲタ呼ばわりされていた頃のあだ名らしいです。

以後、ヲタ君の語り。


ある日、俺の家に家庭教師が来る事になった。
母子家庭で、しかも息子を一人置いて遠方に単身赴任中、ろくに俺の面倒が見れていない事を危惧しての母親の行動らしい。

母方の亡き祖父が、父親に捨てられた俺と母の為に残してくれた古い日本家屋。
この大きな屋敷に一人で住むのは余りにも不便だが、悠々自適な一人暮らしをおくれる事に関しては大満足だった。 が、そう思った矢先がこれだ。

せっかく夏休みの間はエロゲ三昧という至福の時を送る予定だったのに、と悔しさを滲ませる一方、母親から仕入れた情報に気になる点が一つあった。

家庭教師は知人に紹介してもらったらしく、かなり美人の女子大生との事。

これが悪質な釣りだとしても確認だけはしておきたいのが男というものだ。
そう思い、もとい開き直った俺は、朝から夕方までエロゲーをやりながら、二階にある部屋で一人やがて来るであろう家庭教師を待っていた


──ピンポーン、と、突如玄関の呼び鈴が鳴った。

誰だ? と思ったと同時に、母親との会話が脳裏に蘇る。

『女子大生……凄く美人らしいわよ』

記憶から都合の良い部分だけが抜粋され繰り返しリピートされた。  焦りのせいか鼓動が早まっていく。 俺はPCの電源を落としたのち、全てのエロゲーを机の下に隠す。
部屋を出ようと襖に手を掛け、立て付けの悪さに苦戦しながら戸口を引いたその時、

フッと、何かが俺の眼前を横切った。 横切った先を瞬時に目で追う。

「えっ……?」

それは、余りにも突然の事だった。
部屋の入り口、何もない空間からスーッと透き通るような白い足が、僅かに宙に浮いた格好で、くねくねと姿を現したのだ。

呆ける俺、だがすぐに我に返り

「うわっ!」

と、短く驚きの声を上げた。
足はのた打ちながらその場で身動きすると、スーッと消えてしまった。

俺は息が詰まりそうになり、飲み込んだ息を吐きだすようにしながら 、

「ふっ、ふうっ……」

と小さく声を漏らした、だがすぐに苦笑いを浮かべ、

「またか……」

と力無く呟く。

そう、またなのだ。
実はこういった事が俺には昔から多々あった。
ふと振り向いた先に、一瞬だけ人の顔が見えた。 何となく見ていた風呂場の壁に、泣き叫ぶような人の顔が一瞬映った、などなど。

まあ簡単に言えば俺の思い込み、妄想の類い、もっと平たく言えば壮大な勘違い、果ては幻覚というやつだ。

小学生の頃、俺は得意満々で同級生に

『俺、幽霊みたぜ』

何て言ったりしていた。
子供特有の目立ちたい、驚かせたい、などという、そういったありがちな思いだったんだろけど、我ながら痛い子だったんだなあと、今更ながらにしみじみに思う。

見える、言わばこれは自分を特別に見せたいがための偽装に過ぎない、 と俺は思っている。

自分は特別なんだと、周りとは違うんだと言い聞かせ、周囲から切り離された自分を正当化する手段。

そう、高校に入って周りの同級生をみる度に、今までの自分が間違っていたんだと痛いほど思い知った。
だいたい、オタクで根暗なうえに電波とか、これ以上救いようがないじゃないか。
それならまだオタクで根暗の方がまだましだ。

俺は人生の最低ラインを保ちつつ、趣味を楽しみながら引きこもる事を選んだ人間だ。
幽霊だのなんだのとそんな非現実的な事に、一々囚われて生きていくなんてたまったもんじゃない。

そんな事を頭の中で悶々と考えていると、

──ピンポーン、と再び呼び鈴が鳴った。

俺は振り払うように頭を二三度振り、階段を足早に掛け降りた。

忍び足で玄関の扉に近づくと 、そっとのぞき穴から外の様子を伺う。

玄関の扉の前で、呼び鈴に指を掛けたまま立ち尽くす女性の姿が見て取れる。
腰まであるきめ細やかな長い黒髪に、切れ長で物憂げな大きな瞳、真っ白な雪のような肌……と、キモさ全開な俺だが、とにかく今、家の玄関の前にスッゴい美人が呼び鈴を鳴らしているって事を伝えたい 。

俺はどぎまぎしながらも、扉の前で手もみしつつ、

「落ち着け、落ち着け……」

と、念じるように呟いた。
何せクラスの女子とさえまともに会話した事がない俺が、名実ともに美人の女子大生と話をするなんて事は、天地がひっくり返っても有り得ない事だったからだ。

すると突然、ガチャリ、と金属がゆっくりと噛み合うような音が鳴り、同時に目の前の扉が開かれた。

思わずドアが鼻っ柱に当たりそうになり後ずさる。

するとドアの合間から、

「あ? 開いてる」

と、女性が顔を覗かせ一言呟いた。
俺は余りの突然の事に頭の中が真っ白になって、目の前の女性をガン見したまま唖然。

そんな俺を余所に女性は、

「あ、すみません勝手にドア開けちゃって、失礼しました。 私、政子おば様の紹介で来ました、○○千都(ちづる)と言います」

と、丁寧な挨拶。
女性、以後先生は自己紹介を終えると、丁寧にこちらに向かって頭を下げてきた。

先生の長い黒髪が波打つようにサラサラと揺れる。

対する俺は口をポカンと開けてマヌケな顔のまま。

「あの、……どうかされましたか?」

と、先生。

俺は何とか自分を落ち着かせ、取りあえず先生に家に上がってもらうと、ろれつの上手く回らない口調でなんとか自分の部屋へと案内した 。
[ 2014/05/25 ] 蘭学事始 ◆FAJ7z1Fo


[ 52205 ] ヲタ君の家庭教師・襖2
「凄い……家ですね……」

階段を登る途中、不意に後ろから声を掛けられた。

「じ、じいちゃんの弟さんが昔住んでたそうです。 そ、その弟さんが亡くなって僕達がここに引っ越してきたんですけど、まさかこんなに広い日本家屋に住む事になるなんて、僕自身思ってもいませんでした」

俺が何とかそう答えると、

「あ、そうではなくて……いえ、何でもありません」

と、先生は何か言うのを躊躇うような素振りを見せ、結局口を閉じ押し黙ると、それ以上は何も聞いてこなかった。

俺は先生のその反応が気になったが、次は何を話せばいい? どんな話題を振ればいい?
などというくだらない思考で頭の中がいっぱいだった為、それ以上はなにも聞き返さなかった。

やがて階段を登りきり自分の部屋の前までやってきた。

先生は階段を登りきった所でしきりにキョロキョロと辺りを見渡している。
そんなにこの家が珍しいのだろうか ?

まあちょっとだけ聞いた話では、明治の頃に建てられた歴史ある家らしいのだが、俺からしてみればただ古い家だ。
だだっ広く埃まみれの古屋敷。

胸のうちで悪態をつきつつ、部屋の入り口である襖に手を掛ける 。

この襖がなかなか融通のきかないやつで、普通に引いても開かないという曲者。
おそらくこの屋敷で、ダントツの立て付けの悪さ。

「こ、この襖立て付け悪くって、」

俺はヘラヘラと苦笑いを浮かべながら、軋む襖を開けた。

ガタガタと耳障りな音が鳴る。

先生は、

「そうなんですか」

と、こちらを向いて軽く笑みを浮かべポツリと返す。

俺はそんな笑顔を向ける先生に、僅かな興味を抱き始めていた。
美人だからという単純な気持ちもあるが、それだけじゃない。

どこか不思議な印象。 合ったばかりの人だというのに、訳の分からない親しみを感じてしまう。
共通点も何もないのに、一体この気持ちはどこから来るのだろう、

「あの、実はお話がありまして……」

俺が考え込んでいると 、不意に後ろから先生が声を掛けてきた。

俺はハッとしながらも急いで部屋に入ると、近くにあったしわくちゃの座布団を先生の前に差し出し、正対するようにして自分も座った。

「あ、はい、何でしょうか?」

今後の説明か何かかなと思い、目の前の先生に聞き返す。

すると先生が腰を下ろしながら徐に口を開いた。

「実は……大変申し訳ないのですが、 今回のお話なかった事にして頂きたいんです」

一瞬、えっ何で? と言いかけたが 、俺はすぐにその意味を理解し、思わず喉元まで出掛かっていた言葉を呑み込んだ。

つまり先生は今日、俺の家庭教師として来たのではなく、家庭教師を断りに来たというわけなのだ。

俺は自分でもよく分からない、消失感にも似た感情にかられた。
まあありきたりに言えば、ただ哀しかったのかもしれない。

こんな美人と二度と会えなくなるっていうのは勿論だけど、俺の人生からしてみれば、父親に見放され、クラスメートからも見放され、人に嫌われてばかりの人生だ。

今回だって、俺を見て引き受けたくないと思ったのかもしれない。

悔しさよりも、とめどなく惨めな思いが胃の辺りをギュッと締め付けてきた。
腹の内からこみ上げてくる何かが、口の中で苦々しい味へと変わっていく。

俺はうなだれるように俯き、今の心境を悟られまいと、なんとか必死に笑顔を作り再び顔を上げた。 だが、その時だった。  俺の視界に、映りこんではいけないもの、いや、正確には映ってはいけない異質なものが飛び込んできたのだ。

足先から手先までが一気に氷付き、胸を突き破りそうなほど心臓が、ドクンドクンと暴れだす。

焦点が合わない、いや、合わせたくない。 だが、意に反するように、俺の両目はその異質な物体に吸い寄せられていく。 そしてそれが何なのか、脳が理解するのに、そう時間はかからなかった。

先生の肩越し、正確に言うと部屋の入り口、中途半端に開いた襖と柱の間、

暗闇の中、襖の隙間からこちらを覗く、能面のような、女の生首……。

氷塊を首筋に押し付けられたかの様に、俺はその場で身体を仰け反らせ、

「うわっ!?」

と、短い悲鳴を上げてしまった。

すると先生は

「えっ?」

と言って小首を傾げながら俺に不振そうな視線を送ってきた。

やばい、と思いとっさに、

「あ……いや、さ、寒くないですか? ふ、襖閉め忘れてたから風が入ってきてるのかな……」

などと誤魔化し、俺はその場から立ち上がって部屋の入り口へと向かった。

俺は喉をゴクリと鳴らしながら、目の前のわずかに開いた襖に視線を向けた。

今まで見てきたこの類のやつは、全て気のせいだと思ってきた。
さっきだって、先生が来る前に部屋の前で見たやつは、一瞬で視界から掻き消えた。

ずっとそうだったはずだ。
得体のしれない火の玉、水面に写る、不気味な笑みを浮かべる老婆のような顔、それらは忽然と姿を消し、俺を嘲笑ってきた。
見間違え、勘違い、自分には霊感がある、などといった電波な考え、そんな風に見えたらと思う、俺の妄想癖の名残のはず……だった。

だが、今目の前にある女の顔、生首は……消えない。 女の顔はその表情を一片たりとも崩す事なく宙に浮いていた。
まるでそこにいるのが、さも当たり前のように。

年は二十歳ぐらいといったところだろうか……どこか幼さの残る女の顔にそっと近づき 、目を背ける準備をしながら、見上げるようにしてそっと覗き込む。 首の断面がえる。
グロテスクな血肉の塊かと思いきや 、黒い……どこまでも黒い。 首の断面には真っ黒な闇が広がっていた。 

心臓はバクバクと激しい音を刻んでいた。
余りの鼓動の激しさに呼吸が乱れ、ひゅうひゅう、と、口から息が漏れた。

俺は頭がおかしくなったのか……?

微かに震える手で襖の取っ手を掴む 。
そのせいでカタカタと襖が小さく鳴った。

俺は激しく鳴り続ける心臓を左手で無理やり押さえつけながら俯く。

落ち着け、いつものあれだ、悪い病気だ、

自分の今の状況に当てはまりそうな事を何でもいいから心の内で呟く。

幻だ……きっとそうだ、強く、もっと強く念じろ。

そうやって自分に言い聞かせ無理やり現実へと引き戻すと、俺は頭上を見ないようにして襖を閉めようとした。

待て……

俺はふと襖の建て付けの悪さを思いだした。

もしかして……。

今までの建て付けの悪さはこれのせいか!?

頭の中で嫌な映像が浮かぶ。

襖を閉めようとする俺、女の生首に襖が引っ掛かり閉まらない。

シュールにも見えるが、今の現状を考えると洒落にならない。

俺はさっと反射的に身を引くと、襖から手を離し、その場で踵を返して元の場所へと戻った。

そして自分に言い聞かせる。

見るな、見なければ消える。
家庭教師なんていう妙なシチュエー ションのせいで頭がテンパってるだけだ。

俺が必死に頭の中で何かしら言い訳を考えていると、それまで黙ったままこちらを注視していた先生が、重苦しい空気を振り払うように、突然口を開いた。

「なぜ……なぜ襖を閉めないんだ?」

瞬間、俺は両肩をビクりと震わせ先生の顔を見た。

その声は、とても先程までの物静かで丁寧な口調とは違い、威圧感漂う物言いだった。

目つきも精鋭さがまし、見つめ返すと射竦(いすく)められてしまいそうだ。

というか……先生は今、俺に何て言った……?
襖をなぜ閉めない?

なぜそんな事を聴くんだ? いや、襖を閉めに行ったのに閉めなければ確かにおかしい、

そう思いながら恐る恐る襖をチラリ と見やる。

女の顔はもうそこにはなかった。

俺はホッと胸をなで下ろす。
良かった、やっぱり気のせいだったんだ。

肩の力が抜け全身の硬直が弱まっていくのを感じる。
俺は軽く息を整えると、先生に向き直って、

「あ、いえ、建て付け悪いってさっ き言いましたよね? 閉めるのけっ こう面倒だし後でいいかなって、」

と、俺がそこまで言いかけた時だ、 先生は俺の話を遮るように切り出してきた。

「女がそこにぶら下がっていたから 閉まらない、の間違いじゃないのか ?」

射すような視線、吸い込まれそうな程の先生の黒い瞳が、俺を捉えて離さない。
妖艶で綺麗なその瞳に見つめられ、 全身の毛が逆立つような感覚に襲われる。

「それ借りるぞ」

先生はそう言うと急に立ち上がり、 窓辺の机にある椅子に手を掛け 、襖の方へと持っていった。

そこで俺はある妙な変化に気が付いた。 先生の雰囲気が、さっ きとはまるで別人のようだ。

おしとやかな、何て言うイメージは既に俺の頭からは掻き消えていて、 変わりに、どこか粗暴で強気な人という印象へと塗り替えられていた。
[ 2014/05/25 ] 蘭学事始 ◆FAJ7z1Fo


[ 52206 ] ヲタ君の家庭教師・襖3 完
「あの、ど、どうしたんですか急に ?」

椅子を襖に寄せ、先生は俺の問いには答えず、椅子の上に登り立ち上がろう としてこちらを向き口を開いた。

「覗くなよ? 今日穿いてないんだ 」

一瞬、俺の頭は真っ白になりかけた 。
そして瞬時に顔面を茹で蛸のように真っ赤に染め上げ、

「えっ……ええっ!?」

と一人喚き立てた。

何を言ってるんだこの人は!?

「嘘だよ、興奮するな変態」

先生は蔑むような冷たい眼差しで俺に言うと、再び襖の方に向き直り、天井の梁(はり)の部分に手を伸ばした。
先生が手を伸ばした梁の部分に俺も目をやる。

「あった……」

先生は梁の部分を弄(まさぐ)る手をピタリと止めてそう呟いた。
そして親指と人差し指で何かを摘み ながら、椅子からゆっくりと降りだす 。

「こいつが何か分かるか?」

先生はそう言うと、指で摘んでいたものを俺の前に差し出してきた。

俺は顔を近づけてそれを注視する。

それは、薄汚れ埃が混じった、何か細い小さな繊維のようなものだった。

細かく刻まれた小さな糸の束にも見 えるが、それよりも更に細い。

「何かの……繊維、ですか?」

俺が自信なさげにそう答えると、先生は俺に、

「そう、まあ縄だな、けっこう古い 」

と言ってから、指先で摘んだまま、 その繊維の塊をこすった。
すると繊維の塊はまるで砂のようにパラパラと分解され、先生の手の平へとこぼれ落ちていく。

確かに、かなり古いものだったらしい。

先生は黙ったままそれを部屋の隅においてあるゴミ箱に捨てた。
そして襖を見ながらこう言った。

「この縄で吊ったのか……」

吊った?

梁の柱の一部に目をやる。 繊維の塊があった部分が、何かの圧力がが掛かったかのように一部凹んでいる。

「他に何か見たりしたか?」

先生が突然聴いてきた。

何かとはつまり、さっきのようなやつの事か? それなら昼間……

俺はそこまで思い出して。

「あっ、」

と小さく声を漏らした。

思い出し掛けた俺の脳裏に、嫌な映像が浮かんだからだ。

階段を登る途中に見た、あの透き通るような細い足。

まるで何かにぶら下がったように足をぶらんとさせすぐに消えた。

あれはつまり、首を吊った時の女の足だったのか ……

「ふふ、」

背筋が逆立ち、すっかり萎縮してしまった俺を見ながら、先生が口元に手を当て、微かに笑う。

冷笑というか、何というか乾いた笑みだった。

だが、さすがの俺も今日会ったばかりの人間に笑われ馬鹿にされるのは納得がいかない、思わず聞き返した。
その笑みの正体について。

「な、何がおかしいんですかいったい」

すると先生は一瞬間を置いてから、 耳元を覆い隠していた長い黒髪を緩やかに掻き上げた。

改めてみると、やはり凄く美人な人 だと思い知らされる。 だが今はそれすらも腹だたしく思えた。

美人だからといって何でも許されるなんて思ったら大間違いだ。

「すまん、お前の事を笑ったんじゃないんだ」

「えっ?」

思いがけない言葉に、俺は思わず小 さく驚きの声を漏らした。
というか、少しはにかむように謝る先生は何というか……マジで可愛い。

「嬉しかったんだ、こんなとこでこんな拾いものができるなんて思って もみなかったから」

「ひ、拾いもの?」

意味が分からず、俺はすぐに先生に聞き返す、だが先生はその問には答えてくれず、代わりに、

「家庭教師の件、やっぱり引き受けるよ」

と、今日会った中で一番優しい笑みで返してくれた。

思わず万歳をしたくなったが我慢する。

どういう心境の変わり方をしたのかは分からないが、俺は先生が家庭教師を引き受けてくれると言ってくれた事に、素直に感激していた。

こんな綺麗な人と一緒に居られるなんていう現金な事は置いといて 、俺はこの目の前にいる女性に妙な好奇心を覚えていたからだ。

何かこう不思議な、とても言葉に言い表せられない奇妙な感覚、この人が何者なのか、そして今まで感じてきた得体の知れない者たち、さっき見たあれが何なのか、その答えを、こ の人は知っているように思えたから ……


「ただし、条件が二つある」

「条件……ですか?」

俺は突然の先生の言葉に困惑しながらも聞き返す。

「ああ、一つはさっき起こった事を誰にも話すな」

そう言って先生は襖の方を指差した 。

さっきの事とは、先生が襖の女に気付いていたということだろうか? そしてその後にとった行動の事?

俺が考え込むと、先生はそれに構わず口を開く。

「二つめ、そこの……ええと何だ、机の下のエッチなヤツは禁止だ、そんなの買う金があったら参考書の一つでも買え」

そう言って頭を軽く叩かれた。

俺は途端に頬が熱くなり顔を伏せた。 そして心に誓った、エロゲーの隠し場所を変えようと……

「ふう……今日は断るつもりできたから何も持ってきてないんだ、だから勉強を見るのは次からになるがいいか?」

先生は徐に立ち上がりながら言った 。
もちろん俺は、

「はい!」

と、即答し、もう帰るであろう先生を見送る為立ち上がる。 すると先生はそれを手のひらをこちらに向けながら制止した。

「いや、見送りはいい、まだ……アレが少し残っているから」

そう言いながら、先生は襖の梁の部分に目をやった。

俺も釣られて思わずその部分に目をやる。  洒落にならない。

背筋に寒気を感じ身を強張らせていると、先生は俺に背を向けたまま呟く ようにこう言った。

その言葉を、俺は生涯忘れることはないだろう。

「なあ……この家、一体何人死んだんだ?」

心臓が大きくドクン、と、俺の胸をドラの様に叩いた。
押し潰されそうな圧迫感に不意に襲われる、不安という波が音もなく迫ってくるような感覚。

静寂に包まれた部屋の中、俺の喉元から息を呑む大きな音が鳴った。

握った拳には、じんわりと嫌な汗が滲んでいる。

「すまん、今のは忘れてくれ、じゃあまたな」

唖然とする俺をよそに、先生はそう言って、悲しげな表情のままその場で踵を返し部屋から出ると、襖をそっと閉めた。

階段を降りる足音が、フェードアウトしていく。

俺はふと、先生がこの部屋から出ていくのを思い返し、ハッとした。

襖はまるで新築の家の襖のように、 音一つ立てず滑らかに閉まった。

ただし、僅かばかり、縄紐くらいの隙間を残して……
[ 2014/05/25 ] 蘭学事始 ◆FAJ7z1Fo


[ 52423 ] 羽の生える病気
昔よくあった怖い話専門の漫画雑誌。
美容室に置いてあったのをよく読んでいたのですが、その中にあった短編漫画で、印象に残っている話。
うろ覚えですので間違っている所があったらごめんなさい。

登場人物は 妻、夫、男の子(3歳くらい)。
マンションに住む、とこにでもいる普通の家族。
話は夫視点で進む。

ある日、3人で仲良く眠っていると
夜中に妻が「背中がチクチクして痛い」と夫を起こす。

電気をつけ、妻の背中を確認する夫。
よく見ると肩甲骨の左右2ヶ所から、
1センチほどの固い毛のようなものが皮膚を破って飛び出している。

ピンセットで抜こうとしても抜けない。引っ張ると痛いという。
絆創膏をはりうつ伏せに寝て、とりあえず様子を見ることに。

次の日もその次の日も、夜中に妻は背中が痛いと苦しむ。
夫はそんな妻を支え、救急病院へと向かった。

医師はこんな症状は見たことがないと首をかしげる。
引っ張ると痛がることから、骨が変形しているのだろうか・・・
夫は、前に背中を見た時よりも突出物が大きくなっていることに気付く。
大きくなっているというよりも、白くて先のとがったモノが
左右それぞれ一か所からチクチクと、妻の背中の皮膚を押しのけるように
増えながら伸びているのだった。

白くて先がとがったモノは、一つ一つが真っ白で中心を固い芯が走っており、
芯から斜め上に向かって、やわらかい毛のようなものが生えていた。
その毛は綺麗に整列し、先端のとがったような形を形成している。
「鳥の羽みたいだな・・・」夫はそう思った。
医者は事例がないか調べてまた連絡するということで、今後の様子を見ることに。

その後妻は、医者からもらった痛み止めの効き目か、よく眠れているようだったが
相変わらず背中の突出物は大きくなっているようだった。

ある夜、帰宅すると息子が嬉しそうに玄関に走ってきた。
「ねえ!やっぱりママは、天使だったんだよ!」
息子に早く早くと引っ張られリビングに向かうと、
背中が大きく開いたキャミソールを着て、息子の遊具を片付ける妻の姿。
背中には、30センチほどの大きさの翼が生えていた。
「おかえり、あなた」
その穏やかな笑顔と小さな翼に見とれる夫。天使!天使!とはしゃぐ息子。

我に返り、また医者に診てもらおうと支度を始めるが
「明日行ってくるわ。もう痛くないし。緊急病院じゃなくても平気よ
それに、なんだかとっても穏やかな気分なの」と妻は言う。

そうかと言ってその日残業あがりだった夫は、妻の意見を受け入れた。


次の日。仕事が終わり、いつものように妻に連絡をするが誰も電話に出ない。
出かけているのだろうかと思い帰宅する。
鍵を開けると、家の中は真っ暗。留守番電話のランプが光っている。

留守電のランプを押し、リビングの電気をつける。
部屋は何者かに荒らされていた。

『録音は 1 件 です』
『―●●病院のものですが。以前奥様の背中にでてきた突出物について―』
夫は部屋中の電気をつけ、妻と息子の名前を呼ぶ。
トイレにも寝室にも、風呂場にもいない。
留守電の録音は、再生されたままだ。

『すぐに病院へ連れてきてください。―過去の事例がありました。』
夫はベランダのガラスが割られていることに気が付く。
ガラスの破片には、血が大量についている。
夫はゆっくりとベランダに近づく。足が震えている。

『病名は―』

夜風に大量に羽が舞っている。夫は声も出せなかった。

真っ白のワンピースを着た妻が、無表情で夫を見つめている。
背中の翼はさらに成長し、妻の伸長と同じくらいに。
サモトラ家のニケのような迫力のあるモノになっていた。

右手には、息子を抱えている。息子は血まみれで
妻の右手に体を預けている。

夫は夢の中にいるような感覚に陥った。
羽の生えた妻を見た時の感覚と似ていた。

近づこうとした瞬間、妻は翼を広げ、息子を抱えたまま
どこかへ飛んで行ったしまった。

空を見上げる夫の後ろで留守電が再生されている。


私がおぼえているのはここまでです。
病名は、確か「Angelなんとか~」みたいな、英語だったと思います。
人としての理性、感情をなくし、本当に人ではない存在となり、制裁を下してしまう。
というように最後に説明していたような。
息子が殺された理由は特に書いてなかった記憶があります。


後味が悪かったのは、この一家の誰かが何か悪いことをして罰が当たった訳でもなく
幸せに暮らす奥さんの背中に突然、痛みが走るところから話が始まっていることです。

どなたか、このストーリーのタイトルご存知の方いませんでしょうか。
ずっと気になっています。
10年程前に出ていた短篇を集めたホラー雑誌です。
[ 2014/05/27 ] 天使 ◆SujlevzI


[ 52761 ] 鬼瓦?
母親が友人から聞いてきた話。

母の友人(以下Aさん)が先日婦人会の旅行に行った時、神社の側を通りがかり
「ついでだからお参りしていこうか」って事になったそうだ。

で、本殿に参拝を済ませた後、敷地内の別のところにも鳥居付きのお社があるのを見つけたAさんが
「あそこにもお参りしようよ」と言って他の人たちを誘ったんだけど、何故かみんな乗り気じゃない。

何だか怖い、行きたくない、を連呼する他の人を不思議に思いながら参拝を終えたAさんは、
鳥居を潜ってみんなの所に戻る途中、ふと何気げなく振り返って後ろを眺めてみた。
すると、自分が今潜ってきた鳥居の上に大きな鬼の首が乗っかっているのが目に入ったんだそうだ。
「鳥居の上に鬼瓦とか変わってるわあ」とAさんは思い、
みんなが行きたくないって言ったのはこの首が怖いからかーそっかーと一人で納得してたらしい。

特にそれから何か怪事があった訳でもなく、無事帰宅して笑い話としてこれを母に聞かせてくれたAさんだが、
母親から又聞きした自分が気になるのは、それは本当に鬼瓦だったのかって事と、Aさんが一人合点しちゃったせいで
同行者に「あの鬼瓦何なんだろうねえ」って一切確認してない(全員それが見えてたか確かめてない)って事。

別に怖くないし、本当に鬼瓦だった可能性もあるんだけど、
鳥居の上の鬼の首って、何だかまんま「おとろし」ですやん!?って思ったので。
[ 2014/05/31 ] 梅 ◆GxYq74NA


[ 52766 ] ビデオの中の友人-原因究明-
Bです。ホラーテラー「ビデオの中の友人」のその後1です。
前からの著者T(本文中「オレ」)が2012年GW前までに書いていた分を代わり投稿します。
前作に関連付けてもらえると幸いです。



Eの死後、日常に戻ったと書いていたが、あんな異常な状態を直に見ているオレは原因を調べる事にした。
他の3人には見せないようにしたが、死後時間が経っていたためブヨブヨに歪んだ眼球で大きく見開かれた目と首の欠き傷。警察署で見せられた狂ったような寝室の写真が鮮明に思い出せる。

原因調査と父が他界後(Eと合った頃には母子家庭だった)女手一つで立派に育てた一人息子を亡くしたEの母が心配だったため、土日に何度か帰郷していた。
自宅から実家までは飛行機を使っても片道3時間程、新幹線では5時間程かかるため幼馴染達には連絡を入れず実家と、思い出し泣きをするCにのみ連絡を入れる。
(と言っても、あまり実家に顔を出すと親が心配するので、旅費節約のため宿泊費折半でCとホテルに泊まる事の方が多かった。(Bゴメン何もしてないよ))

Eの死から半年がたった頃、Eの母と話した後、そのままにされていたマンションや返された遺品を調べさせてもらうと、ノートPCとE実家の机の引出しの裏に貼り付けられていたノートに手掛りになりそうな物を見つけた。
オレはEの母にノートとノートPCを借り、自宅で調べる事にした。

職場の博士もそうだが、頭のいいヤツというのは何でノートが汚いんだ!行を無視したキーワードの走り書きや突然始まる計算。果ては中二病全開で「オレとCの披露宴の友人出し物について」(妄想で書いてる)など・・・
見ていて頭が痛くなる内容にウンザリしつつノートを捲ると最後の方に一際大きく「キャンプ地候補」と書かれたページを発見した。
そこにはいくつか「数字」と「廃道」や「洞窟」などと書かれている。
キャンプ地候補である事と、数字から緯度と経度と目星をつけEのPCを調べると、同じ数字が書かれた隠しフォルダがPASS付で暗号化されていた。
Eに関する事を適当に入力するも開かず、幼馴染の情報を適当に入力しているとCの名前で解除した。
フォルダには、状況予測や現地を確認した際のレポートが残されていた。

Eは毎年夏にやるキャンプの場所を調べている途中でアル物を見つけたようだ。
オレ達は小学生の頃から毎年幼馴染sでキャンプをするのが恒例になっている。
小学生の頃は親の協力を得てキャンプ場でやっていたが、中学の頃Aが車の免許を取ってからは子供達だけで行うようになった。
親が同伴しなくなってからのキャンプは、キャンプといっても金も無いためキャンプ場以外の場所にテントを張り、最低限の水と食料を持ち、オカズと薪を現地調達するサバイバルに近いキャンプだ。
普段街中で生活しているためか、自然の中で遊ぶのが楽しく1年で最も楽しみなイベントだ。
そんな理由もあり場所探しが難しく、酷い時は県境にある林道の道端でやった事も。

Eのノートに記載されていた緯度と経度をナビ付属の地図ソフトに入力すると某県境の山中が表示された。
また、隠しフォルダには現場の写真が複数あるため撮影日時を確認し順番に見ると、廃道→川→滝→滝つぼと携帯(圏外)→滝つぼ横に洞窟となる。
廃道から川に入り20分程下った所に滝があり、滝の横に洞窟があるからそこでキャンプをっという事らしい。
水質検査キットで川が清流である事まで調べている事に頭が下がる。
さらに読み進めると、洞窟は先の震災で崖が崩落し出現した事が記されていた。
洞窟の高さ約2m、幅1.5mで徐々に狭くなる事、奥行き約20m、洞窟内の壁が濡れていない事、空気の流れが無いため袋小路である事、たい積岩では無いため硬く崩れにくい等、入念に調べている。
しかし、元々自然にできた洞窟で、震災により崖の表面が崩落し出現したはずなのに、最奥部に人工的に塞いだ痕跡を発見した。
最奥部の横の壁が崩れかけ、もう一本の洞窟が更に奥に続いているが、こちらからは自然の岩石が壁となっているのに、もう一本の方は縦横70cm程で部分的にレンガのような人工的な物を並べて壁にしている。
Eは壁の穴を拡大し、もう一本の洞窟に侵入するも、もう一本は外へ向かわず、地中に向かっている。
酸素濃度や有毒ガスの有無が不明なため、一旦帰宅し手動コンプレッサ(ホムセンにある噴霧器のような物)と追加タンクを持ち再訪。
マスクにエアを送りながらしばらく進むと広い場所が現れ、ついに最深部のようだ。
ガスが充満していると一瞬で意識が無くなるため、徐々にエアを絞り確認したがフリーでの呼吸が可能との事。
縦横約3m、奥行き5m程の部屋になっており、奥にまた人工物のような祭壇のような物がある。
祭壇を調べるが、見たことも無い模様と石棺のような物がある。
黒く綺麗な石に手を触れると頭の中に声が響くが何を言っているのか分からない。
初めて聞く言語だ。
何だこれ何だコレ!徐々に恐怖が込上げ逃げるように洞窟から出ると、まだ午後2時頃のはずなのに外は暗く、時計は午後1時で止まっている。
外の暗闇と鳴り止まぬ声に底知れぬ恐怖を感じ帰宅。(記憶に途切れが無いのに、実際は約8時間飛んでたようだ)
寝ようにも声が鳴り止まず眠れないため出来事をまとめるが、石棺に触れた時から辻褄が合わなくなりウンザリして終了。

突然鳴り始めた声の原因として、統合失調症を疑い翌日専門医を受診。(ここから一言日記のようになった。)
薬を飲むも日にまして症状は悪化。
石棺に触れて5日目視界に赤い靄のような物が入り込む。
医師に症状が悪化した旨を伝え、薬を替えてもらうが収まる気配が無い。
15日目、ネットで調べ複数の宗派へ祈祷を依頼。翌日から連日違う宗派で祈祷するも効果無し。
27日目、恐怖からパニックになりそうなため、赤い靄が見えなくなるよう部屋を赤く塗る。
35日目、某神社で「何か大きく強い者を付けている。効くか分からないが」と御札を貰い部屋に貼る。
40日目、霊媒師から御札を勧められ購入。
45日目、靄の中から動物か人間か判別できない「目」がこちらを見ている。
50日目、薬も札も効果が無い。原因不明、意味不明。
70日目、ノンストップで聞こえる声が突然、一度だけ日本語になり「そろそろ時間だよ」と告げる。もうダメポOTL

「母さんへ、産んでくれてありがとう。育ててくれてありがとう。父さんが死んでから、まだ若いのにオレのために再婚しなかった事を知っています。
 オレの経歴のために生活保護も受けず必死で働いていた事も知っています。毎晩倒れるように居間で寝ていたので体が心配でした。
 母さんのおかげで最高の仲間達と最高の時間を過ごせました。ありがとう。」

「みんなへ、本当は個々へ書きたかったけど、もう時間が無いみたいだ。今年もキャンプに行きたかったな。お前等にどれ程救われたか言葉に出来ないくらい感謝してる。
 特に1つ上のA、同い年のD、1つ下のB、2つ下の○○とC、家が近いだけで学年もバラバラ。一生仲間であり続けると思ってなかった。お前等がいなければオレの人生はもっと腐ってた。ありがとう。」

ここでノートとPCに綴られていた手記が終了。

71日目、オレが帰郷する1週間前(死亡推定日)の記録は無い。


隠しフォルダ内のファイルも殆どPASS付で暗号化されていたため、開くのに時間がかかったが、殆どを開くと上記の事が分かった。
Bから送られて来たビデオのEの言葉はGW前にほぼ完成し、「皆今までありがとう。これから遊べなくなってごめん。○県との県境は危険な場所がある。絶対に近づくな。」となった。
死後もオレたちを気遣ってくれるEには悪いが、オレは原因となったであろう石棺が憎い。
ただ、この事を調べていると頭の中で警鐘が鳴る。
残雪の危険があるため、洞窟の調査は夏に行う事とする。
GWは下調べと道具の準備を行う。
[ 2014/05/31 ] B ◆06fMZ3gA


[ 52936 ] 『曾祖父の葬儀』
俺には4つ年上の姉がいる。
幽霊やらそれ以外のモノらが見えて、対処したり、交流したりという日々をごく普通に暮す、やや奇妙な人生を送っている。
今日も姉が過ごした日々から一つ、俺にとっても忘れられない出来事があった日の事を話そうと思う。


『赤い鬼』と姉が初めて接触した冬から、約半年後。姉が小学校1年の1学期半ばに、俺達一家はとある家の事情で父方の本家があるS市から、母方の実家があるN市へ引っ越した。
それまで住んでいたS市のある県と母方の実家のある県はそれなりに遠い。
父方の親族ともかなりもめたそうだが、結局父の母が許可を出したため(俺と姉にとっては祖母にあたる人だ)、その土地を離れることを許されたらしい。
大人の事情はつゆ知らず、姉はせっかくできた新しい友達と離れることを寂しがっており、俺も同様に保育園の悪ガキ仲間と離れたくなくて、引っ越しと聞いてからは泣いて嫌がる毎日だった。
両親にとってはさぞかし大変な時期だったろう。


あとから聞いた話では、一つに当時父の事業が限界だったこと。一つに父が自分の親族を嫌っていることが理由だったそうだ。
言われてみれば、物心ついてからこっち父方の親戚とまともにあった覚えが無い。
母方の親戚とは盆・正月を初め、様々な行事で顔を合わせるのに、父は己の血筋と異様なほどに交流を絶とうとしていた。父方の親族からの連絡は全て母が受けており、まっとうに父が話すのは父の母相手の時のみだった。

姉はすぐに転入先の小学校でもなじみ、新しい環境と新しい友達に毎日楽しそうだった。
野山に分け入り探検したり、友達の家の桑の実をみんなで食べたり、田舎でもとかく新鮮で楽しい毎日を送っていた。
俺もやがて姉と同じ小学校に入学し、田舎のガキ大将に連れ回されながらもおもしろ可笑しい日々を過ごしていた。


朝の6時にはサイレンが響き渡り、起床を知らせる。
太陽が山際からちょうど顔を出し、山の稜線が光り輝く朝陽の白っぽいオレンジ色に染まる。
老人達はそれよりも早く起きて畑や田んぼの仕事に精を出す。
子供にも家のお手伝いが割り振られ、ちゃんと生活できるようにいつの間にか様々な事が身についてゆく。
見たことの無い花々、草木、食べられるキノコとそうでないものの見分け方、皆が小学校に集まっての折々の祭行事。
日本の原風景のような暮らしがそこにはあった。


俺が小学校に上がった夏休み、その知らせはけたたましい電話の音と共に訪れた。
俺は眠い目をこすりながら姉に手を引かれて2階から1階へと降りる。祖母が電話に出て、急ぎ母が変わった。
母の顔色が変わる、母は一旦受話器を置くと、2階にいる父を慌てて呼びにいった。
嫌そうに電話をとる父、しばし口論が続く。
ぴりぴりと緊迫した空気であることが子供心にも理解でき、俺は握ったままの姉の手をぎゅっと握った。
姉は、見たことも無いような張り詰めた顔をして、電話口に立つ父と、その話す内容を一言も発さずに見ていた。
まるで観察しているように。


知らせは、父方の曾祖父の容態急変を知らせるものだった。
父にとっての祖父。俺の記憶にはいない人だ。
どんな人なのか、想像もつかなかった。
最終的に「おそらく葬儀になるから、せめて最後に顔を出してちょうだい」と父の母に直接告げられたのが決定打になったらしく、両親と俺達姉弟はその日のうちに懐かしいS市へ向かうこととなった。

車の中の空気は、どんよりと重かった。
父があからさまに不機嫌なのが原因だ。俺達子供は、後部座席を倒して、うつらうつらと眠りながら移動した。
次の日の朝には、もうS市内に入っていた。休みもあまりとらずにきた、車での強行軍だった。
体中のあちこちがミシミシして、一刻も早く広い部屋で大の字になりたかった。不謹慎だろうが、事情をろくに理解していない子供なんてそんなものじゃないだろうか。


久方ぶりに見る父方の本家は大きかった。2階が無く、全て平屋作り。重厚な門に、立派な庭は隙が無いほど手入れがされている。
野花や山に慣れた俺には、あまりに人の手が入って綺麗な場所は何だか逆に気味が悪かった。
その立派な家に何台もの車がならんでおり、見たことも無い人達が、大人も子供も大勢が集まっていた。

曾祖父のためにこれだけ人が集まったのか。すごいなと、なんだか普通に関心してしまった。
知らなかっただけで、もしかして父方の曾祖父はすごい人なんだろうか、そんな空想を広げながら、俺達一家は案内された部屋に入って、急ぎ身支度をした。
びしりとしたスーツを着た大人達は病人を見舞うというよりは、おとぎ話の王様に謁見を伺う国民のようだった。子供達も身ぎれいにしっかりとした衣服を身につけさせられている。
もちろん、俺と姉も例外じゃない。


そんな、人々が緊張して曾祖父を案じる空気の中でも、父は不機嫌丸出しだった。
さすがに父の母に久しぶりに会った時には笑顔を見せたが、曾祖父の話になった途端、苦虫を噛みつぶしたような表情に変わる。


いくらか父と祖母は問答を繰り返し、まずは父の兄弟へ挨拶することになった。
父は3人兄弟の末子で、しかもいわゆる『直系』と親族内で分類される立場にいる人だったらしい。


俺と姉はそこで初めて、父に関する親族と家の情報を得ることになった。


長男が家を継いではいるが、それは形式的なもので祖母が一族を取り仕切っていること。しかも嫁をとっていないことから、まだ重要な立場では無いこと。
次男は他県に婿に出ており、妻と男子を二人授かったが、いずれも脳に障害を抱える身であること。その従兄弟達が姉よりも遅くに授かった、しかも男子であるから、長男と同じく重要な立場では未だ無いこと。
そして同じく県外に婿に出たが、兄弟の誰よりも早く長女を授かったこと。だから重要な立場であり、今までのわがままも許されてきたということ。長女を産んだ母も本来であれば父の実家に直系の一員として迎えたいこと。

父の母は男児しか授からなかったため、曾祖父からみると産まず女(石女)に等しく、かなりキツい扱いをうけていること。それが元で父が曾祖父及び親族と絶縁寸前の関係だったこと。


きけばきくほど、ドッキリか何かに聞こえる話を、大の大人達が真剣そのもので話し合っているのが、殊更異様だった。


そして、危篤状態であとは家で死ぬのを待つ身なのだから、最後に一家揃った姿を見せて曾祖父を安心させて逝かせてほしい、というのがおおむね祖母の言い分だった。


患いから曾祖父身が人払いを命じていて、父と姉が来るまで他の親族には会わないと言っていることがそもそも呼ばれた原因だったらしい。

「母さん、俺はあのクソじじいが母さんにした事を絶対に許さないし、今でもぶち殺したいぐらいだ。死ぬって聞いてせいせいする」
「T、お前が私を心配してくれてるのも、それでお祖父様を嫌ってのもよおおく承知の上での母からのお願いだ。お祖父様が安心して逝ってくれれば、私が何も角はたたせん。親族のことも、今まで通り干渉せずとできる。私もお前が可愛いんだよ、T。お前の自由のためと母の気を楽にすると思って、この通りだから」
ついには祖母が父に向かって頭を下げ、ようやく父は折れた。
一度きり、ごく短時間でなら、と。


曾祖父の寝る寝室は、薬の清潔な匂いと、老人から発せられているのだろう死臭のような、相反するもので満ちていた。


老人が一人、眠るように布団に横たわって浅く呼吸をしている。
思っていたよりずいぶんと大柄な老人だというのが、俺が曾祖父に初めて抱いた印象だった。
父の兄弟達も背が高かったし、背の高い家系なのだろう。
父が姉を連れて曾祖父の側へ近寄る。俺は母に手を引かれてその後を追う。


「よう、じいさんようやく冥土行きだってな」
「ちょっと、お父さん!」
「良いんだ、こんなヤツにはこれで!俺はこいつが許せないし、大嫌いだし、殺したいほど憎いんだ!!手にかけないだけマシだと思え!」


俺は怒鳴りつける父を見るのも初めてだったので、その時はすごく驚いた。
父の大声に、老人が薄く目を開いた。


「ほら、見えるか。あんたがさんざん馬鹿にし続けた俺が、あんたがずっと欲しかった長女を授かった。けどな、絶対に家は継がさせない。あんたが望むことなんかぐちゃぐちゃにしてやる。だから婿にいったんだ、直系の字も名につけなかった!!ざまあみろっ」


か、か、か、と。
老人の枯れた喉から声が出た。
表情を見ると、先ほどまで衰弱した様子の曾祖父の眼にぎらぎらとした力が宿っていた。
横たわったまま、老人は嗤い、だがはっきりとした声で父への言った。


「うつけが何ぞほざいておるわ。その年までわからなんだら大うつけじゃ、それだからお前は駄目なんじゃ。未だに何もわかっておらんで、逃れた気になっておる。か、か、愉快じゃ」


姉を曾祖父の側に寄らせ、見えるように父が曾祖父の胸ぐらを掴みあげる。


「見えるか?名前も知ってるか?直系にはなんら関係無い、うつけはてめえだ!呆けじじい!」
「よう見えるわ。おい、T。この娘を授かったこと、名をあれにしたことだけはお前を褒めてやる。初めて、一つだけ褒める価値じゃ。立派な良い直系じゃ」


とうとうぼけたかと、呆れて父が曾祖父を布団へ投げ出す。
母は病人になんて真似をと曾祖父を慌てて介抱していた。
体勢と衣類を直されて、満足げに曾祖父は父へと笑んだ。


「T、確かに『T』の1字は入れなんだなぁ。それで資格が消えると思いこんでいるのが、お前の本当にうつけなところじゃ。お前は我々の何を知っているというのだ?拒み続け、逃げ出した、不出来も不出来な無知の塊が」


声も無く激高した父を、母が止めようと必死なのを、姉と俺は近くで見ているしかなかった。
早くこの怖い部屋から出たい。それだけが、その時の望みだった。
曾祖父の声はまだ続く。


「字体をばらばらにして己から一つ、愛する己が母から一つか。愚かしい、本当に愚かしい。部首に考えが至らなんだか。お前の母に、つまり儂の娘に何の意味も無い名をつけると思うたのか」
「何が言いたい、耄碌じじい」
「直系が持つ正当な古字はな、こう書くのよ。『りっしんべん』ぐらいお前が阿呆でも知っとるじゃろうて。常用では部首は別だが、当家ではコレが引き継ぐべき字のありよう。お前の母にも別な形で入っているじゃろう」
「・・・・・・こころ」
「心を引き継ぐが習わし。りっしんべんの意味に、まさに心を与え、直系であるお前の1字を持って完成と成す。よくぞ強めたのお、うつけが」


曾祖父の悪魔のような歪んだ笑顔は今でも鮮明に思い出せる。


その後は酷かった。
父が唸り声を上げたのをさすがにいぶかしんだ大人が3人がかりでようやく父を押さえつけ、落ち着くまで別室で軟禁された。
その後の曾祖父はうって変わったように上機嫌で親族と別れを楽しみ、早晩、眠るように穏やかに息を引き取った。


俺達は本家に滞在する時、必ず仏間が部屋にあてがわれる。
別室にいる父を除いた3人で、葬儀の終わる夜までを過ごした。
葬儀は、それは盛大なものだった。元々葬式の派手な土地柄らしいが、近所の人が葬式行列を見て「さすが御方のご葬儀ともなると違うねぇ」と言っていたのが聞こえた。
『御方』が何を指すのかもわからない。
父のように、俺も何も知らない。知らない方が、それでも幸せな気がした。
長男のおじさんに子供ができれば。その子が家を継ぐだろう。
末子の息子になど、用は無いらしいのだ。


盛大な葬式のあと、俺はぐったりと疲れて眠っていた。
気がつけば、姉が暗がりの中、窓を開いて外を眺めていた。たぶんまだ真夜中だ。
背後の天井近くには歴代の遺影が飾ってある。俺は写真に見られているようで怖くなり、姉の隣へとタオルケットを被って並び座った。


眠っている母を起こさないように、
「ねーちゃん、何してんの」
「蛍見てた」
言われて窓の外を見ると、夏の深い夜に蛍の光がいくつも点滅していた。
「そっちお墓の方だよ。夜見てると呪われるよ」
「見てるぐらいじゃ呪われないよ」
俺の言うことをまったく聞かず、姉はぼんやりと外を眺めていた。
そういえば、この騒動の最中、姉は身を潜めるようにほとんどしゃべりもせずにいたのだ。
「とうま、知ってる?人魂って青いんだって」
「ひとだま?」
姉の指差す方を見るとお墓の方に確かに青白い光があった。
ゆらゆらと、なんこも漂うようにしている。
俺は血の気が引く思いだった。
「燐とかいうのが燃えるから、青く見えるんだって。人間の身体にも入ってるから、その燐が燃えたら火の玉で人間の魂らしいよ」
「ねーちゃん、ヤバいよ。ほんとにお化けが来るって」
「やばくないよ。理科とかで習うもん。今度あんたも百科事典見てみなよ。燃えるモノで色が違うんだよ。写真綺麗だったよ」
「理科とか科学とか苦手だって知ってんじゃん」
「恐竜ものってるから見なよ。面白いよ?」
「まじか!」
俺はその頃恐竜にハマッていたので、家に帰ったら夏休み図書で図鑑を借りようなどと、一気にのんきな気分になった。
だから、ぽつりとそれを口にした時の、姉の顔は見ていない。
「でもさあ、だったら・・・あの赤い火の玉は何が燃えてるんだろうね」
蛍を見ていたんじゃない。姉は最初からそこを見ていたのだろう。
葬式が終わって、今は曾祖父が眠る墓の上に他よりも大きな赤い火の玉が浮かんでいた。

「本当は人魂は赤いのかなあ」

「赤い鬼、赤い人魂・・・」


どんな気持ちで、姉があの光景を眺めていたのか。俺にはわからない。
そのそも姉にはあの騒動の間、頑なに口を閉じていた姉には一体何が見えていたのか。
同じものを見れない俺にはわかることのない、ナニカ。
『ナニカの世界』は今日も姉と共にあるのだろう。


「境界線なんて無いんだ」


蛍の飛び交う夏、ぽつりと姉が呟いた。
[ 2014/06/02 ] とうま ◆xnLOzMnQ


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>>52936
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[ 2014/06/03 ] 怖い話まとめブログ管理人 ◆Ahsw8Nok

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